チート付与
「えーと...じゃあ、世界に散らばったチートを回収する作業を手伝え...って事ですか?」
『はい。理解が早くて助かります』
「え〜...でも俺も自分の世界で自分のやるべき事があったんですけど...」
『そちらの世界の神には、「アニメやゲーム等チートに関する知識を有する、いなくなっても世界に何ら影響をもたらさないであろう人物」という要請を出していました』
「よーっし頑張りまーすっ!」
『え〜と...それと局長から召喚者...エイト様へチートが付与されるそうです』
「えっ、マジで!?」
脳内に響く言葉に心躍る。夢にまで見たチートを、まさか自分が手にする事になるのだ。ラノベや漫画でしゃぶられるだけしゃぶられ、味がしないどころか溶け切ったガムのように萎れたコンテンツだと思っていたが、いざ自分がとなると存外に嬉しいものだ。
何だろう、戦いに使えるヤツかな?金儲けに使えるヤツかな?一見弱そうだけど使い方次第で強くなるヤツかな?
『はいっ!今付与されました!』
「早ッ」
しかし、特に体に変化を感じるわけでは無い。ステータスに影響を与えるようなチートではないのかな?
『あっ、これをお渡ししなきゃですね!』
その声と同時に、空から落ちてきたのはよく見るスケッチブックとペンケース。
「えーと...これで何を?」
『はい、エイト様のチートは【描いた物を実体化する】チートとなっております』
「え...描いた物を...?」
何やらぱっと見で強そうなチートでは無い。しかし、よくよく考えてみれば...
「...この世界のレアな武器や装備を量産できる!」
『あ、いえ。エイト様が元いた世界の物だけです...』
...なるほど、確かに。それができてしまうと流石に強すぎるか...では!
「...現代兵器や電化製品を使って無双!」
『複雑な構造のものはちょっと...』
...確かに。この中世風の世界観にミサイルやレールガンが飛び交うのは合わないのだろう...ならば!
「...実体化した物に特殊効果が付与される!」
『そういうのは特に...』
「じゃあなんなんですかこのチート!?」
限界でした。
『あの...そのぉ...実はぁ...』
「な...なんですか、本当は隠された力でもあるんですか!?」」
『実はそのチート...失敗作の余り物なんですぅ』
「エッ」