『跡』
「跡」
お気に入りだったサンダルを片手に、足に残る日焼けの跡を見つめた。
白い砂粒が親指と人差し指の股に溜まっている。
次の波で、足を洗う。
ふふ。
やっぱり、白い砂粒が残る足。
日焼け止めをたっぷり塗って歩いたけれど。
夏の思い出はくっきりと。
海に向かって日に当てる。
大きな麦わら、黒いワンピース。
スカートの裾にも白い粒。
流した思い出、波が寄せて戻してきたの。
全部飲み込んでくれれば良いのにね。
あの太陽みたいに、溶かしてしまえば。
私を砂に沈めようとするくせに。
片手は麦わら、転びそう。
波の音に夕焼け。
もう、無理かしら。
沈んでしまった太陽を見つめる。
甲に残ったサンダルの跡。
纏わり付く、白い砂粒。
海に落ち、滲み出た橙。
ふふ。
消えない色と
波に揺れる肌色が冷たい。
お読みくださりありがとうございました。
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