逃走
箱根駅伝ランナーの様にブランケットを羽織り、完全に戦意喪失してしまった伊香保を離れたところに避難させ、元女神と共に青年と向き合う。
「さて、どうするか!」
「おい!?お前ノープランだったの!?」
「残りはお前らだけだ!!行くぜーッ!!」
「と、とにかく逃げるぞッ!」
勢いよく飛びかかってきた青年から背を向け、一目散に走り出す。
「フハハ!逃げても無駄だぜーッ!」
「よ...よしエイト!なんか足止めする物を描け!」
「足止め...足止めったって...そうだ!」
幸いにも青年は力が強くなるだけで、足が速くなるわけではないようだ。崩壊しかけた民家の間を駆け抜けながら、スケッチブックに走り書きで描くのは撒菱。そう、ばら撒いて追っ手の足を止めるのにはうってつけのアレである。ポポポンと大量に出現した撒菱を元女神が両腕で抱え込んだ。
「よし!それを地面にばら撒け!」
「わ...わかった!」
元女神が茶色い撒菱を地面にばら撒く。これで多少の足止めにはなる筈...アレ?
「ちょっと待て、お前腕大丈夫なのか?」
「腕?べ、別になんともないけど...」
走る元女神の腕を見ると、確かに怪我はしていない様だ。しかも、腕に撒菱の残りがくっついている。失礼して手に取ると、確かに尖っていない上に、物凄く見覚えのある感触と見た目をしている。...少し齧ってみた。
「小枝だコレ!!」
「チョッッッコレートじゃんッ!!!」
「なんだコレ旨ッ!!」
「食われてんじゃんッ!!!」
「結果的に足止めになったな!」
「やかましーッ!!」
ちまちまと小枝を拾い食いする青年の隙を突き、離れた民家の影に隠れることに成功する。息を潜めながら、元女神と共に作戦を練る。
「はぁ...正面から向かっても絶対勝てないなアレは」
「ど...どっちにしろチョコレートじゃ戦えんわ...」
「う〜ん...どうしたもんか...」
二人で唸るものの、中々いいアイデアは思い浮かばない。
『というかコイツのクソみたいな能力じゃどうにもならないな...』
「それは俺が一番分かってんだ...」
「...すまん」
とはいえ、俺の能力でまともに戦う事は不可能だろう。とりあえず、少しでも足止めになるような物でも描いておくか...
「...なにそれ」
「網」
「網かぁ...」
スケッチブックに描かれたアミアミが実体化する。が、なんか思ってたのと違う。硬いし軽いし、またもや見覚えのある何か...これは...
「サッポロポテト!」
「菓子しか出せんのかお前はァ!!!」