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24日目

 予想通り、今日は金色の雨が降った。


 エルは雨が降り続く日々にすっかり慣れたらしい。

 「今日はなにして遊ぶの?」というようにじゃれつくエルを撫でて、留守番を頼む。


 途端、エルはあきらかにしょんぼりしてしまった。

 遊んであげたい気持ちはあるけれど、それではいつまでもプレゼントを渡せない。

 今日は我慢して貰おう。


「今日は遊べないけれど、明日は遠くまで出かけようね」


 そう伝えると、エルはすぐに元気になった。頑張らなくては。

 お土産を買ってくるからねと伝えて家を出る。

 綺麗になっていればいいのだけど。






 同僚から貰った土地や別荘は思っていたよりも綺麗だった。

 もちろんある程度の虫はいたが、そこまででもない。

 前の住民が頑張ったのだろう。


 ただ、近くで見ると汚れが目立ったので掃除はした。

 塵一つ残さないよう、丁寧に。


 だって、この別荘はエルへの贈り物なのだから。


 もちろんエルだけで別荘を使えるわけもないので、私と一緒に過ごすための別荘ということになる。

 今の家より広いから、エルも思う存分駆けまわれるはずだ。


 これだけ広いと管理が大変だから、エルにここを見せた後で召使いを雇おう。

 エルと遊んでくれる優しい召使いがいいのだけど。

 そんなことを考えながら掃除を進めていく。


 虫が湧いた水を綺麗なものに入れ替え、各玄関に防犯用の植物を植える。

 この辺りに生えている植物の多くは自力で動かないから、この作業は大切だ。

 常に私がいられるわけではないから、侵入者対策は万全にしておかなければ。


 他はなるべくそのままにしておいた。

 後でエルの意見を取り入れながら変えていけばいい。

 今は汚れを落として、最低限の部分だけ改装しよう。


 一通り綺麗にし終えた頃にはすっかり日が暮れていた。

 途中でこちらを覗かれた時は驚いたけど、すぐに撃退したので問題ない。

 対策もしたから、同じことは起きないはずだ。

 明日にはエルを連れて来られるだろう。


 帰りがけ、エルへお土産を買って行こうと思って店に向かう途中で足を止めた。

 そういえば、以前立ち寄った細工菓子の店はなくなってしまったのだった。

 分かっていたけれど残念だ。あそこの菓子はエルのお気に入りだったのに。


 仕方ないので別の地域に足を伸ばした。

 そこの名物は様々な具材を包んで焼いたパンらしい。

 何がいいのか分からなかったので、とりあえず気になったものを一つずつ買った。

 ペット用に作られたものだから、私が食べられないのが残念だ。


 名物店員だというハーフエルフの売り子は種族のわりにお喋りで気さくだった。

 パンを袋に入れる間も最近話題の噂を話し続けていたほどだ。


「遠くの国でキャンディの雨が降って、砂糖漬けの森が出来たんですって。まるでおとぎ話みたいで素敵ねえ。細工菓子が名産だから、そんな噂が出たのかしら。そうそう。あなた、あそこの細工菓子見たことある? とても綺麗なのよ。お貴族様しか買えないくらい高価だから、私は食べたことないんだけどね。いつか食べてみたいわあ。でもね、うちのパンは見た目こそ敵わないけど、味はきっとその細工菓子よりもおいしいわよ。期待しててね……」


 一つの話題が終わりかけると次の話題に移り、いつまでも話を途切れさせない。

 その手腕は本当にすごいと思う。まるで同僚のようだ。

 その上、自分の店の宣伝まで織り込んでいるのだから私には到底真似出来ない。


 感心している間にも話は続き、おかげで長いこと話相手にされてしまった。

 なにはともあれ、お土産は手に入った。家に帰ろう。






「ただいま、エル」


 家に帰ると、エルが待ちかねたように駆け寄ってきた。

 抱きとめようと腕を伸ばした私の予想に反して、エルが途中で立ち止まる。

 ああ、もしかして匂いが気になるのだろうか。


 今日行ってきた別荘の至るところに砂糖の甘い匂いが染みついていた。

 その匂いが私にも移ってしまったのかもしれない。

 途中で鼻が慣れてしまったのか、気付かなかった。

 甘い物好きなエルが躊躇するのだからよほど強い香りなのだろう。


 急いで魔法で身体を綺麗にすると、エルはようやく私の元に来てくれた。

 「もう匂いはしないな」と確認するように身体を嗅がれる。

 少しして満足げに鳴いていたから、たぶん大丈夫だったのだろう。


「お土産だよ」


 部屋に戻った後、買ってきたパンを広げるとエルが大きく鳴いた。

 待ちかねたように口を開けるエルについ頬が緩む。

 手近なパンを一つちぎって小さな口に入れると、青い瞳がぱっと輝いた。

 「もっともっと」と催促してくるのがかわいらしい。


 細工菓子の店がなくなったと気付いた時には困ったけれど、エルが喜ぶお土産がまた一つ見つかって本当によかった。

 別荘にエルを連れて行ったら、別の地域へも足を伸ばしてみよう。

 これ以外にもエルが気に入る料理があるかもしれない。


 明日が早く来ないかな。

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マシュマロ
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