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裏世界移動

本来行くことのできないマップの裏側へと侵入しそこを移動するチート。表側の世界から干渉することは不可能であり、裏側から一方的な攻撃が可能になってしまう。

「ひぇ〜死ぬかと思った〜……」


「よくやったサラ」


「いやサラさん!何で俺を盾にしたの!?」


 チーターとの一戦を終え、視点が暴走するチートの効果が消えたスレイヤー御一行は一先ず息を整えていた。


「タクマ大丈夫なのか?かなりのダメージを受けた筈だが」


「スレイヤー知らないの?タクマ君はHPがかなり多いのよ」


「………お前魔法使いだよな?」


 魔法を主体とするプレイヤーは、MPや知識といったステータスを上げなければ強力な魔法を使用できないためHPを含むその他のステータスは低めになるのが必然なのだ。


「いやぁ〜…死にたくなくてぇ」


「……どうりでレベルの割に使える魔法が弱い訳だ」


 タクマのレベルは現在60。普通ならもっと色々な魔法を使えてもおかしくないはずだが、HPを重点を置いているタクマは基礎的な魔法以外を習得していないのだろう。


「まぁ死なない事も大事だしな。……それより速く行くぞ」


 そう言うとスレイヤーは歩き出した。


「え、行くってどこに!」


「今殺したチーターが言ってただろ。残りのシングルスを殺しにいかなきゃならない、と。つまり奴等は少しでも速くシングルスの1位〜5位を殺したいと言うことだ。リリィ達が危ない」


 スレイヤーは以前リリィから教えられた彼女の連絡先にチャットを送る。


「え、スレイヤーさん聖剣のリリィの連絡先を知ってるんですか!?」


「ああ、この間会った時に交換した」


「初対面だったんすよね?…不用心なような……いや、信頼されてるんすかね?」


「知らん。だが、結果的に正しかったな」


 スレイヤーはリリィへチーターに狙われている事と、恐らく近々襲撃されることを告げるメッセージを送信した。

 すぐに返信が返ってきて、トントン拍子に話が進む。


「よし、リリィは今『煉獄』のメンバーと一緒にいるらしい。明日他のパーティと合同で最難関ダンジョンを攻略する予定だそうだ」


 煉獄はリリィの所属するパーティで、シングルス1位がリーダーを務めるトップ集団だ。他のメンバーはダイヤ帯のプレイヤーらしいが。


「他のパーティってのは?」


「…聞いて驚け」


 サラの質問に、スレイヤーは勿体振った前ゼリフを言ってから答えた。


「シングルス3位、4位、5位、が所属するパーティ、『下酷上(げこくじょう)』だ」


「え、つまりシングルス上位5人が集まるって事っすか!?」


「煉獄と下酷上は中が悪いって聞いてたけど……」


「シングルスチーター襲撃を受けて、古参のシングルス同士結束しようとの事らしい。まぁそんなことはどうでもいいな。肝心なのはどんなチーターがこんな化け物パーティを襲撃しようとしてるのかだ」


「流石のチーター達も、シングルスのパーティが集まってるとなると中止するんじゃない?」


「分からんぞ? これまで戦って分かったろ、猟豹六人衆の使っているチートはどれも高性能だ。耐チーターの経験が浅いプレイヤーじゃ、シングルス全員でも対応できるかは分からん」


「そこで俺達の出番ってわけですね!」


「そういう事だ。取り敢えずリリィ達と合流し、明日のダンジョン攻略にも参加することになった」


「ぇえ!?俺 最難関ダンジョンなんて無理ですよ!?」


「安心しろ、チーターが来ないか見張るだけだ」


 そう言うとスレイヤーはリリィ達と合流すべく歩き出した。







「スレイヤ〜まだ着かないの〜?」


「仕方が無いだろう、リリィ達は今明日の合同ダンジョン攻略に向けての調整中でクエスト中で、近くにファストトラベル地点がないんだ、歩いて行くしかない」


「難度の高いダンジョンやクエストエリアほど険しい場所にあったりしますもんね〜」


 サラが文句を零しながらも歩みを進めるスレイヤー御一行は森を抜け、草原へと足を踏み入れた。


 その時、


「待ってたぜ、チートスレイヤー」


 突如、何処からともなく見知らぬ男の声が響いたッ!


