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男装令嬢の恋と受胎 ~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~  作者: 鈴田在可
恋編

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25 選択

下方向の内容あり

 教会の鐘が鳴る。


 美しい花婿が、純白のウエディングドレスを身にまとって幸せそうな笑顔を浮かべる花嫁をエスコートしている。二人は祝福のフラワーシャワーを浴びながら、階段をゆっくりと下りている最中だ。


 フィオナ自身は、いつ自分はあのような花嫁姿になれるのだろうと考えつつ、結婚についての一切を保留にしたままの隣の超絶美形ことジュリアスと共に、銃騎士隊副総隊長ロレンツォ・バルト公爵令息の華々しい結婚式に出席していた。


 今のフィオナは「フィリップ」ではなくて、ロレンツォの親友で同僚のジュリアスの、「婚約者フィオナ」の立場で令嬢として着飾り出席している。

 しかし、ジュリアスを挟んだフィオナの反対側には、「ジュリアスの副官フィリップ」がちゃんと存在していた。

 フィオナが分裂したわけではなく、男装の事情を知るレインに頼んで、魔法で「フィリップ」に化けてもらっていた。


 季節は気候の良い五月の晴れの日で、フィオナとジュリアスが交際を始めた彼女の誕生日から、既に一年と少し経過している。レインも養成学校を卒業して今年から銃騎士になり、フィオナたちと同じ二番隊に配属されていた。


 ジュリアスと交際してからの約一年の間、様々なことがあったが、その一つが、「ロレンツォと元婚約者シャルロット・アンバー公爵令嬢の婚約解消騒動」だ。


 二人は公には「性格の不一致」で解消されたことになっているが、本当はシャルロットが、ユトという名の従者の男と肉体関係を持ったため、浮気を知ったロレンツォが激怒して解消する流れになったらしい。


 ただ、ロレンツォも最初はブチ切れて「婚約破棄だ!」と言っていたそうだが、八歳差の二人はシャルロットが生まれた時からの婚約者同士で、長い付き合いもあり、「愛は消えたが情はある」と言うロレンツォは、シャルロットの経歴に傷がつくのが可哀想だと思うようになって、後から「婚約破棄」よりも穏便な「婚約解消」に変えたそうだ。


 フィオナは「副官フィリップ」でいる時に、執務室にいるジュリアスの所に突然やって来たロレンツォが、さめざめと泣いて事情や心情を吐露する場面に遭遇したため、裏事情を知ってしまった。


 ロレンツォは、シャルロットを大切にしてきたつもりだったのに、自分を裏切って、絶倫らしい従者ユトに何度も抱かれまくっていたことに、「あんまりだ!」と嘆いていた。


 ロレンツォは見るからに憔悴していて、もしかしたら銃騎士をやめてしまうのではないか、くらいの落ち込みようだったが、彼自身が復縁を迫ってくるシャルロットからの脱却を目指し、親戚筋の別のご令嬢とのスピード婚約と結婚を決めていた。


 よって、本日の花嫁はシャルロットではなくて、ソフィア・バルトというロレンツォの従妹――ロレンツォの叔父が妾に生ませた子――に変わっていた。ソフィアは銀髪に青い瞳をしたシャルロットと同じ年の少女だ。 


 実は本日の挙式は、元婚約者シャルロットの誕生日――しかも成人を迎える――らしい。当てつけがものすごいが、貴族とはそういうものだ。元々はシャルロットとの結婚式として進めていた諸々を、そのままソフィアとの結婚式に移行(スライド)させたらしい。


 倹約家らしいロレンツォの性格が出た行動だが、フィオナだったら前の恋人のために準備していた結婚式で、自分が花嫁になるのはちょっと嫌かなと思うが、ソフィアがとても幸せそうにしているし、ロレンツォのことだから「結婚式準備についての詳細」をソフィアに伝えていないとは考えられず、花嫁が納得してあの笑顔ならそれでいいのではないかと思った。


 幸せの形はカップルの数だけある。ジュリアスに交際開始から一年以上抱いてもらえないフィオナは、最近そんな風に思うようになっていた。


 きっかけは、実家のキャンベル伯爵家でフィオナの甥フィリオを生み育てているアリアに、相談したことだ。


 ジュリアスとの本番の肉体関係がないことに思い悩んでいたフィオナは、少し前に実家に帰省した時に、祖母には言えない話をアリアに打ち明けていた。


『あら、私もオルに抱いてもらってないわよ』


 オルとは祖父の庶子オルフェスの愛称だ。アリアとオルフェスは、オルフェスの庶子認定が成された後に結婚していたが、フィオナも出席した結婚式の彼らは、仲睦まじく見えたのに、「一体何があったの? もしかしてフィル兄様の子をオル兄様の子として育てなきゃいけないことが、オル兄様には耐えがたい苦痛だったのかしら……」等、フィオナはその時様々なことを考えた。しかし、アリア曰く「仲はすごく良い」という。


『ここだけの話にしてね。彼、不能らしいのよ』


 イケメン叔父オルフェスの秘密を聞いてしまったフィオナは、驚愕した。


『病気じゃしょうがないことかなって思う。色々試したけど駄目だったのよ。

 でも、オルは私のことをすごく大切にしてくれるし、「初恋は私だった」とも打ち明けてくれて、嫌われてるわけじゃないみたいなのよね。

 オルは格好良くてイケメンだし、私は優しいオルがとても大好きで、自分の子じゃないリオを慈しんで愛してくれるオルがとても大切だし、これから先も彼と夫婦としてやっていけると思ってる。

 身体を求めあう激しい愛はないかもしれないけど、これは確かに「愛」だし、私は今のままでも充分に幸せよ』


 フィオナにとってはアリアの話は目からウロコだった。オルフェスと同様に、ジュリアスも抱いてはくれないが、確かに愛は滅茶苦茶に感じているし、本番行為はなくても、イチャイチャするだけでフィオナは幸せだった。


 アリアに相談してからフィオナはあまり思い悩まないようになり、ジュリアスから「結婚」の「け」の字もなくても、「それでもいい、このままでも幸せ」と思うようになった。


 何か抱えてるっぽいジュリアスが決断できるまで、フィオナはどこまででも待つつもりだった。




 幸せそうなロレンツォとソフィアの門出を祝福しながら、フィオナの心も本日の晴天のように晴れやかだった。









 ところが、そんな状況が一変する出来事が起こる。


 ロレンツォの結婚式からしばらく経ったある日、フィオナはやや暗い表情をしたジュリアスに迫られた。このまま自分に抱かれて結婚はできなくとも一生を共に過ごすか、自分とは別れて銃騎士も辞めて実家に帰り二度と会わないかのどちらかを選べ、と。


 フィオナが選んだのは前者だった。


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