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14日目

 扉が軋む音で目が覚めた。


 微かな足音。近づく気配。

 一瞬侵入者かと身構えたけれど、それなら植物たちが警告するはずだ。

 それに、この気配には覚えがある。


 声を掛けようか迷ったけれど、ここは眠っている振りをすることにした。

 夜中にこっそり忍び込んできて何をするつもりなのか興味があったから。


 しばらくすると、ベッドの横まで来たエルが私の顔を覗き込む気配がした。

 穏やかな寝息を確認したエルが、そっと私の上に乗り上げる。

 小さな手が私の首に置かれたのを見計らって、思い切り抱きしめた。


 エルはさぞ驚いただろう。

 今まで寝ていると思っていた飼い主がいきなり動いたのだから。


「エル?」


 鳴き声一つ上げずに固まってしまったエルの背を軽く叩くとようやく我に返ったらしい。

 腕からするりと抜け出したエルが、少し距離を置いて私を見つめる。

 開いたままの扉から逃げ出す気配はない。

 これは、ひょっとして――。


「寂しかったの?」


 尋ねると、エルはむっとした様子で俯いた。

 とてもかわいらしい仕草につい笑みが零れそうになって慌てて抑える。

 意地っ張りなエルのことだ。ここで笑ってしまえば部屋を出て行きかねない。


「そこは寒いから、こっちにおいで。もう脅かさないから」


 そう言って手招いてもエルが動く気配はなかった。

 どうやらだいぶ機嫌を損ねてしまったらしい。

 ごめんね、と謝りながらそっと近づいて身体を抱き上げる。


 普段は暖かなその身体はすっかり冷え切っていた。

 私の部屋に入るまでさんざん迷っていたせいだろう。

 部屋の入口に飾っていた花が、私が目覚める前のエルの様子を教えてくれた。

 もっと早くに目を覚ませばいいものが見られたのに残念だ。


「今日は一緒に眠ろうか」


 毛布でくるんで一緒にベッドに入ると、胸の辺りに僅かな痛みを感じた。

 見れば、以前エルの皿と共に購入した銀のナイフの先端が私の胸に触れている。

 食事用のナイフだから切れ味は鈍いけれど、金属なので肌に当たれば痛い。


「どうしたの? こんなものを持ち歩いていたら、危ないよ」


 そう言って取り上げれば、エルは何故かがっかりした様子だった。

 ……もしかして、私へのプレゼントのつもりだったのだろうか。


 エルの種は、親しい者同士で贈りものをする習性があると聞く。

 昨日お土産をあげたから、そのお返しのつもりなのかもしれない。


 そういえば、このナイフはエルにプレゼントした皿とセットで売っていた。

 プレゼントしたのは皿だけのつもりだったけれど、エルはナイフやフォークも貰ったと解釈したのだろう。それで、自分の大事なものをわざわざ持ってきてくれたのだと思う。

 いわば、これはエルから貰う初めてのプレゼントというわけだ。


「ありがとう、エル」


 いじらしさに耐え切れず、思わず抱きしめる。

 すると、エルは照れ隠しなのか私の首を甘噛みしてきた。

 小さな手が時折私の首を揉むように押してくるのもかわいらしい。

 おかげで、夜遅いというのにすっかり眠気が吹き飛んでしまった。


 このナイフは宝物にしよう。

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マシュマロ
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