「ッ! 何者だッ!!」


 周囲を確認するもその存在を確認出来なかったスレイヤーは構える。タクマとサラも武器を構え、全員が背を合わせるようにして周囲を警戒した。


「な、なんすか!?透明化!?」


「足音が聞こえない……透明化した状態で静止しているだけか……チーターか」


「また!?もう勘弁してよね!」


 3人が3方向を警戒するが、やはり相手の姿は見当たらなかった。


「よくもやってくれたなぁチーター殺し共……まだ結成して数日しか経ってない猟豹六人衆を二人衆にしやがって……」


「なんだ?俺達が倒した4人は萎えて引退でもしたか?」


 スレイヤーは挑発気味に聞き返す。流石にそんなすぐにBANされてはいないだろうし。


「俺達猟豹六人衆の掟さ。もし非チーターのプレイヤーに殺されたら、そのチートは没収!ってな」


「それは有り難いな。一度倒しや奴を二度も三度も殺すのは面倒なんだ……して、その掟をやらを定めたのは、俺を殺せと貴様に命令した奴か?」


「ぁあ?誰がその情報吐きやがったんだ?」


「やはり貴様等はただのチーター集団ではなく、猟豹六人衆を結成させた黒幕がいるのだな?」


「ケッ、察しのいい奴だ……そうだよ、俺達に無料でチートをくれた奴がいる。6人集めてチーム組ませたのもソイツだ」


「なぜそんか事をする」


「お前等のせいで、ブレハンじゃチートを軽視する奴が増えたからだ!俺達がチーターの代表として活躍し!再びチート全盛の世を作り出す!……と、アイツは言ってたが正直俺はどうでもいい………自分さえ気持ち良くなれればなッ!!」


 チーターは話を終わらせ、攻撃を仕掛けて来るッ!!


「〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉ッ!!」


 次の瞬間、スレイヤー達の足元の地面が盛り上がったッ!!


「ッ!! 離れろッ!!」


 スレイヤーが飛び出すようにその場を離れ、タクマとサラも慌てて逃げるッ!


 3人が離れた刹那、



――ボゴォオオオオオンンンッ!!!――



 地面を貫き、尖った形状の巨大な岩が地中から飛び出て来たッ!!


「周囲に姿はないッ! 透明化チートか!」


 本来透明化中は他のスキルや魔法を使用できない。でありながらたった今魔法が使われたのにも関わらず周囲に敵の姿はない。

 そしてこの魔法はそんな遠方から発動できる魔法でもない。


 つまり、相手は自身を不可視化状態にするチートを使っている可能性が高いッ!! スレイヤーはそう判断し、行動に移ったッ!!


「〈武装・(フォース)〉ッ」


 スレイヤーは金属製の鞭を召喚したッ!


「伏せろッ!!」


 スレイヤーが叫び、それを聞いたタクマとサラは素早くその場に伏せるッ!!


 次の瞬間、



――ブォオオンッ!!――



 スレイヤーは身体を一回転させ、重たい鞭で周囲全体を薙ぎ払ったッ!!

 が、


「外れかッ」


 鞭が見えない何かに当たることはなく、ただ空を切るに留まった!


「〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉ー!!!」


 そして再びスレイヤーの足元から岩が飛び出し、ギリギリでそれを回避ッ!


 さらに身体を回転させ、2回3回と鞭を周囲に振るうッ!!


 しかしそれでも鞭がチーターを捉えることはなく、


「ホラホラどうしたぁ!!〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉ぅッ!!」


「チッ!」


 チーターの放つ魔法が何度も何度もスレイヤーを襲ったッ!!


 そして遂にッ



――ボゴォオオオオッ!!――



「ぐッ!」


 走り回るスレイヤーの動きを予測し、チーターはスレイヤーの前方に岩を伸ばしたッ!!

 突如進路を塞がれてバランスを崩したスレイヤーの足元から、本命の岩が飛び出して来るッ!!


「〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉ぅッ!!」


「スレイヤーさん危ないッ!!」


 スレイヤーが岩に貫かれるッ!! その光景が脳裏に過った!! がッ!


