女神漏洩
「えっ、それどういうこと!?」
『えーっとですね...じゃあ好きな食べ物を思い浮かべてみてください』
「...?」
好きな食べ物を問われればそれは勿論...
『天界印の赤リンゴ!』
「...アレ!?」
「な、何だ今の...リンゴ?」
「頭の中に神様こっちの神様の声が...」
一瞬頭で考えた事が、思考通信を繋げた時のように自分自身の声で頭の中に響き渡った。しかも、周りにいる魔物達にも同様に聞こえているようだ。
『このように、ルヴィルフィール様の考えた事は半径50メートル程の範囲の生物に筒抜けになってしまいます...』
「シ...システムのバグなんでしょ!?そっちでなんとかできないの!?」
『すみません、こちらでは何とも〜...』
「そ...そんなぁ〜...」
しかもマズイ。力を失った今、さっきの嘘がバレでも...あっ、
『さっきの話は全部嘘で、本当は我が起こした事故の後始末をこいつらにやらせようとしてたなんてバレたらヤバいじゃんー!』
「ア゛ァーーーーーーーーッッ!!!!」
「...嘘?」
「ああ...確かに聞こえたぜ、コイツの考えてる事が」
あからさまに空気がピリついていくのを感じる。
マズイ、マズイマズイマズイ。
「ふっざけんなぁ!!」
「自分の仕事を体よく押し付けようとしやがって!!」
「さっきみたいな力も使えないようだし...」
「魔王様!コイツどうしてやりますか!?」
「...うむ」
『あ、あの、えーと、み...皆様ぁ...』
「あ...あ、ああああ」
考えろ、考えろ〜この場を切り抜ける方法!魔王に死刑宣告でもされたらコイツらもう絶対止まらん!なにか、なにか神的グッドアイデアでスタイリッシュにこの場を切り抜ける方法はぁ...
「ご...ごべんなさぁーいっ!!!!」
途端に静まり返る場内。辛い、沈黙が辛い。しかし、ここでやり遂げねば女神が廃る。
「嘘ついてごべんなさいっ!!どうか我に皆様の力を貸してください、このとーり!!」
「お...おう」
「魔王様...」
「うむ...」
女神の全身全霊を懸け、悉くを顧みない全力の土下座により、現場の空気感は一気に冷え切った。なんならちょっと引いてる奴らもいる。
『えーと...皆様ぁ』
気まずい空気に割って入ったスノアの声に、絶賛土下座中の元女神以外の全員が思わず上を向く。
『世界をリセット...っていうのはこの世界を抹消することを意味していますので...あの...どうか手伝ってあげて下さい...ね...?』
「え、抹消って...俺ら死ぬの?」
「じゃあやるしかねえじゃん...」
「魔王様...どうしますか...」
「うむ...」
スノアの言葉で、現場はなあなあでチート回収に向かう事になりそうだ。...そう、ではあるのだが。
「スノア...もうちょっと早く言ってくれ」
地面から顔を離すこともできないまま、かなぐり捨てたプライドの声を代弁するかのように。ただそれだけを呟いた。