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無限スタミナ

攻撃、回避、防御、一部スキルの発動、などなど様々な行為に消費されるスタミナが減らなくなる。

これ一つ入るだけで数多くの行動の制限が取り払われ、ゲームバランスは崩壊してしまう。

  ここはとある街の中で、教会の隣に建つ一軒の酒場。つまり非戦闘エリアにあるプレイヤーの交流の場だ。朝や夜など、隣の教会からログインしたばかりのプレイヤーが多く立ち寄り、よく賑わっている。


 そしてプレイヤーが集まるという事は、それだけ多くの情報が行き交う場でもあるという事だ。


「うわ、ホントに初期装備じゃん」


「そうだよ。ックソが、アイツ絶対チーターだぜッ!」


 カウンターにもたれ掛かる2人のプレイヤーの、なんでもない会話。

 そんな会話に聞き耳を立てる男が1人。


 カウンター向かい側の席に座り、バフ効果のある料理を選んでいた黒い戦闘装束の男。無論チートスレイヤーその人であるとも。


「チーター?ホントに?こないだもそんな事言ってたろお前」


「いや絶対チーターだって!全然止まんないのよ攻撃が!無限に突撃繰り返してくるからこっちが攻撃する暇がなくてゴリ押されたんだよ!」


「ホントかぁ?このゲームで使えるチートって相当高額なはずだけどなぁ・・・」


 このゲームは没入感を高める為に、相手にプレイヤーのIDなどが表示されないようになっている。戦闘中に頭の上にIDが浮かんでいると、どうにも没入感が削がれるとの考えでだ。

 それの弊害で、このゲームでプレイヤーを通報することは難しくなってしまった。通報するにはIDが分からなくては出来ないからだ。その結果、一度生まれたチーターや害悪プレイヤーは中々BANされない。

 しかし運営も馬鹿ではない。通報などでプレイヤー側から情報を得られないのであれば、ソフトの方から監視すれば良い。その結果高性能な監視AIがサーバーに導入され、安物のチート等は一瞬で摘発されてBANされるのがこのゲームだ。煽り行為や暴言などはそこそこ横行しているが・・・。

 まあそういう背景があるので、このゲームでチートを使うにはかなり金を掛ける必要があり、今の所チーターの数は少ない。逆に一度チーターとして定着すれば中々BANされる事はないのだが。



「で、何処で会ったのよ?」


「この街の西口から出た先にある草原だよ」


「あー、確かになんか強過ぎるプレイヤーがいるみたいな話聞いたような?」


 チートスレイヤーは聞き耳を立てつつ食事を済ませ、席から立ち上がる。


 向かうはここから西。ラーラ草原だ。






 そうして、スレイヤーが街を出て数分。ラーラ草原が近付いて来た。


「・・・誰もいないな」


 丘の上に立って広大な草原を見渡すが、人っ子一人いない。・・・いや、こんな広いマップにNPCの1人もいないなんてそれはそれで変だ。



――トサリ――



 スレイヤーの背後から草原の草を踏む足音。



「ッ!!」


 急いで振り替えるが、何もいない。


「・・・・・・」


 だが息を潜めて耳を澄ますと、



――トサリ…トサリ…トサリ…――



 やはり、微かに足音がするッ!


「そこかッ!!」


 そしてスレイヤーは、不自然に草の凹んだ位置を見つけ、そこに向かってッ ナイフ投擲ッ!!



「うぉっとッ!!」


 突如、何もなく見えた空間から男が現れ、飛来したナイフを回避したッ!!

 相手はまるでサイのような角の生えた兜が印象的な装備だ。魔術師の着ける防具ではない。

 それを分析し、スレイヤーが呟く。


「透明化の魔法・・・いや、スキルか?」


「御名答・・・」


 スレイヤーの問に答えた後、男の姿は再び消える。


「・・・・・確かに透明になるスキルはある・・・だが、それを発動している間はスタミナを消費し続けるはず。それも中々に燃費が悪く、透明化中に走ったりすればすぐにスタミナ切れを起こす・・・・・が、貴様今そこそこの時間透明になっていたはずなのに回避行動をとれる程のスタミナが残っていたのか?」


 チートスレイヤーの感覚は鋭い。そんな彼に気付かれず先程の距離まで接近するには、かなりの距離を透明化したまま移動する必要がある。

 にも関わらず、スタミナを削る回避行動を取れるスタミナの量。・・・持久力にのみステータスを振り分けていたとしても、考えにくい。

 つまりは、


「チーターか貴様?」


「どうかなぁ?」


 返答を濁された。真っ当なプレイヤーならば大半はすぐに否定するだろう。・・・未だ確信は持てないが、怪しい。


「クククッ」


 再び相手の姿が見えなくなる。


 足音は消えたが、次どこから来るか分からない。スレイヤーは警戒しつつ、女に忠告する。


「・・・・・・」


 戦闘態勢に入ったスレイヤーは感覚を研ぎ澄ませ、全方位に意識を集中させる。



 次の瞬間ッ!! 男が透明化を解除し現れるッ!



