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15日目

 目が覚めると隣でエルが眠っていた。

 昨夜のことを思いだすと嬉しくなってつい顔が緩んでしまう。

 上司や同僚にからかわれないよう気を付けよう。でも、我慢出来るだろうか。


 銀のナイフは飾り棚の一番目立つ場所に飾っておくことにした。

 エルから初めて貰った宝物だ。どこから見ても目に入る位置に飾っておきたい。


 まだ眠っているエルはそのままに、さっそく朝食作りに取り掛かることにした。

 今日はきっと、おいしい食事が出来るはずだ。






 ハーブ入りの腸詰めを焼いてコカトリスの目玉焼きに添えた頃、私の部屋が少し騒がしくなった。

 サラダ用の葉を提供してくれていた植物からエルの目が覚めたことを知らされて、急いで仕上げる。

 エルの目が覚める前に戻るつもりだったのだけど、すっかり遅くなってしまった。


 出来上がった食事を持って部屋に戻ると、エルが不機嫌そうな面持ちでベッドに座りこんでいた。

 私を見るなり大きな声で鳴くエルの頭を撫でて、ごめんねと謝る。

 もちろん、意地悪で繋いだわけではない。


 私の部屋には綺麗な小物が多いのだけど、その大半はエルにとって危険なものだ。

 エルは好奇心旺盛だし、光り物が多いからうっかり触れてしまう恐れがある。

 怖い思いをさせないようにベッドから降りられない程度の長さのリードで繋いでおいたのだけど、それが気に触ったらしい。

 一緒に寝たはずなのに起きてみればリードで繋がれて放置されていたのだから、それは驚くし機嫌も悪くなるだろう。

 飼い主の都合など、ペットは知る由もないのだから。


「ごめんね。寂しかったね」


 持ってきた食事はサイドテーブルに置いて、まずはエルのリードを外した。

 解放されたエルが隣に座った私にしがみついてくる。

 よほど寂しかったのだろう。


 抱き着くエルを膝に乗せ、小さく切った腸詰めを一つ口元に運ぶ。

 ベッドの上で食事をするなど普段ならまずしないけれど、たまには行儀が悪いのもいいだろう。


 お腹が空いていたのか、用意した食事はあっという間になくなった。

 満足げにするエルの口元を綺麗に拭いて膝から降ろす。


 すると、エルはさっそく室内を探検したがった。

 私と一緒なら部屋を見て回っても特に問題はない。

 エルは賢いから、危険だと教えれば不用意に手を出すことはないはずだ。

 よく見えるようエルを抱えながら、棚に並んだコレクションや素材を解説する。


「この瓶に詰まっているのはエルフの心臓。

 ケイリスの花と混ぜると、どんな苦しみからも解放される薬になる。

 そこの液体はエルフの血液だよ。

 調合によっては身体を内側から焼く毒にもなるし、眠り病の治療薬にもなる。

 酸素に触れさせると変質してしまうから、保存が面倒でね――」


 解説の途中、エルはつまらなさそうに欠伸をした。

 いけない。またやってしまった。


 同僚曰く、私は興味のあることになると話が止まらなくなる悪癖があるらしい。

 知識欲溢れる同僚でさえうんざりさせてしまうほどの私の長話にエルが退屈するのも無理はなかった。

 ごめんね、と謝ってエルの興味を引きそうな別の品の元へ足を運ぶ。


 ほんの少しで幸福感を得られる白い粉。

 火を付けると燃える水。

 暗いところでもほの明るく光る石。


 エルが興味を持った品について簡単に説明しているうち、いつのまにか夜になっていた。

 コレクションはまだたくさんあるけれど、今日はこのくらいにしておこう。

 焦る必要はない。エルとの時間は、余るほどあるのだから。

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