桜と君と。
初投稿です。
ぶりっ子って結構可愛いなと思い書きました。
文字で人物の性格を出すって意外と難しいですね。
それでは本編どうぞ。
空が見えなくなるほど桃色が敷き詰められる季節、それは出会いの季節でもある。とは言うものの、私に出会いを求める気は更々ない。
「レイちゃんおはよ!」
真っ黒なツインテールを揺らし、大きな瞳を開かせて周りの景色に負けないくらいの満面の笑みで私の名前を呼ぶ彼女。
「おはよう、風花」
「レイちゃんはどこのクラスだった?」
昇降口に貼ってあるクラス分けの紙を見ながら風花が言う。
「私は……二組だね」
「やったぁ!風花もレイちゃんとおんなじクラスだった!」
そう彼女は太陽のような笑顔と共に言った。
教室に行くと大半の人が揃っていた。
自分の席で静かに窓の外を眺めている人もいれば、友達と春休みのことについて話している人もいる。
私と風花の席は近いとは言い難く、彼女は少し寂しそうな顔をしていた。
「七草さんおはよう」
声のした方を見ると、ボブくらいの髪の長さの女子がいた。
「おはよう、佐藤さん」
「隣が七草さんでよかったー。これからよろしくね!」
そういうと佐藤さんは、ほとんど話したこともなかったのにグイグイ距離を詰めてくる。
(面倒くさいな……)
私が嫌な顔をしていると、それを見ていたのか、風花が私の席に近づいてくる。
「ねぇ、レイちゃん困ってるよ?」
すると佐藤さんは素直にも、そうだったの?ごめんね、と謝ってくる。謝るほどのことでもなかったので大丈夫ですと返しておいた。
そして風花は不満げな様子で自分の席へと戻っていった。
「七草さんって、天宮さんと仲良いの?」
彼女が自分の席に戻った後、佐藤さんが尋ねてきた。
「うん、まあ……」
佐藤さんは、へぇと言った後私に話しかけることはなく、他の友達の元へ行った。
風花はみんなからあまりよく思われていない。皆、彼女がぶりっ子だと言うのだ。話したり関わったこともないくせによく言うよ。
私と風花は幼馴染である。家もそこそこ近く、これまでずっと同じ学校に通っていたので自然と彼女といる時間が長くなり、親友となっていた。
私は彼女のことを親しい友人として接していた。そして、もしかしたら家族よりも長い時間を共にしていた彼女を姉妹同然のように思うようになった。
私は小さい頃から一緒にいた彼女を尊敬していた。どんなことにも怖けずにハキハキいう性格で、間違っていると思ったら正しいことをしようとする。私は根性なしなので、そう思うことがあっても自分の中で思いとどめて外には出さないようにしていた。
そんなある時、周りの雰囲気にどことなく合わせて受け流していた私を見兼ねてか、彼女が私にこう告げた。
——何でレイちゃんはそうやって周りにだけ合わせようとするの?たまには自分の気持ちに素直になりなよ!