 しかし現れたのはスレイヤーの背後だッ!! その手にはメイスが握られているッ!


――バシィイイ!!――


 しかし、スレイヤーはその一撃を素手で受け止めるッ!!


「うわ速ッ」


「機動力には自身があるぞ。あと筋力と―――」


 スレイヤーがメイスを掴み、押し返すッ!!


「うぉおッ」


「―――持久力にもなッ! だからこそ分かるッ!!貴様やはりチーターだなッ!!」


 スレイヤーの疑念は確信に変わるッ! 


 先程男が透明化を発動してから、背後に現れるまで約数十秒。そこから姿を現し、休憩を挟まずに攻撃、そして今はスレイヤーと押し合いをしている。

 どの行為にもスタミナを使っているはずなのに、バテる気配がない。これはどう考えてもおかしな事態だッ!


 恐らく、スタミナゲージが消耗しなくなる、スタミナ無限チートッ!!


「クククッ、教えないよぉッ!!」


「別に構わんッ!! どちらにしろ殺すッ!!」


 スレイヤーとチーターの押し合いッ!! ジワジワとスレイヤーが相手を押し返すッ! が!


「〈突撃(とつげき)〉ッ!!」


 チーターがスキルを発動ッ!! これもスタミナを消費するモノだが、チーターの動きは止まらないッ!!


「くっ!」



――ドガッ!!――



 スキルの力によってチーターの体が前進し、体当たりによってスレイヤーを突き飛ばしたッ!!


 スレイヤーは受け身をとって素早く立ち上がるッ!


 しかし、スタミナの概念に縛られないチーターは〈突進〉を続け、スレイヤーへと向かって来るッ!!


「ぬぅッ!!」


 ギリギリそれを回避したスレイヤーだったがわチーターの動きは止まらない!!


「〈回転撃(かいてんげき)〉ッ!!」


 メイスを持ったままコマの如く回転し始めたのだッ!! これでは接近出来ないッ!! が、この程度の単純なスキル、幾らでも攻略法はあるッ!


「シッ!」


 スレイヤーはナイフを投擲ッ!!

 

 真っ直ぐに飛んだ刃は、綺麗にチーターの両足に突き刺さったッ!!



――ドスッ!!――



「うぉっ!?」


 チーターは『脚部負傷』の状態に陥り、ドサリと地面に倒れ込むッ!


「〈武装・(ファースト)〉ッ!!」


 スレイヤーが素早くスキルを発動ッ、金棒を顕現させ、チーターの脳天目掛けて振り下ろしたッ!!



――ガキンッ!!――



 スレイヤーの振り下ろした金棒と、チーターのメイスが激突ッ!! 筋力の高いスレイヤーが押し勝ち、チーターの握っていたメイスは吹っ飛ばされたッ!!


「うわっ!?」


 武器を失ったチーターへと、スレイヤーの容赦ない金棒攻撃が迫るッ!!


「〈突撃〉ッ!!」


 しかしチーターはスキルを使って体を動かし、その攻撃を回避ッ! コイツ、自分のチートを使い慣れているッ!!


(脚部負傷状態の相手を攻めない手はないッ! このまま押し込むッ!!)


 スレイヤーはそう判断し、攻撃速度に乏しい金棒を捨てて素手による格闘攻撃を繰り出すッ!!


「ヌァぁああッ!!」


「〈突撃〉!〈突撃〉〈突撃〉ッ!〈回転撃〉ッ!」


 腹這い姿勢のチーターへ、スレイヤーの拳撃が迫るが、チーターはスキルを駆使して逃げ回るッ!! 

 チーターが使うスキルはどれも下級な物ばかり。だがしかし、本来スタミナによる制限を受けているスキル達は、その制限が無くなればここまで無法な技となるのかッ!


「チッ! 逃がすかッ!!」


 スレイヤーも負けじと連撃でチーターを追い詰めるッ!!


 そしてチーターを追うスレイヤーは、遂に奴を崖下の壁際にまで追い詰めたッ!!


「わぉっ!」


「終わりだッ!!」


 トドメと言わんばかりに、スレイヤーの拳が振り下ろされるが、


 しかしその時ッ!!!


「ッ!?」


「クククッ!」



――ガシィッ!!――



 チーターは足を伸ばし、スレイヤーの体を両足で挟むようにして掴んだッ!! 『脚部負傷』はすでに回復していたのだッ!!

 そして!


「〈回転撃〉ッ!!」


 チーターがそのスキルを一瞬だけ発動させるッ!!


