サイエンティスト(純)
「オゲェー苦しかったァ!!」
猿轡を外し、五反田と伊香保の三人係で拘束具を取り外しに掛かる。
「何でこんな事になってんだお前!」
「しし、知らない知らないッ!なんか気付いたらこんなとこでこんな感じになってるし!今の今までそのナイフでお腹掻っ捌かれる所だったのッッ!!」
今の今まで使っていたかの様に、容器の中ではなく台に直接置かれている巨大な刃物が視界に入ったz伊香保がここに来る予定がなかったらと思うとゾッとする...
拘束具を外すのに手こずっていると、部屋の奥から足音が響いてきた。
「所長ー?うるさいですよ、何やってんでうお何だアンタらァ!?」
「アァーーーまた来た!!殺されるーーーバラバラにされるーーー!!!」
「やばい元女神が下処理される!!早く外せーッ!!」
「女神殿ーッ!すぐ助けるでござるよー!」
「え...えっと...えーっと...」
「なになになに下処理!?しないし!!てか誰!!??」
「やだーやだやだ我...我まだ生きたいーーーーーーーッ!!!!!」
*****
「いやまあ...ホントに...ウチの所長が悪いことしたわ...」
よれよれになった白衣を着た女が、ボサボサの頭を下げる。
「我!!マジで!!死ぬ所だった!!」
「悪かったって...ほら、お菓子食べな」
「...」
怒った表情を見せながらも、出されたお茶菓子を渋々食べ始める元女神。何はともあれ、元女神は解体されなかったし、甘いものを食べてる間に機嫌も治るだろう。
「皆さん大変お待たせシました。いやあ、茶葉を切らしてしまいまして...」
「ムァッッッ」
高そうな茶葉の匂いを漂わせながら歩いてくる所長の姿を見るなり、元女神が変な声を出して俺の背中に隠れた。おお、威嚇してる威嚇してる。
「オや、カイさん。徹夜明けなのにもう起きたのデすか?」
「所長〜、被験体に同意の無い実験は止めるよう言いましたよね〜?」
「同意が無いなどとは滅相モない!先日彼女を見かけた時にワタシは気付いたのです、彼女は人でも魔物でもない、どちらをも超越した存在であると!だカら今朝、寝ている間にこちらにお連れして色々調べようと...」
「拉致ってんじゃないですか!それをダメだって言ってるんです!」
カイに怒鳴られた所長は、ティーポットとカップの乗ったトレーを机に置き、しょんぼりと肩を落として元女神の方を見た。
「大変申し訳ありマせんでした...今度はしっかりと同意を得てから解剖させて頂くので...」
「ダ...ダメ...」
「五反田...この人の何処が優しいんだよ...」
「や...探究心に満ち溢れた、純粋な科学者なんでござるよ、多分...」
マッドサイエンティストの間違いであろう。