第32話 輔弼近衛は王族と相まみえる ~王族ってこんなものなの~
……場違いにもほどがある。王族のソファって端っこでも沈むんですね。
場は控えの間に移された。
見たこともないほど豪奢な室内。深紅のソファは座るだけで罪悪感を覚えるほどだ。。
陛下は上座に座り、王子女殿下方がテーブルを挟んで両脇に侍る。
(……場違いもいいとこだよな。中に踏み出す勇気なんてないよ)
「アランよ。汝も腰掛けるが良い」
陛下がとんでもないことを言い出した。
(……いやいや、なに言ってくれちゃってんです?)
「臣アレン・アルフォード。身の程をわきまえず、このような席に腰掛けるなど、おそれ多いことでございます」
俺は思わず膝をつき、深く頭を垂れた。
陛下はわずかに目を細め、穏やかに首を振られた。
「そなたは、もはや臣としてこの場に身を置くのみの者ではない――この国の歴史に未だなかった『輔弼近衛』として、王族の傍らにあって立つ者として召したのだ。ならば、その座を辞する理由などあるまい」
(……だからそれ無理ですって)
「――恐れは要りませんよ、アレン。“傍らに立つ”とは、こうして並んで座ることも含まれるのです。さあ、お掛けなさい」
俺は観念して、ソファの端っこに腰を下ろした。
(……“共に座る”とか言われても、端で縮こまってるだけなんだけどな)
陛下が静かに口を開いた。ゆるやかに視線を巡らせ、俺へと戻す。
「では、紹介しよう。王子女たちだ。まず、第一王子、レオン・ヴァルディスだ」
「初めまして、アレン殿。……父上が呼ばれた方が、これほど若いとは思わなかった。どうかよろしく頼む」
(……“これほど若い”って、そりゃあそうですよ。先週まで騎士学校にいたんですから)
「――第二王子、フェリクス・ヴァルディス」
「ようこそ。私は詩をもって理を編み、魔術を言葉に織る者です。剣も法も届かぬ場所に、言葉は届くと信じています」
(……すみません、表現が高尚すぎて理解が追いつきません)
「――第一王女、セレナ・ヴァルディス」
「お会いできて光栄ですわ、アルフォード殿。……殿、とお呼びしても、差し支えありませんの?」
(……王族に「殿」なんて呼ばせたら不敬罪になるんじゃないですかね?)
「――第三王子、エリアス・ヴァルディス」
「やあ、アレン! 父上もよく知らないって言ってたけど……今度一緒に厨房行こうぜ!」
(……王族が「よく知らない奴」をそんなに気軽に誘っちゃだめでしょ)
「――第二王女、アリシア・ヴァルディス」
「初めまして、アレン様。……父上がわざわざ呼んだ方と伺いました。何か大切な役目があるのでしょうか?」
(……それ、俺が一番知りたいんですけど)
王族全員の視線が、じわじわと俺へ集まってくる。
温度も角度も違うのに、共通しているのは「こいつ誰?」という空気だ。
(……そうですよね。俺もなんでここにいるのか説明してほしいです)
国王陛下がゆっくりと頷き、ようやく口を開いた。
「――さて、そもそも「輔弼近衛」がなんたるかを話そうか」
どうやらやっと本題に入るようだ……
度々の投稿間隔の変更で申し訳ございません。
投稿と並行して続きを書いているのですが、思ったより長くなってしまい、平日投稿だけでは年内に一章が終了しない可能性がでてきました。
そこで申し訳ないのですが、一章は毎日投稿に変更させていただければと考えております。
初めての投稿で操作も感覚も掴めておらずご迷惑をお掛け致します。
次回は
王族の側から見た“あの場”が描かれるらしい。呼び名ひとつにも地雷が埋まってる気配しかしないし、なぜか厨房行きの誘いまで飛んでくる予感。俺だけ説明会に呼ばれてない感じ
こんな王族の尻拭・・・お世話係になったとしたらあなたはどうしますか?
次回は明日21時頃投稿の予定です。
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