4、出発です。
「あの…カンザキさんは今起こっている争いを止めたいと考えているんですよね?」
楽しい食事を終えたあとサナリンが真剣な顔で聞いてくる。鋭いな、バレていたらしい。
「まぁ、そうだな。細かく言うと争いが起きない世界にする……だが。それが俺の使命だ。」
「使命……」
サナリンは何故だか泣きそうな顔でそう言うと下を向いたまま黙り込んでしまった。
「これは俺がやりたくてやろうとしてる事だからサナリンを巻き込むつもりはない。それぞれの国のだいたいの方角を教えてくれないか。そうしたら俺はもう出発するよ。」
彼女の方から手伝うなどとは言ってきてはいないのだが何故だが断るような言い方をしてしまった。
「私…決めました。」
サナリンは顔を上げて言った。
「私、カンザキさんと一緒にこの世界を良くします!」
「手伝わせていただけないでしょうか!」
サナリンから予想外な言葉をかけられる。
余程勇気を出して決断したのだろうか、声は震え、目は少し潤んでいる。
「…わかった。よろしく頼むよ。」
多分サナリンは内心やりたくない、と思っている。こんな僻地に居たのも嫌なことから逃げてきたのだと思う。すべてを投げ出したい気持ちと同時に投げ出した自分を許せない気持ちがせめぎ合っている中で彼女は後者の気持ちが勝った。だから、彼女はこんな顔で「手伝う」と言ったのだろう。
……って俺は何を勝手に決めつけているのだろうか。良くない癖だ。彼女の気持ちは彼女しか分からないのに。
「それじゃあ、今日はここで野宿して明日の朝出発しよう。」
「はい!」
――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
「ハア……ハア……」
どれほど歩いただろうか。足は棒のようになり、息も切れ、心臓が張り裂けそうだ。
サナリンに聞いたかんじだと、この世界には機械の類がない。創造したものは消せないので車など俺がいた世界のものを創造したら後々この世界に影響が出ると思いやめたが後悔した。自転車くらいなら出しても良かったかもしれない。
「カンザキさーん!見てください!この木になってる実はとっても美味しいんですよ、取ってあげますね!」
サナリンはそういうとスルスルと木を登っていった。
猿かアイツは。というか、こんだけ歩いたのになぜあんなに元気なのか。無限体力というチートでも持っているのだろうか。
―――――――――――――――
―――――――――
「カンザキさん、着きましたよ。」
疲れきって下を向きながら歩いていた俺はサナリンに言われ、顔をあげる。
そこには中世ヨーロッパ風な数々の建物と大きな城―――
まさに国があった。
「ここが私が生まれた国 ナイロ です!」
彼女がこちらに振り向いたとき、俺は驚愕の瞬間を目の当たりにした。
巨大な爆発音と共にナイロは火の海と化したのだ。