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男装令嬢の恋と受胎 ~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~  作者: 鈴田在可
恋編

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19/33

19 あなたに捧げる

R15注意

「フィー……」


 目の前の極上半裸美形が破壊的な笑みをこぼしながら、魔法の指輪を外して女に戻った下着姿のフィオナを抱きしめてくる。


 国宝級を超えるレベルの麗しきお顔が近付いてくると、フィオナは拒めず、目を閉じて彼の唇を受け入れた。ジュリアスにキスをされると、フィオナも応えなければという気持ちになる。


 今回の出動先はフィオナの故郷キャンベル伯領を含む十一番隊の区域内だ。近くに町があったので、ジュリアスは男女がそういう目的で使うホテルまでフィオナを伴い魔法で移動した。

 ジュリアスは部屋に到着するなり、素早い動きでフィオナを柔らかな寝台に押し倒して、魔法で下着以外の服を取り去った。

 フィオナは二回目以降からずっと自分ではなくてジュリアスに衣服を脱がされている。


 七番隊の戦地に赴いた時に初めてジュリアスとキスをしてから、フィオナは魔力補充のたびに、ジュリアスから毎回キスとマッサージを施されていた。それは暗黙の了解というか、既定路線だった。


 最初のキス以降、ジュリアスのフィオナに対する「ビジネス婚約者」のような接し方は変わった。

 優しいのは前からだったが、時折顔を見せる厳しさが和らいで雰囲気が柔らかくなり、フィオナには温かさの感じられる極上の微笑みを向けてくることが多くなった。ジュリアスが家族以外にそのような表情をするのは見たことがなかったので、本当に「愛され婚約者」になったような気さえする。


 初回の緊急出動ではフィオナの同行を渋っていたジュリアスだったが、二度目以降は、何も言わずとも必ずフィオナを伴うようになった。

 七番隊の先の戦闘におけるジュリアスの活躍は大変素晴らしいもので、「二人の相性は最高だ。間違いない」という銃騎士隊副総隊長ロレンツォのお墨付きまでもらっている。


 フィオナがキスの気持ちよさに目をトロンとさせたところで唇が離れた。ジュリアスがフィオナの身体をマッサージし始める。


 フィオナとしては大好きなジュリアスには何をされても構わないという心境だったので、抵抗せずに身を任せた。


 恥ずかしいことをしている自覚はあったが、「魔力補充」という名目の下、フィオナはジュリアスから逃げられなくなっていたし、拒むつもりもなかった。


 いつか解消される婚約ならば、彼との間に一生忘れられないような思い出があっても良いのではないかと思った。


(それにこれは、仕事だから……)


 ジュリアスはキスはするが、フィオナを裸にしたり際どい所を触ってくることはない。マッサージ自体もいかがわしいものではなく、()()()()普通のマッサージの範囲だと言えるのだが、ジュリアスとの魔力補充は毎回なにかしら破廉恥度が上がっている気がした。






「もっと……」


 耐えきれなくなったフィオナは、隠そうとしてきた本音をとうとう口にした。


 魔力補充の時を除けば、ジュリアスはセクハラめいた接触はしてこないし、執務室で仕事をしている自分たちは普段通りで何も変わらず、健全そのものである。


 ジュリアスが「男」になるのは魔力補充の時だけだったし、彼とキスや触れ合いをしても、「好きになってはいけない」という前提の人だったので、フィオナの中では「これは仕事」と線引きをする意志はあったはずだった。


 けれど、欲望に呑まれる形で、フィオナは耐えきれずに「先に進みたい」という願望を口にした。


「何でもしてあげるよ」


 ――どうしてもフィオナの方から求めてほしかったジュリアスは、狙い通りにフィオナが望んでくれたことに満足して、それとわからないような会心の笑みを見せる。


 フィオナは美しさが天元突破している笑顔を見ただけで、胸の音がドクドクと早くなった。



 ジュリアスが触れた。






「いいよ。でも俺の前でだけだよ」


(それはどういう意味なのーー⁉)


 フィオナは聞き捨てならない言葉を聞いた気がして問い質したくなった。


 ジュリアスときちんと話し合った方がいいのかもしれない、と頭の中で思ったが、フィオナは身体の制御が効かず、何も喋れなかった。






 いつの間にか眠っていたフィオナは、ギシッと寝台の軋む音と誰かの気配で目を覚ました。


 そこにいたのはジュリアスだったが、眠る前と同じ下着姿のままのフィオナとは違い、ジュリアスが銃騎士隊の隊服を着込んでいるのを見て、少し違和感を覚えた。


「……帰るの?」


「帰らないよ」


 帰還のためにジュリアスが自分を起こしたのかと思ったが、否定で返ってきた。それどころかジュリアスが先ほどの魔力補充の時の甘やかな表情とは違う、笑みを全く浮かべない強張った顔をしていたので、何かよくないことが起こったと悟ったフィオナは、寝ぼけた状態から頭を覚醒させ、銃騎士としての緊張感をもってジュリアスを見つめた。


「フィー、戦況がとても悪いんだ」


 先ほどの濃いめの魔力補充でフィオナが寝た後、おそらくジュリアスは戦いの場に戻り戦闘に加わっていたのだろう。敵は獣人王シドが率いる獣人の集団で、これまでとは戦闘の苛烈さが異次元だ。シド一人の手により何人もの銃騎士が死の淵にいるという。


 ジュリアスは暗い顔で状況を説明しながら、上体を起こしたフィオナの下着に触れた。許可を問われはしなかった。


 仲間の命が懸かっているのだから、元よりフィオナに否やはない。ジュリアスには、瀕死の仲間を回復させてシドたちを退けるだけの魔力補充が必要だ。


 フィオナは魔力補充が始まってから、ジュリアスに求められればすべてをさらけ出そうと腹をくくっていた。






「ごめんね」


 申し訳なさそうな表情をしたジュリアスに謝られた。


「謝らないで。ジュリアスになら、全部大丈夫だから」


 ジュリアスが「フィオナの本当の婚約者でも恋人でもないのに行為をすることを申し訳なく思っている」と気付いたフィオナは、安心させるように笑って告げた。これから未知の体験が待っているだろうことに緊張はあったが、ジュリアスのことは信頼しているし、何より大好きなので、すべてを捧げられると思った。


 フィオナが返事をした次の瞬間、早急な動きでジュリアスが口付けてきた。






 フィオナは、美しさと力強さと気高さを兼ね備えたジュリアスの身体を見つめた。ジュリアスにスケベな子だと思われても構わないから、その姿を網膜に焼き付けて、来世まで記憶を持ち越したいと思った。


「いくらでも見ていいけど、今は時間がない。フィーだけじゃなくて、俺もよくなった方が魔力回復のスピードが上がるから、ちょっと無理させるね」


 そんなことを言われたフィオナは、『とうとうエッチをするのかしら!』と思ってドキドキした。


「安心して。本当にはしないから」


 フィオナはすべてを捧げる覚悟だったが、ジュリアスの言葉に半分安堵しつつも半分落胆していた。






「フィー…… 愛してるよ」


 ジュリアスは愛を囁いたが、フィオナの耳には届いていなかった。しかし、終わった後にジュリアスが、愛を感じられる表情でこちらを見つめながらいたわるような言葉をかけて、キスもしてくれたから、フィオナは彼への愛が自分の中で加速度的に大きく膨らんでいくのを感じた。



 フィオナはこの時、ジュリアスに自分のすべてを一生捧げ続けようと決めた。


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