近い冬
そろそろ肌寒くなってきた。
君の紅い頬は僕の鼓動を早くする。
彼女は、ただの幼馴染。
ただそれだけの関係だ。
「寒くなってきたねー」
「そうだな」
僕はそっけなく彼女に返す。
すると、僕の手をポッケから引き摺り出し軽く握ってくる。
「冷たいなー」
彼女の手にはカイロが握られていて、冷え性のおかげで冷たくなっていた手を温めてくれる。
(これだから、君は・・・・)
僕は、大きく溜息をついた。
「溜息つくことないじゃーん」
「気安く手を握るな。お前、恋人できたばかりだろ」
「む。確かに・・・・」
そう、彼女には恋人がいる。
この彼女を独り占めにできる時間もあと何回しかないだろう。
「でも、君だから。・・・・よくない?」
「よくない」
彼女の行動の一つ一つが僕の心を締め付ける。
「えー」
残念がる彼女を見て、僕は不覚にも喜びを感じてしまう自分が大嫌いだ。
彼女とは、もう終わりにするべきなのだろう。
「なぁ、こういうのもうやめにしないか?」
「んー? なにを?」
彼女の振り返る顔に未練が湧く。
「・・・・もう。会わないようにしよう。お前に彼氏が出来たんだからさ。浮気と間違われる」
「大丈夫でしょ。君は弟みたいなものなんだから」
そう笑顔でいう彼女に僕の何かが切れた。
「俺が嫌なんだよ!!」
僕以外の男と君が一緒にいることが・・・・
「一々、変な行動して、俺を毎回毎回困らせて!!」
そんな君も愛らしかった・・・・
「何かあったら、俺に甘えにきて! うんざりなんだよ!!」
嬉しかった・・・・
「大嫌いだ!!」
大好きだ・・・・
僕がそう言い放つと時が止まったような顔をしていた彼女が涙を浮かべ走り去った。
それの後ろ姿を見つめながら、僕は蹲る。
「ぼ、僕って、最低で。本当に気持ち悪いな」
いかないで、そう言いたい気持ちを堪えてただ道端に座る。
「・・・・寒い」
冬は、近い。