剣術SS+
元女神が慌ててアラームを切っていると、広い訓練場の中心に何かが着地した。衝撃はある程度離れているはずのこちらにも届き、大きな砂埃が舞った。
「なんだアレ...とにかく行ってみるか!」
「ちょ...全然休憩してないんだけどーッ!?」
*****
「な...何事ですか!?」
同じく休憩していた防衛隊達とゼルベルも合流し、大勢が騒ぎの元凶の元に駆けつける。晴れてきた砂埃の中で、ぬらりと人影が動くのが見えた。
「...ッ!全員下がれッ!!」
ゼルベルが叫ぶと同時に、砂埃から何かが飛び出す。目にも止まらぬ速さで振り下ろされたその刃を、ゼルベルが間一髪で受け止めていた。
「あれ...止められちゃったか」
「...何者だッ!?」
ゼルベルが剣を弾き、両者が距離を取る。黒い衣装を身に纏った小柄な相手が、手に持った刀身の短い刀をゼルベルに突きつけた。
「僕は残雪。東の国から、魔王城の偵察任務にやってきたんだ」
「...随分と派手な偵察任務ですね」
「気が変わったのさ。ここに来る間に変なものを拾ってね。力が溢れてどうしようもなく...何かを斬りたくて斬りたくて斬りたくて斬りたくて斬りたくて...堪らないんだ」
そそくさと逃げ出そうとする元女神の肩を引っ掴んで戻す。
「な...何をする!あんなヤバそうなやつと関わるのはゴメンだぞ!」
「アイツ...変なもの拾ったって言ってたろ。さっきのアラーム音、アイツに反応してたんじゃないか?」
その言葉にハッと気付かされた様子の元女神は、俺の陰に隠れながら、こっそりとザンセツをネックレスに翳してみせた。
「今の僕なら、一人で魔族を皆殺しにできる...!誰にも、僕の邪魔はさせない!!」
「総員退避!!魔王様に知らせろッ!!!」
ゼルベルが叫ぶと同時に、ザンセツの姿が煙のように消えた。何処に行ったと探す間も無くして、激しい金属音が辺りを襲う。音の方では、ゼルベルが素早く様々な方向に剣を構え、見えない攻撃を捌いている。
刃が打ちつけ合う音は段々と激しくなり、切り裂くような鋭い風が吹き荒ぶ。流石に身の危険を感じ、慌てて元女神の腕を掴んで走り出す。
「早く!一旦逃げるぞ!」
「おいゼルベル!ソイツは【剣術SS+】のチート持ちだ!気をつけろーーッ!!!」
「昨日のヤツと単位違くない!?」
「我に言うなッ!!!」