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おばあちゃんとの電話がちょっとだけ面白かった話

作者: 川咲 みゆ

最近ちょっとだけ面白かったこと。

土曜日の夜、のんびりとテレビを見ていた時のこと。

スマホから電話の着信音が鳴った。


おばあちゃんからだ。


おばあちゃんからの電話は珍しいことではない。

おばあちゃんは時々、ちょっとしたことでも、特に用事がなくてもこうして電話をくれる。

きっと今回もそんなところだろう。


「もしもし、おばあちゃん?」

「もしもし、孫ちゃん? 今時間よかった?」


いつも通りの挨拶を交わした後、おばあちゃんは少し丁寧な口調になった。


「今日は孫ちゃんに教えてほしいことがあって電話したの。」


何やら今回は用事ありのようだ。

それにしても「教えてほしいこと」って何だ?

こんな聞き方をされると妙に気になる。


それからおばあちゃんはゆっくりと話し始めた。


話によると、おばあちゃんは3日前に部屋の掃除をしていたらしい。

その時、数年前の退職の日に職場の人からもらった寄せ書きが出てきたとのこと。


「『今までありがとう』とか『お疲れ様でした』とか、良いことがいっぱい書いてあってね。」


おばあちゃんは嬉しそうだった。

昔もらった手紙を読み返すのはちょっぴり恥ずかしいが、懐かしくて楽しいだろう。


「でもね、」


ああ、ここからが本題か。


「でもね、寄せ書きの真ん中に書いてあることだけが、読めないのよ。」

「読めないの…?」

「そう。真ん中に書いてあることだから、一番大切なことだと思うの。」

「うんうん。」

「みんなが一番、おばあちゃんに伝えたかったことだと思うのよ。」

「うんうん。」

「でも、それが英語で、おばあちゃんには読めないの。」

「あらら。」


なるほど、英語かあ。


「3日間ずっとモヤモヤしていたの。だから孫ちゃんに英語を教えてもらおうと思って。」

「それなら3日前に電話くれてもよかったのにー。」

「孫ちゃん平日は仕事で疲れているかもしれないと思ってねぇ。」


おばあちゃんは気を遣ってくれていたようだ。

3日間もモヤモヤしていたとは…私がここで解決してあげなければ。

ただ、私にその英語が分かるかどうか…

まあ、分からなければネットか辞書で調べて教えてあげればいい。

ていうか、普通そんな難しいものを退職するおばあちゃんに向けて書くか?


「じゃあ孫ちゃん、読むわね。ええと、エム、イー、エス、…」

「ああ、待って。書くもの準備するから。」


私はさっと広告の裏紙とペンを持った。


「いいよー」

「エム、イー、エス、エス、…」


M、E、S、S、…


「で、ちょっと空けて、エフ、オー、アール…、またちょっと空けて、ワイ…」


F、O、R…




ああ、それ、


Message for you



よく寄せ書きの真ん中に書いてあるよね。

「メッセージ・フォー・ユー」




おばあちゃんは3日間のモヤモヤがスッキリした模様。

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