5、狂心です。
中心部が爆発した途端、それと連鎖するように爆発が次々と起きていた。一瞬のうちに目の前に広がる街は壊滅した。
なんだこれは……こんな技術力がこの世界にあったのか?
「あぁ……そうだ…そうだった……」
「急がなきゃいけなかったんだ……」
「なんで私はこんな呑気にしてたんだろう……」
「なんで忘れて……忘れたフリなんか……」
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
サナリンがぶつぶつとよく分からないことを言っている。次の瞬間サナリンは人が変わったかのように叫びはじめた。
「汚い!」
「醜い!」
「死んで!」
そう言いながらサナリンは近くの岩に自身の頭をぶつけ始めた。
ひとつも理解が追いつかない俺はサナリンを羽交い締めする形で止めた。
「落ち着け!!どうしたんだ!」
それでもサナリンには俺の声は届いていないのだろうか。頭を打ち付けようと必死でもがいてくる。
「離してください!!こんな醜くて汚い生き物早く消えるべきなんです!!」
意味がわからない。この爆発はサナリンと関係があるのか?しかし今は彼女をどうにかしないといけない。
「離して!どうして止めるんですか!!」
まずい、心が完全に壊れている。
難しい文言を並べても今のサナリンには届かないだろう。俺はサナリンの目の前に立ち彼女の頬を両手で覆う。
「サナリン!!!聞け!!」
「君は悪くない!俺は君の明るさと笑顔に救われた!!サナリンは優しくて素晴らしい心を持っている!!」
「俺は無邪気で明るい笑顔をしている君が大好きだ!」
「俺の目を見ろ!すべて本心で言っている!!」
すると、サナリンは目に涙を浮かべ
「カン...ザキ……さん……私…わたし……」
少しは落ち着いたようだ。
「何があったのか話してくれないか?」
「それからどうするべきかを考えればいいだろ」
「俺は君の味方だ……信じろ」
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しばらくはその場で泣き続けていたが
少し時間が経ってようやく会話ができるくらいには落ち着いてくれた。
俺が話しかけようとしたが彼女が先に口を開いた。
「私はこの国で平凡な家庭から産まれました…」
「父は商売をしていて母は病弱ではありましたが家の仕事をしてしました。」
「この国は他の国からの侵略に備えるため主力は基本的に国に置き集落や小国を攻める時はいつも平民から徴兵していたんです。父もその1人でした。」
「そんな中、母の容態が悪化しました。父は母の傍にいたいと願いましたが認めては貰えませんでした。」
「そして、母は死にました。」
「父が兵役から戻った時には亡骸さえ拝むことは出来なかったんです。」
その日を境に父は恐くなっていきました