それから私は彼女がかっこいいと思った。もちろんドジでおっちょこちょいなところもある。でも、そんなところすら愛おしく思えた。そして分かった。
(ああ、私は風花が好きなんだな)
しかし、この気持ちを彼女にいうことはできなかった。もちろん今は多様性の社会で、同性のことを好きになってもそれは異質なことではない。でも私は彼女に嫌われたくなかった。
——レイちゃんってそういう子だったんだ——
そう言われて蔑まれるのが怖かった。だから、私は自分自身をも欺くことにした。その気持ちに蓋をして——。
あれからしばらく何事もなくただただ月日が流れていった。しかし風花に対する誤解が消えることはなく、彼女とクラスメイトの間には見えなくとも厚い壁が築かれていた。
ある日の放課後、私と風花は二人で帰路についた。周りの木々が花弁を落としている時期だった。
しばらく二人で歩いていると、クレープ屋が目に入った。
「……ねぇ、風花。あそこ」
そう言って私が指差した方向を彼女は見やる。
「え⁈クレープじゃん!早く行こレイちゃん」
するとすぐに私の腕を掴み、走ってその方向に向かった。あまりにも必死なので何だか笑えてきてしまう。
「いちごのクレープください!」
キッチンカーの前に立ちニコニコとそれを注文する姿は、小学生かとツッコミを入れたくなるほどだ。
「レイちゃんは何食べる?」
私は——
「……風花は何がおすすめ?」
「え?レイちゃんはねぇ、……チョコかなぁ」
先程とは打って変わって真剣に考える風花はまるで別人のように見えてしまった。
チョコ大好き、とクスクス笑いながら言った私に彼女はよかったぁ!とまた小学生のような笑顔で応える。
前言撤回。風花はやはり風花だった。
頼んでいたクレープを受け取り、近くにあったベンチに座る。
幸せそうにクリームたっぷりのそれを頬張る姿は天使かと思うくらい可愛かった。
「何でそんなに笑ってるのよ」
そんな彼女が面白くてつい笑いが漏れてしまった。
「別に?ただそんなにクレープ好きだったんだなって」
「いいじゃない!レイちゃんだって好きなものくらいあるでしょ?」
その瞬間、私は下を見て俯いてしまった。心配そうに顔を覗き込む彼女を他所に、私は呟いた。
「風花……」
「……ん?」
「私は風花が好き」
顔を上げて彼女の目を見ながらそう言うと、耳が赤く染まり上がった。
「えっと…それは、友達としてってことだよねぇ、?」
困ったようにそう尋ねる彼女。
「ううん。恋愛感情として」
言ってしまった。全部。
本当は言うつもりはなかった。ただ彼女との日常を楽しく過ごせればよかったはずだった。しかし、彼女と結ばれたら、彼女と両想いになれたらなんて夢を見て、人はモノなんかじゃないのに私だけを見てほしいだなんて。
しばらくの沈黙が続いた後、突然彼女が口を開いた。
「ふ、風花も、レイちゃんのことが好き…」
(え——、)
「零那ちゃんのことが、好きです」
顔を赤らめてそう告げる彼女に動揺が隠せなかった。
「……それって、ライクの方?」
「ら、ラブの方で……」
そんな風花の顔を私は今まで見たことがなかった。
さくらんぼのように真っ赤な顔。軽くリップを塗っただけの、クリームが薄く着いたピンク色の唇。
それらは何故かいつもより魅力的に見えた。
しかし、言ってしまったといわんばかりにクレープを持った彼女の手は少し震えていた。私は彼女の手を掴みゆっくりと顔の前まで持っていくと、それを一口頬張った。
「レ、レイちゃん、た……」
私はそう言って慌てふためく彼女をよそに口の中に広がる甘いイチゴの味を楽しんだ。
「ん。美味しい」
「おいしいじゃなくて……」
いつもの風花はどこへやら、といった具合に今の彼女は少々歯切れが悪い。
「どうしたの?」
「どうしたのって、なんでレイちゃんはそんなに嬉しそうなの?」
「なんでって……」
今まで片想いだと思っていた人が本当は自分のことを好きだったなんて、両想い以外での何者でもない。
「だって両想いなんでしょ?そりゃ私だって風花がカノジョになったらやりたかったことたくさんあるんだから。『自分の気持ちに素直に』って言ったのは風花でしょ?」
「い、いつの話してるのよ……」
彼女の顔はますます赤らんでいく。
「今までよりもっと……このいちごのクレープみたいにあまーいこと、二人でたくさんしたいな」
彼女の瞳を見つめながら微笑むと、彼女は頬を膨らませてずるい…、と呟いた。
すると彼女は私の手を掴み、持っていたチョコクレープを小動物のように口いっぱいに頬張った。ツインテールを揺らしながら真っ黒な真珠を輝かせて食べる姿を見ると、彼女はいつもの風花だった。
「ずるいレイちゃん。風花だって……風花だってレイちゃんのこと大好きだもん!」
彼女はまだほんのりと赤く染まっている頬を膨らませて私を横目に見た。ぷんぷんという効果音が似合いすぎるほどに。
それから私たちは、手を繋いで花が散った並木道を歩いた。しかし私の隣には満開の桜が咲き誇っていた。
「レイちゃん、大好きだよ」
二人には心底幸せになってほしいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
自分がどれだけかかるのかを客観的に見るためにも投稿したというのがありますが、色んな人に見てもらいたい欲がなかったわけでもないです。
これからも少しずつ書いていこうと思います。