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オートジャスガ

相手の攻撃をタイミング良くガードすることで、攻撃してきた相手に強力なカウンターをたたき込む為の隙を作り出す要素、ジャストガード。

本来、攻撃と防御の駆け引きを生み出し、戦闘に深みを持たせる重要な要素だが、このチートはあらゆる物理攻撃に対し、フルオートでジャスガを発生させる。近距離攻撃職には最悪といえるチートである。

 チートスレイヤー氏がチーター狩りを始めて約2年経つが、ここ最近はこれまでに無いほど賑やかなゲームプレイをしている。

 最近チーター狩りに同行し、手伝ってくれるようになったビギナープレイヤーのタクマ。彼のせいというかお陰というか。だいたい週に1〜3回ほどのペースで共に巡回を行っており、何人かチーターも倒した。

 彼は色々と危なっかしいところもあるが、今の所足を引っ張ることなく頑張っている。このままゲームを続け、人口増加に貢献してくれれば何よりだ。


 そんな事を考えながら、今日は1人で巡回を行っているスレイヤー。

 そんな彼は夜空の星を水面に反射している川に掛かる端へと足を踏み入れていた。川は浅く、橋もそれほど長くない木製の橋。ここは巡回ルートで、いつもこの橋を通っている。


 何の変哲もない橋を、周囲に気を配りながら通り渡っていた。


 その時である。



――バキッ――



 足元からそんな音が聞こえた。足元というか、更に下、橋の裏からだろうか?

 そしてそれを感知したスレイヤーの動きは、まるで雷管を叩かれた弾丸の如く素早かった。

 一瞬の内にそこから跳び退く。そして次の瞬間、先程までスレイヤーが立っていた場所が破壊され、橋床に穴が空いたッ! 奇襲だッ!



――バキバキィッ!!!ドガァアッッ!!!――



「・・・・・・」


 スレイヤーは慌てず、穴を睨見つける。しかしまだスレイヤーは橋の上。また下から来るか、手摺りを乗り越えて側面から来るか・・・その可能性も警戒しつつ構える。


 結果として、襲撃者は素直に端に空いた穴の下から現れた。


「ようやく来たかチートスレイヤーぁ?」


 黒いボサボサなロン毛、そして両手に装備する3本爪のブレード、そして物凄い猫背が特徴的な男性プレイヤーだ。


「その言い草・・・俺の事を知っているのか・・・この橋が巡回ルートである事も知った上で待ち伏せをしたのか?」


「教えねぇよぉ、義理もねぇ、俺はお前を殺してよぉ、ブレイブハンターズのチーター界で名を挙げるんだぁッ」


「チーター界・・・つまり貴様はチーターなのだな?」


「当然ッ、界隈の連中は俺にチーターのイロハを色々と教えてくれたぁ、BANされずにPKするコツとかなぁ?」


「下らんクズの集まりだ・・・そんな界隈があるならば、いずれはそれごと潰してやる・・・が、今はお前を殺すッ」


 スレイヤーが拳を構えるッ!

 チーターも両手のクローを構えるッ!



「・・・・・・」


「クククククッ」



 お互いが睨みを利かし合い、硬直状態が続く。スレイヤーはいつでも踏み出せるよう、両足で床を踏み締める・・・・・。


「クククッ・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


 沈黙。長い沈黙が過ぎる。


 しかし、スレイヤーはただ相手の出方を窺っているだけではない。この間も、相手のチートを分析する大切な時間なのだ。


 それを済ませたスレイヤーは、ゆっくりと口を開いた。



「・・・・・初撃は意気揚々と仕掛けて来たが、対面した後は待ち姿勢か・・・・・チーターならば、その力に任せて攻撃してくるモノだが」


「・・・・・俺は慎重派なんだよ」


「ハッ、随分と聞こえの良い言葉を選んだものだ。・・・恐いだけだろう?真っ当に強者を目指す事を諦めチートを買い、さらに他のチーターに教えを請うほどプライドを捨てたにも関わらず、自身の諦めた道に立つ(真っ当な努力を重ねた)プレイヤーに敗れることが」


「ッ・・・・・」


 ギシリと、チーターが歯を噛み締めるッ


「馬鹿が・・・俺は諦めたんじゃねえ・・・強くなる為の努力と時間、それとプライドと金を天秤に掛けた時、こっちの方がコスパが良いと判断しただけさ」


「ふむ・・・・・」


 スレイヤーの煽り発言。これも単なる悪口ではない。


(先の反応を見るに図星。普通のチーターならキレて飛び掛かって来るがその気配はなし・・・つまり?)


 スレイヤーは視線をズラし、足元に転がる橋床の破片を確認する。


「シッ!」


「!」


 そしてその破片を、チーター目掛けて蹴り飛ばしたッ!!


 相手が速度などに関係するチートを積んでいた場合、この距離でこんな行動を取るのは自殺行為である。相手のチートが分からぬ内にやるべき行動ではない。

 とどのつまり、スレイヤーは目の前のチーターが積んでいるチートは速度などに関係するモノではないと推察したのだ。

 そして実際それは正しかった。


「チッ!」


 チーターへと飛んで行った木片は、奴のクローによって弾かれた。それも単純なガードではない、ジャストガードだッ!


 そしてジャスガで弾かれた投擲物は、投擲した敵へと跳ね返るのがこのゲームのジャスガの仕様ッ!