「フンッ!!」


 バランスを崩して倒れそうだったスレイヤーは地面に手を付き、腕の力で空中へと跳び上がって岩の攻撃を回避したッ!!


「おぉ!流石スレイヤーさん!!」


 体操選手を彷彿とさせる見事な動きで一先ずの危機を脱したスレイヤーは、チーターが伸ばした岩の腕にスタッと着地して次の攻撃に備えたッ!


 しかし、


「〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉」



――ボコッ――



「ん?」


 次にチーターが狙いを定めたのは、スレイヤーではなくタクマだったッ!!


「ぇえ!!なんで急にー!?」


「チッ!」


 すぐさま助けに向かおうとするスレイヤーだったが、ふと足を止めた。


|(なぜ、ターゲットを変えた?)


 チーターは現在不可視であり、どういう訳か広範囲に振るった攻撃も当たらない。ならば1番厄介なスレイヤーにひたすら攻撃を浴びせるのが最適解ではないのか。


 ならば、チーターはタクマを狙ったのではなく、スレイヤーを狙えなくなったということではないのか。


 今のスレイヤーと先程までのスレイヤー。その違いは何か。


 と、そこまで考えていた時、



――ボロッ――



「!」


 チーターが魔法で作り出した岩が崩れ、その上に乗っていたスレイヤーは地面に着地した。


 すると、


「〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉!!」


 再びスレイヤーを狙って魔法が放たれ、地面から伸びる岩が彼を襲うッ!!


 スレイヤーは迫りくる岩の攻撃を何度も回避しつつ、一つの答えに辿り着く。


「………なるほどな」


 一先ず浮かんで来た結論を正しいと仮定し、スレイヤーは駆け出したッ!!


「タクマ!空に向かって〈魔守盾(マジックシールド)〉を張れッ!!」


「ぇ、わ、分かりましたッ!!」


 スレイヤーの言葉の意味を理解できないタクマだったが、彼を信じて魔法を発動する!!


「〈魔守盾(マジックシールド)〉ッ!!」


 タクマが半透明なバリアを空中に展開し、


「乗れ!!」


 スレイヤーはその上に跳び乗った!!


「えぇ!?」


「はぁ!?…ちょっとちゃんと説明しなさいよね!!」


 困惑するタクマとサラだったが、すぐにスレイヤーを追って〈魔守盾(マジックシールド)〉の上に跳び乗った!


「うわ迫ッ!ちょっともっと詰めなさいよ!」


「押さないで落ちるって!!スレイヤーさん!どうするんです!?」


「取り敢えず待機だ」


「待機ってアンタ!次の攻撃飛んで来たらどうするのよ!こんな狭いとこで!」


「大丈夫だ………攻撃は飛んでこん」


「え?」


 スレイヤーの言葉を聞いた2人は地面の方を見下ろした。

 すると確かに、先程までボカボカ魔法が飛んで来ていたはずなのに今はすっかり静まり返っている。


「確かに空中にいる敵に〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉は当てられないけど……他の魔法を使えばいいのに」


「習得してないんすかね」


「あの魔法をポンポン撃てるということは、お前と違って純魔法職のはずだ。あの魔法しか使えないなんて有り得ん」


「じゃ、じゃあなんで……」


「奴が地中にいるからだ」


「地中?………確か地面に潜るスキルがあったわよね?それ?」


「〈地泳〉のことか?あれは使用潜っている地点が盛り上がって視認できるし、発動中は他のスキルや魔法は使えない……相手はチートを使って地面の中に潜っているんだ」


「地面の中?」


「裏世界に潜り込むバグとかよくあるだろ?あれだ。だが地表には当たり判定があるから、地面から岩を生やす魔法でしか攻撃できないんだろう。射撃系の魔法は地表に当たって阻まれてしまうからな」


「な、なるほど……じゃあこのまま待ち続ければ、相手は痺れを切らして頭を出すかも知れないってことですね!」


「いや、それではダメだ。奴等の目的を思い出せ。奴等が俺達を襲うのは、俺達が奴等の活動を邪魔するから。そして奴等の本命は、シングルスの撃破だ。猟豹六人衆はまだ2人残っていて1人ここにいる。となると、もう1人はシングルスを倒すべく行動しているんだろう……奴等にとっての最悪は俺達がシングルスの面々と結託することのはず……」