――グルンッ!――


 するとチーターとスレイヤーの位置が180度回転ッ!!

 壁際だったチーターと、スレイヤーの位置関係が逆転するッ!!


「うッ!?」


「〈突撃〉ぃッ!!!」


 そして壁に背を着くスレイヤーへと、チーターの体当たりが炸裂したッ!!!



――ドガァッ!!!――



「ぐぅッ!!」


 前進するチーターの体が、スレイヤーを壁へと押し込むッ!! 押し込む押し込むッ!! 押し潰すッ!!!


「ヌゥゥぅううううッ!!!」


 スレイヤーはチーターの両肩を掴み、押し返すッ!!!


「〈突撃〉ィイイイッ!!!」


 チーターも、スキルを何度も何度も発動ッ!! スレイヤーを壁へと押し付け、押し潰すッ!!!



――ガガガガガッ!!!――



 壁が凹み、ヒビ割れるッ!!


 筋力と持久力にステ振りをしているスレイヤー、そして無限のスタミナを持つチーターッ!!


「グォォォオおおおッ!!!」

 

 そして何とッ!! スレイヤーが徐々に徐々に、チーターを押し返し始めたッ!!


 が、スレイヤーは壁へと押し潰され、HPは既に3割を切ったッ!!!


「〈突撃〉ィイイイッ!!!」


 しかしチーターもスキルを押し付けるッ!!!


 スレイヤーが押し返すが先かッ!! スレイヤーが潰されるが先かッ!!!


 押し合いの結果はッ!!!



「〈突撃〉ィイイッ!!!」



――ドスゥウウウウッ!!!――



 チーターの兜に生えた角が、スレイヤーの腹部へと突き刺さった!!


「ハッハァ!!勝っ――――」


 勝利を確信し、声を上げたチーターだったが、


「まだ死んじゃいないぞ」


 スレイヤーが彼の言葉を遮ったッ!!


 スレイヤーのHPは、あと僅か1割残っている!!


「ケッ!ならトドメを刺してやる!!」


 チーターは再び〈突進〉を繰り出そうとするが、それより先に、


「〈壊牙(かいが)〉ッ!!」


 スレイヤーがスキルを発動!!しかし、この一撃をチーターに撃ち込んだ所でコイツを倒すにはダメージが足らない。そんなことはスレイヤーも理解している。

 故にスレイヤーがこのスキルを打ち込んだのはチーターではない。



――ドゴォッ!!!――



「!?」


 スレイヤーは背後の崖壁へと掌底を叩き込んだッ!!


 壁が大きく削れ、スレイヤーと崖壁の間にスペースが開いた。


 それが何を意味するか理解したチーターは、すぐさまスキルを発動しようとする。が、


「〈突――――」


「遅いッ!!」



――ドガァッ!!――



 スレイヤーは素早く腹に刺さったチーターの角を引き抜き、奴の顔面に膝蹴りを叩き込んだッ!!


「ぐッ!?」


 頭部に打撃を受けたチーターは『脳震盪』の異常状態を受け、一瞬動きが止まる!!


 そしてその好きを逃すスレイヤーではない!!


「〈鱗砕脚(りんさいきゃく)〉ッッ!!!」



――ドギャッ!!!――



 スレイヤーの繰り出した強烈な後ろ蹴りのスキルが炸裂し、チーターをゴルフボールが如く吹っ飛ばすッ!!


「ぐぇッ!!」


「ヌァアァッ!!」


――バコォッ!!!――


 さらに追撃の拳ッ!! チーターのHPの大半が吹っ飛ぶッ!!


「くっ!!ダメだ撤退だッ!!」


 スレイヤーが迫る中、チーターは透明化のスキルを発動指せるッ!! 逃亡する気だッ!!


 がしかしッ!!


「させんッ!!!」



――シュッ!!!――



 と空を切る音が鳴り、チーターの脚に深々とナイフが突き刺さったッ!


「ぐぁ!?」


 再び『脚部負傷』の異常状態が付与されてしまい、チーターは地面に倒れ込んだ。


 そんなチーターへと迫る影。


「さてと」


 気が付けば、背後にチートスレイヤーが陣取っていた。その手にはチーターの持っていたメイスが握られている。


「チーターは皆殺しだ」


「あ、いや・・・俺は、チーターじゃないさ?」


「嘘が下手なら付かないべきだな」


 その言葉を最後に、チーターの頭へと奴の使っていたメイスが振り下ろされたッ!!



――ゴシャッ!!!――



 という音が草原に響き、チーターは影の沼にべシャリと倒れた。


 ターゲットの死をしっかりと確認したスレイヤーは「ふぅ」と一つ息を吐いた後、メイスを捨てる。



 こうして、また1人。チートスレイヤーという狂人の粛清を受けし者が誕生したのだった。


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