 スレイヤーへと木片が迫るが、


「フんッ!!」


 スレイヤーは容易く木片を叩き落とし、弾かれて手摺りに激突した木片はバラバラに砕け散ったッ!


「むぅ・・・・・」


 チーターは何とも言えぬ表情。それもスレイヤーの推察情報に加えられ、スレイヤーの脳が回る。


「・・・そのクローは小型武器の類。小型武器でのジャスガは簡単ではない。そして初撃の動きを見るに、お前にはソレを成功させる程の力量はない。つまり、お前が積んでいるチートは」


オートジャストガードのチートであるッ!



 だからコヤツは動かずに待っていたのだ! スレイヤーが迂闊に仕掛けていれば、ジャスガからのカウンターで手痛いダメージを負っていた事だろうッ! なんと姑息や野郎かッ!!



「厄介なチートだ。が、効果が分かれば幾らでも対応できる」


「ケッ、強がりやがって! ジャスガは物理攻撃全てを弾き返す! お前が魔法を習得してない事は知ってるぞ!」


 もうタネが割れたなら待つ必要はないと、チーターはスレイヤーへと飛び掛かったッ!!


「俺が物理専門であることもバレているのか。その情報元が気になるところだが・・・」


 今気にしても仕方がない。

 スレイヤー氏は処刑(戦闘)を開始するッ!


「ドリャぁッ!!」


 チーターの攻撃を回避しつつ、スレイヤーがポーチから取り出したるは、お得意の投げナイフッ!


「ふッ!!」


 それを投擲ッ!! しかし全ての攻撃をジャスガできる奴に投げるのは無意味。故にスレイヤーが投げた方向はッ


「あ?」


「フんッ!シュッ!!破ッ!!」


 頭上へ向けて投げているッ! 上空へ向けて、幾つもの投げナイフが夜空へと消えていくッ!!


「何してやがるッ!!」


「破ァアッ!!」


 的確にチーターの攻撃を回避しつつ、上空へと投擲投擲投擲ッ!! 更に投擲!投擲!投擲! その投擲速度は1秒間に凡そ3本ッ!

 それほど高速でありながら、ナイフは打ち上げ花火の如く、空へと天高く飛んで行くッ!! 我武者羅に投げまくっている訳ではなく、一本一本、全力投擲ッ!!


「くぅうッ!!」


 そして嫌な予感を感じて焦り、攻撃を連発するチーターだが、スレイヤーは全て避け切るッ! そして投げるッ!!


 投擲ッ!

 回避ッ!

 投擲ッ!

 投擲ッ!

 回避ッ!

 投擲ッ!

 投擲ッ!!

 投擲ッ!!

 回避ッ!

 投擲ッ!!

 投擲ッ!!

 投擲ッ!!

 投擲ッ!!!

 回避ッ!

 投擲ッ!!!

 投擲ッ!!!

 投擲ッ!!!!

 投擲ッ!!!!


 何十本ものナイフが夜空の闇に消えた頃、


 上空へと放り上げられ、重力へと引かれたナイフは真下へ落下ッ! 下にいるスレイヤーとチーターへ降り注いだッ!!



――ガガガがガガガガガガッ!!!――



「うぉっ!?」


「〈武装・(シクスス)〉ッ」


 雨の如く襲い掛かるナイフの群れッ!


 チーターはジャスガで全て弾き返すッ! 本来ならば、投げた張本人であるスレイヤーへとナイフが飛んで行くはず・・。だが、


「ふっ」


「チィッ!!」


 スレイヤーは大盾を空へと構え、悠々とジャスガを繰り返すチーターを眺めていたッ!

 ナイフを空へと投げたのはスレイヤーであっても、その後チーターへと襲い掛かったナイフ達は重力という物理演算によって動かされているッ! この場合、ナイフがチーターを襲ったのはスレイヤーが投げたからではなく、重力によるモノと判断される事となり、ジャスガによる投擲物返しは出来ないッ!


「さて、かなりの本数空へ投げたからな。まだあと数秒はナイフの雨は続くだろう・・・その間貴様は、迫り来るナイフに対しただただジャスガを繰り返す・・・そして教えてやろう。ジャスガは中は動けなくなる。攻撃を弾かれていない第三者からすれば、最大の隙だ」


 スレイヤーはジャスガし続けるチーターを横目に、大盾を傘にしながら奴の回りに何かをまき散らす。


「なッ、何をしているッ!!」


「油を撒かせて貰う・・・よし。じゃあな」


 そう言うとスレイヤーは最後にマッチを取り出し、火を着けて放り捨てた。

 可燃性油に火の着いたマッチ。当然ながら、大炎上だ。


「ぬぁあああッ!!?」


 チーターはジャスガを続けながらもその体には火が着き、炎上によるダメージが奴のHPをドンドンと削るッ!!


 チーターは火だるまになりながらもナイフを弾き続けることしか出来ないッ! 橋床1枚の下には川があると分かっているのに、水に飛び込むことすら出来ないッ!!


「クソがぁぁあああああああ!!!」


(そういえば、なぜアイツは俺の事に詳しかったんだ?俺が魔法未習得だなんて、知ってる奴は相当少ないはずだが・・・)


 叫び声を背に、スレイヤーは夜空を見上げながらそんなことを思うのであった。



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