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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺が記憶を取り戻した頃

それは、ある憂鬱な気分をも吹き飛ばしてくれるような日差しが差し込む日の事だった。


俺の目の前には、雲一つない青空とは逆に身体中の至る所に真っ赤なペンキが塗られている中性的な見た目をした誰かと、真っ赤な絵が置かれている。


「この絵は【心臓】と言うタイトルでね。僕の力作なんだよ。ふふっ。それか、1番の失敗作かもしれないけど」


目の前にいる誰かが、鈴を転がすような声で喋る。

女性かもしれない。


「どうかな?君はどう思う?」


見る目がないことで評判な俺には、何にも分からないから良い絵だと言っておこう。


「それは良かった。僕が必死こいて描いたかいがあったよ」


喜んでくれた。

しかし、この人は誰だろう?

あまりにも自然に俺の部屋に居たのだから聞くタイミングというものを無くしてしまった。

俺の家族には合わなかったのだろうか?今の時間帯なら誰か1人ぐらいいるはずなのに。いや、俺が家に帰って来た時には家族は居たのか?

次々と疑問が湧き出てくる。


「なぁ、少年よ」


突然話しかけてきた。


「ふふっ。なかなかかっこいいセリフだと思わないか?」


……とても無駄な質問だった。

適当にそうですね、とでも返す。


「僕はね、そんなに大層な人間ではないんだよ」


突然何を言い出すのだ。


「善良な一般市民なんだからさ、警戒しなくともだいじょうぶだよ」


突然何を言い出すのだろう。


「きみは、僕の話を聞いてくれるだけでいいんだ。もちろん、聞いてくれたのならば何かを支払おうと、思う。お金をあげてもいいし、君の好きな物を買ってきてもいい。」


意味が分からない。それは、俺が一方的に得をするだけではないか。


「それか、僕の体で支払ってもいいよ」


この人は、普通の男子高校生に何を言い出すのだろう。


「それとも家族がどこに行ったのかを知りたいかい?」


……この人が俺の家族を殺したのだろうか。

この人は何を知って、何を目的として俺に近づいてきたのだろう。俺は、この人から話を聞かなければならない。何故か自身の直感がそう告げる。


「どうだい?話を聞くかい」


俺は、その問いに答えた。






「まず何から話そうか?君は何が聞きたい?

うんうん。僕は誰なのか?

僕の正体は1番最後に話そうと思ってるからね、今は、明かせないな。

そうだな……まずは、今日の朝のニュースは見たかい?

今日の朝のニュースでは、初雪が降ったことや、一昨日のスーパームーンのことがまだ報道されていたり、北海道で熊が出没したことも報道していたね。

あぁ、双子のパンダが寒い中元気に動き回っている事も報道していたよ。忘れていた。

でもね、某報道番組ではこんな事件が、紹介されたんだ。

【一家惨殺事件!?犯人は、21歳の息子!?】

ていう事件がね。ん?それの何が関係しているのかって?関係はあるさ、君の家族は殺されたんだよ。誰にって?僕の話を聞いてたかな?話の流れからわかるじゃない。21歳の息子さんにだよ、」



後悔をした。

どうして俺は聞いたのだろう。あぁ聞かなければ良かった。家族が死んでいることなんて。何時だ、いつ殺されたのだ?

そして何故、


俺は、生きている?


どういうことだ?一家で惨殺されたのでは、ないのか?

いや、両親が殺されただけで俺の姉は俺と同じように生きているのかも知れない。





「まあ、希望に縋るのは分からなくともないんだが、芸大に通っている藤宮家長女の藤宮絵梨(ふじみや えり)(23)は死んでいるよ。

ニュースによると長女さんの誕生日会をしていると、突然長男の息子さんが訳の分からない言葉を発しながら家族の心臓を、突き刺したらしいね。

あぁ怖い怖い、世の中には、頭のおかしい人間もいるんだね、改めて世界の広さを実感したよ。

南無南無。

では、次の話題に移ろう。

家族が死んでしまった可哀想な君にはなかなか残酷だが、この絵を評価して欲しいんだ。どうかな?この絵。かなりよくできていると思わないかな?

え、今そんなことを話している場合じゃないって?いやいや話が逸れてはいないよ。

大事な話の途中だよ。

まあ、この絵は今さっきも言ったけど【心臓】というタイトルだからね一介の芸術家である僕からするとリアリティを追求したいわけだ。

さてと、では僕がリアリティを追求するためにとる行動はなんだと思う?

