チート検出
「うむ。状況は理解した。魔王軍はその作業に手を貸すことを約束しよう」
『ありがとうございます。...という事で皆様、回収作業及びウチの元世界神と召喚者様をどうかお願い致します』
「おォーい一言余計だっ!!スノアーッ!!」
『こんな感じの方なんですが、世界神としての成績は良かったですし、自分の状況が悪くなった途端に土下座できるくらいには賢いですので...』
「スゥノアーーーーーーーッ!!!」
元女神の怒号と共に、空から響く声もだんだんと遠のいていく。
『あー!あと、ルヴィルフィール様のネックレスが近くのチートを検出するようにしておきましたので〜!』
その言葉を最後に、空からの声はぱたりと止んだ。隣では、元女神が悔しそうに服を噛みながら天井から覗く空を見上げている。
「ぐぬぬ...よりにもよって我が...しかも912世界の輩に手助けを乞う事になるとは...」
「輩て」
「うっさい!チートの原案だか何だか知らんが、我は科学世界の技術やコンテンツなんて一切認めんからな!」
元女神のよく分からない怒りが頂点に達したその時、元女神の首にかかった金色のネックレスからけたたましいアラーム音が鳴り響いた。
「びっっっくりしたぁ!何これ!?」
「さっきスノアさんが言ってたチートの検出音でしょこれ!」
「そ、そうか!」
気付くのが遅い元女神は、そう言いながらネックレスを手に持ち、慣れた手つきでネックレスのアラーム音を解除した。
「あれ、チートの検出機能ってさっき付いたんじゃ?」
「いや、普段は目覚ましにしてたから...」
「目覚ましかぁ...」
「では、近くに回収対象がある、という事であるな」
神の世界の神秘性を疑いたくなった所で、玉座に座った魔王からの重厚な声が響いた。
「うむ!という事で魔王、出発しよう!」
「いや、我はこれから会議があるから無理だ」
「えっ、会議?世界の危機なのに?会議??」
「うむ。魔王軍内での定例会議であればいくらでも延期できるが、今回は人間たちにも足を運んできてもらっているからな。待てとも帰れとも言えぬ」
「ああ...はい、了解です...」
元女神は元女神で社会の世知辛さを知ったような顔で、魔王の断りをすんなりと受け入れた。
「代わりに部下を二人と...副メイド長を一人同行させよう」
「...魔王様、どちらの?」
「猫の方」
「まあ...それなら」
魔王が隣にいる何やら苦い顔をしたメイドさんと怪しげに言葉を交わしているが、まあ大丈夫だろう。
「では、アーマーガイストとエンチャントトレーサー。二人と共に現地に向かうのだ」
「「はっ!」」
魔王の言葉に応じ、部屋を取り囲む魔物の群れの中から姿を現したのは、いかにもな鎧騎士と、ローブで顔まで覆った小柄な少女。その...こう言っては何だが、今からチートを回収...もしかすれば、チートを所有する者と対峙する訳だが、そう考えると何となく...そう、相手にならなそうだなぁというか...
『コイツら弱そッ』
漏れちゃったかー。