インビジブル・テンポ
「神妙にするでござーるッ!!」
五反田がグロッキーになっていた透明人間を掴み上げ、そのまま羽交い締めにする。
「ぐおおっ...は、離せっ...!」
「くっ...加勢を!」
「任せろッ!!」
「お、おう!」
飛び出した元女神に続き、透明人間の下半身に二人がかりで飛びかかる。
「ちょ...ちょっと待て!」
どうしてやろうかと考えていると、透明人間が口を開いた。
「俺は透明人間になったが...自分の体しか透明になれないのさ!!」
「それがどうし...」
言っている途中で、少し考える。五反田が羽交い締めにしているのだから、この透明人間は立っている。であれば、俺と元女神が腕を回して押さえているのは腰辺りだ。そして、こいつの言う事を信じるとすると、こいつが今完全に透明であるという事は...
「オゲーーーーーーーッッッ!!!」
「オワーッ!?何してんのエイトォ!!ちゃんと押さえないと逃げちゃうでしょーーーッ!!」
思わず手を離して後ずさってしまった俺に代わり、元女神が透明人間の腰にがっしりと腕を回してホールド。大声で叫びながら、輪郭が歪むほどにべったりと頬を透明人間に押し付けている。
「元女神ーッ!!悪い事言わんから離れろーーーッ!!」
「はァ!?何言ってんの早く手伝って...うご、動くなァーーーッ!!」
「あぁああぁああぁぁあぁ...」
どうにか拘束を逃れようともがき暴れる透明人間、絶対に離すまいと人知れず女神としての権威をとてつもない勢いで失っていく元女神。
「クッソコイツ...噛みついてやるッッ!!」
「それだけはヤメロッッ!!」