回収完了?
その後、よろよろと歩いてきた伊香保の回復魔法によって青年はなんとか一命を取り留め、魔王は会議資料をまとめる作業があるため一足早く転送魔法で帰っていった。ようやく頭を見つけて戻ってきた五反田も合流し、青年からチートを回収する作業に取り掛かる。
「えーと...確かこのネックレスを胸に当てて...」
「いやぁ、全く大変な目にあったでござる!ところで伊香保殿は何故べしょべしょに?」
「ス、スライムの体液です...あと五反田さん、頭が前後ろ逆についてます...」
「お前らうるさーい!大事なところなんだから黙ってろっ!」
怒鳴り散らした後、ぶつくさ言いながらも着々と準備を進めていく元女神。外したネックレスを青年の胸元に翳すと、ネックレスについた宝石が眩い光を放ち始めた。
「キタキタ!これで回収完...!」
プツンと、テレビの電源が切れるように突然光が消えた。
「了...」
「...できたの?」
「いや...分かんない...」
『あー、あー!ルヴィルフィール様〜!』
微妙な雰囲気が漂う中、頭の中に聞き覚えのある声が響いてきた。
「スノアー!これどういう事ー!?」
『すみません〜!ネックレスの機能はさっき急ピッチでインストールしたものだったので、バグがあったり対応してるチートが少ないみたいで...』
「対応してるチート...」
この女神達の会話を聞いていると、奇跡や加護なんかの神秘的な要素への憧れと畏敬の念がますます薄れていく。
『と、とにかくバグか対応前か分かりませんが、そのチートはまだ回収できないようです〜!』
「えー!?じゃあどうすんの!?コイツがいつまた暴れ出すか分からないんだけど!!」
『え〜と...あまり手荒な手段は取れないのですが...』
そして少しの間響かなくなる声。向こうで対応を考えてくれるのであれば安心だ。回収できないまでも力を封印するとか、最悪の場合でも絶対に破られない牢屋とかを用意してくれるだろう。
『こちらの意思でいつでもどこからでも爆破できる紋章を刻んでおくのはいかがでしょう?』
「...あー」
流石にドン引きしている様子の元女神。緑色の肌でもはっきり分かるほどに青ざめる青年と、うんうんと頷く五反田と伊香保。お前らも大概だぞ。
そして上にいる現女神様、それを手荒な手段というのではないでしょうか。
「じゃ...じゃあそれで」
渋々その案を採用した元女神の方をとてつもない勢いで二度見する青年の驚いた顔は、今までに見た事がないほど壮絶なものであった。