「つまり、今私達を襲ってるチーターの目的はシングルス撃破までの時間稼ぎ……かもしれないってこと?」


「とにかくこのまま待っていたんじゃ切りが無い、他の手を考えるぞ。タクマ、〈魔守盾(マジックシールド)〉はあとどのくらい維持できる?」


「このまま何事も無ければ……あと1分ってとこですね」


 〈魔守盾(マジックシールド)〉は展開している間MPを消費し続ける。序盤から使える低位魔法とはいえタクマのMP量じゃそう長くは保たないようだ。


「ふむ………もう少し考える時間が欲しかったが仕方が無い。……荒業で行くぞ」







「しめしめ、予想通り空中に留まってるなチーター狩り共……いいぞ1時間でも2時間でも待ってやる。シングルスはアイツに任せて―――」


 地中の中から上を見上げながらスレイヤー達を監視していたチーター。その首には豹柄のスカーフが巻かれていて奴が本当に猟豹六人衆の1人であることを示していた。

 裏世界側にいるチーターからは地上が透けて見えており、奴の眼はしっかりとスレイヤー達を捉えて片時も目を離さなかった。


「………アイツ等なにしてんだ?」


 とはいえスレイヤー達が空中に逃げたことで距離が離れてしまい、その影響でお互いの声が聞こえなくなってしまった。スレイヤーが仲間に何かを説明しているが、一体何をする気なのか……。




 チーターが訝しんでいたその時、スレイヤー達の方は、


「〈武装・(シクスス)〉」


 スレイヤーが大盾を召喚し、まるでソリの如く3人はその上に乗り込んだ。


 3人+大盾の重みを受け、タクマの張った〈魔守盾〉にピシピシと亀裂が入り出した。


「よし!サラ撃て!!」


「りょーかい!!」


 3人は盾に一列になって大盾に乗っている。そして最後尾にいるのがサラだった。

 サラは後ろを向いて魔導弓を引き絞り、スキルを発動させるッ!


「〈ブラストアロー〉ッ!」


 次の瞬間、サラの弓から極太の光線が撃ち放たれたッ!!



――ドォオオオオオオオオオ!!!――



 〈ブラストアロー〉は高火力の光線を放ち、照射中MPを消費し続ける魔導弓のスキル。そしてこの技には面白い特性がある。

 それは、照射中はMPと同時にスタミナも消費し続けること。もしMPより先にスタミナが切れた場合、


 発動者は光線の反動により、大きく吹っ飛ばされる。


「うわぁー!!」

「ぎゃぁああ!!」

「さぁ行くぞ!!」


 サラのスタミナが切れたと同時に彼女の身体は後方へと押し出され、後ろにいたスレイヤーを押すッ! そしてスレイヤーがガッシリと掴んでいる大盾ごと、ジェットエンジンが搭載されたスケートボードの如く凄まじい勢いで前方へと飛び出したッ!!


「なッ!?〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉!!」


 急いでチーターは魔法を発動させスレイヤー達を攻撃するが、地を滑る大盾はまるで戦闘機のようで、地面から岩が伸びる頃には既にその場を通り過ぎ、遥か先を滑っている!!


「うぉおおお〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉〈地岩激撃アースロッククラッシュ〉ッ!!!」


 偏差を計算して魔法を連打するチーターだが、盾をつかむスレイヤーがバランスを上手く調整して大盾をジグザグに走らせ、全ての岩を回避していくッ!!


「チィッ!〈岩大壁(ロックウォール)〉ッ!!」


 チーターは別の魔法を発動ッ!!


 するとスレイヤー達の前方に高さ5メートルは超える岩の壁が生えてきたッ!!


 しかしスレイヤーは焦らない。


「タクマ!!」


「はい!!〈魔守盾(マジックシールド)〉ッ!」


 スレイヤーの合図を聞いて、タクマが魔法のバリアを展開ッ!

 しかもただ縦として張ったのではない。まるでスキーのジャンプ台のように傾斜を付けた状態で地面に張ったのだッ!!


