圧倒的破壊力
「と...とにかくオレは治るんだな!良かった...何でもかんでも壊しちまってオレもう...どうしたらいいのかわかんなくて...」
緑色の肌の青年はそう言いながら、地面に膝をついて震え始めた。制御できない力というものは、時に使用者さえも蝕むことがあるのか...
「安心するでござる!そこにおられる女神殿が、貴殿を元の状態に戻してくださるでござるよ!」
五反田はそんな啜り泣く青年に歩み寄り、元気付けるようにそっと手を差し出した。
「本当か...ありがとう...本当にありがとう...!!」
青年は涙を拭い、目の前に差し出された小手の向かって手を伸ばす。
「うむ!では早速ぶあああああああああああああッッッ!!?」
青年が五反田の手を取った瞬間、その衝撃で五反田の甲冑の体が勢いよく飛び散った。
「「ご、五反田ーーーーッ!!!」」
思わず叫ぶ俺と元女神、唖然とする伊香保の周りに、バラバラになった五反田のパーツが降り注ぐ。
「いやこれ洒落になら...おっと」
ぎこちない動きで首をこちらに向けた元女神の手元に、何かがすっぽりと飛び込んでくる。見ると、元女神の両手には弾け飛んだ五反田の頭部が収まっていた。
「おっと!ナイスキャッチでござる女神ど...」
「喋ッ、ギャーッッ!!!!」
「ゴザーーーーーーッッ!!?」
ビビり散らかした元女神の全力投球。五反田が生きていたことを喜ぶ暇もなく、彼の頭部は大空を舞って消えた。そのうちに首から下のパーツは繋がって立ち上がり、ヨタヨタとどこかに飛んで行った首を探しに行った。
「...アレもしかして五反田生きてた!?」
「は、はい...アーマーガイストはバラバラになったくらいでは死なないので...」
「いや、あれは俺もビビった」
「そ...そうだよな?我、悪くないよな...?」
オロオロする元女神の奥で、青年が罪を犯した自らの右手を見つめながら、ブルブルと震えていた。
「アーマーガイストがバラバラに...やっぱりオレおかしいんだ...もうどうにもならないんだぁーーっ!!」
完全に冷静さを失ってしまった青年が、両拳で地面を叩く。巨大な衝撃が大地を揺らし、地割れを起こした。青年を中心に巨大な土の塊がそこかしこに飛んでいく。
「うおお...ヤバい!このままだと本当に死人が出る!」
「い、伊香保!何とかしろーッ!!」
「え、えーと...えーと...えいっ!!」
伊香保が青年に向けて両手を翳すと、周囲の地面が勢いよく盛り上がり、たちまち巨大な山を形成。暴れる青年を中に閉じ込めることに成功した。
「凄い...けど、これ生き埋めでは?」
「中にちょっとだけ空洞を作っておいたので、少し入っている分には支障ありません...多分」
「多分」
「ま、我が死ぬよりアイツが死んだ方がよい。死体からチートもぎ取って作業完了ってな!」
鬼畜元女神の言葉も束の間、聳え立つ土の山は突如鳴り響いた轟音と共に砕け散り、砂埃の陰から立ち上がる青年の姿を覗かせた。
「あ、あれ...魔力で強化したからそんな簡単に破れる筈じゃ...!?」
「うわあ...これダメそうだぞ...」
「よーし!我は逃げるッ!!」
「それもダメだッ」