ごえいがかり
「...ふむ...ほお......むむ.........なんとッ!!??」
「五反田...漫画くらい静かに読んでくれ...」
「や、これは失敬!」
カーペットに姿勢よく正座し、喧しく漫画を読んでいた五反田が頭を下げる。昨日ぶち抜かれた胴体もすっかり直り、嘘のようにピンピンしている。
「というか...その、怪我は?」
「塞がったでござる!」
「...勝手に?」
「勿論ですとも!我々アーマーガイスト一同、自分達がどうやったら死ねるかも存ぜぬでござる!」
「へー...」
ジャンル問わずどのゲームでも一番面倒な敵だなそれ。
「そして、負傷の為に久々の長期休暇を頂き!女神殿が仰っていたまんがを堪能しにきた所存にござる!」
「アイツ...」
あまり俺の部屋が未知の物質に溢れるテーマパークじみた所だと知られると、大量の魔族がこの狭い部屋に押しかけてしまうかもしれない。元女神には一応注意しておかないと...
「ところで、件の女神殿は?ここに入り浸っていると聞いたのでござるが...」
「ああ、部屋に閉じこもってるっぽい」
「ござ...?」
事件の後、楽しみにしていたゲームを堪能する為、俺の部屋に押しかけてきた元女神。コントローラーをキラキラした目で眺めていた元女神はだったが、いざ電源ボタンに手を伸ばすと一変。
そう、この部屋のエネルギーはパソコンを動かす謎技術のみ。テレビやゲーム機を動かす電力など、そもそも無かったのである。
そして、元女神はいじけて自室に閉じこもってしまった。俺の部屋から漫画を大量に持ち出して、だ。
「だからあの棚だけごっそり空にござるか...」
五反田もその漫画を読んでいる事だし、もうすぐしたら続きを取り返しにでも行くか。この短時間で無くしたりしていなければいいが...
「あっ、そういえば侵入者の処分はどうなったでござるか?拙者、今朝まで自室で休んでいたもので...」
「僕はここだよ」
「ござッッッ!!??」
ぱかっと開いた天井の一部から逆さまに顔を出したザンセツに驚き、あわや五反田がバラバラになりかける。
「な、な、なぜココにッ!?」
「あー...それが...」
「僕が彼の護衛係になったんだ」
俺が話しづらそうにしていると、ザンセツが音もなく床に着地し、話を紡ぎ出した。
「ご、護衛係にござるか...」
「そう。24時間、いつでもどこでも。彼の身に危険が及ばないように。そして...」
ザンセツの冷たい視線が、ゆっくりと突き刺すようにこちらに向く。
「彼が僕の秘密を漏らさないように...ね」
「ご、五反田、暇なら城の案内でもしてくれ!」
「ああ〜、まだ読み途中でござるのに〜...」