「しっかり捕まれッ!!」


 タクマがスレイヤーにギュッと抱き着き、スレイヤーは片手で盾を、片手でサラをしっかりと掴む!!

 

 そして!!



――ブォンッ!!!―― 



 3人はスレイヤーの盾に乗り、サラのスキルで加速し、タクマの張ったバリアを使って、岩の壁を飛び越えたッ!!


「うわすげー!!!」

「ヒャホ〜!!!」

「よし!!」


 着地も見事に成功し、3人はそのまま進み続ける! 向かうはリリィ達の元へ!!


 そしてスレイヤー達が煉獄メンバーとの合流を選択したと察知したチーターは焦る!!


「くッ!行かせたらマズイ!!」


 スレイヤーはシングルスの面々と合流させるなと指示されているチーターは急いでスレイヤー一行を追うが、地中を好きに移動できるとは言えその移動方法は徒歩。魔術士であるチーターでは到底追い付けない!!


「クソッ!! いいだろう……地上で相手してやるッ!!」


 逃げられる事を恐れたチーターは、遂に地上へと姿を現したッ!!


「〈高速飛行(ハイスピードフライ)〉ッ!!」


 地上へと飛びだしたチーターは飛行魔法を発動し、高速で飛んでスレイヤー達を追うッ!!


 無論それに気付かないスレイヤーではないッ!


「来たか…!」


 後ろからグングンとチーターが迫るッ!


「ごめんスレイヤー!MP切れた!!」


 丁度そのタイミングでサラのMPも切れ、推進力となっていた〈ブラストアロー〉が無くなってしまう!


「ハッハッハッー!!串刺しにしてやるよぉ!!」


 魔法の射程圏内にスレイヤー達を捉えたチーターは攻撃魔法を発動しようとする!!


 その瞬間ッ!!


「〈螺旋・壊牙(かいが)〉ッ!!」


 スレイヤーは乗っている大盾へと、捻りを加えた強力な掌底を叩き込んだッ!!



――ボゴォォオオッ!!!――



 スレイヤー自身のHPを削ってしまう程の威力を誇る攻撃を受け、大盾は地面に陥没ッ! 前進していた勢いを失ってその場に急停止したッ!!


「うわ!?」

「ぎゃ!?」


 タクマとサラが吹っ飛ぶ中、


「うぉッ!?」


 高速で飛行していたチーターはスレイヤー達の頭上を追い越しそうになり、慌てて止まろうとする。が、その心配は必要なかった。


 ギラリと、スレイヤーの兜の中に紅い眼光が走る。その眼が見詰めるのは、丁度スレイヤーの真上を通り過ぎそうになるチーターの姿ッ!!


 スレイヤーは瞬時に姿勢を下げ、異様なほど身体を低くした構えを取るッ! そして、


「〈翼穿脚(よくせんきゃく)〉ッ!!」


 真上にのみ放てる跳び蹴りを打ち放ったッ!!


「なにッ―――」



――ドギャァアッ!!!――



 チーターは突然上昇しながら蹴りを打ち込んで来たスレイヤーに反応できず、その身体を刺突属性を持つ蹴りによって大きく貫かれたッ!!


「うがぁ!?」


 チーターの胴体から大量の血が吹き出すッ!

 しかしまだスレイヤーの攻撃は終わらないッ!!


「〈武装・(ファースト)〉」


 スレイヤーは金棒を召喚し、落下中の行くチーターへと振り下ろすッ!!



――ドゴォオオッ!!!――



 金棒の重たい一撃はチーターの頭を正確に捉え、奴を地面に叩き落したッ!!



――バコォオオンッ!!――



「クソがぁ……スレイヤー…!……………」


 地面に激突したチーターはHPが底を突き、消滅していった。


「ふぅ…」


 スレイヤーは上手に地面へ着地し、金棒をしまって息を付いた。


「す、スレイヤーさん!」


 タクマに呼ばれてそちらを向くと、大盾の急ブレーキによって吹っ飛ばされていたタクマとサラが彼を睨んでいた。


「……次からは一声掛ける」


 スレイヤーはそう約束するのだった。




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