君は今、思考が纏まっていないだろうから答えてあげるよ、答えは「心臓を見る」だ。簡単な答えだろう。リアリティを出すには実物を見て、描くのが1番だ。

で、僕は参考にさせて貰ったよ。ちょうどリビングに転がっている心臓をね。

綺麗にえぐり取られていたよ。

ニュースでは、心臓を滅多刺しにしたと報道していたのに、報道機関を迂闊に信用するものじゃないね」



は?

どういうことだ?

突然絵の評価をしてくれだなんて、この女性は頭がおかしいのか?意味がわからない、この女性の話をする意味も、どんな目的があって話すんだ?俺は、家族を殺した犯人を、、、


「いやぁ、話の展開が早かったかな?まぁこの絵は、心臓をモチーフに描かれた事は、覚えておいてよ。

では、次の話に移ろう…と、何かを思い出したかい?」


何かを思い出す?

何かを思い出した?

俺は何を思い出したんだ?何を考えていたんだ?何か忘れていることがあるのか?


「案外早く思い出したね、いやーまだ結構かかると思っていたから、結構な量の話題を持ってきていたのだが、その必要は亡くなったようだ」


俺は何を?


「それは質問かい?それとも、自問自答しているのかい?」


俺は誰だ?


「おっと完全に独り言のようだ。僕が出る幕はもうなくなったみたいだね」


何かを思い出したのか?

なんだかとてもふわふわしている。

綿菓子に飛び込んだらこんな感じなのだろうか?掴むことの出来ない雲と戯れているのか?

何一つない空虚な空間から幻想を見出そうとしていたのか?酔っているみたいだ、お酒を飲んでみたらこんな感じだったような?

いや、まて、俺は高校生だったのではないか?

そういえば、両親はどんな人間だっただろう、全く思い出せない。

それでは姉はどんな人間だっただろうか?両親を思い出すことが出来ないのに姉の事は鮮明に思い出せる。


辛い時には話し相手になってくれた姉。

とても個性的で深く印象に残っている絵を描く姉。

いつも馬鹿騒ぎを一緒にしてくれた姉。

たまにカッコつけて僕口調になったりする姉。

少し天然でそういう所が可愛らしい姉。

23歳になっても厨二病を患っていた姉。

笑い時のえくぼがとても似合っている姉。

いつも楽しそうな人生を過ごしている姉。

何かと俺に構ってくれた姉。

あまり俺以外の男と遊ぶことがなかった姉。

だけど、最近になって彼氏が出来たと喜んでた姉。

そして、俺の目の前で血を吐き出しながら死んでいった姉。


ん?

どうして、俺は、そんな記憶を、持っているのだろう?そんな記憶は、姉を殺した犯人でなきゃ持ちえないのに。犯人は、21歳の息子だろう…俺じゃないはずだ。


「本当にそうかな?」


どこからか、姉の声だけが聞こえる。今さっきまでは、俺の目の前にいたのに。今さっきまでは、目の前にいたのに、どこにいったんだ?


「君は自分が誰だか分かるかい?」


何を言っているんだ、分かるさ、俺の名前は藤宮翔太(ふじみやしょうた)、18歳の受験間際の男子高校生。


「私との年齢差は2歳差じゃなかったかな?」


2歳差?いや、そんなはずは無い……


「2歳差だよ、私との年齢差は」


俺の記憶がおかしいのか!


「おかしいとも、そして叫ぶのをやめてくれ」


じゃあ俺の持っている記憶はなんなんだ?


「よーく過去をふりかえり思い出して欲しいな」


いや、違う、そんなはずは無い、俺は絵里(えり)を殺していない。


「ほんとにそうかな?君の歪んだ愛情で私を殺したんじゃないかな?」


歪んだ愛情、、、なんでそれを知っているんだ。


「君が私を殺すときに呟いていたじゃないか、絵里(えり)は俺のもの、絵里(えり)は俺のものだって」


じゃあ殺したはずじゃないか?


「よーく、今の自分を観察してみなよ、誰と話しているんだ?」


それは絵里(えり)と、


「私はもう死んでいるし、それに


()()()()()()()で誰と話せるんだい?」


辺りを見渡してみる。

そこは赤い絵画もなく、姉がいた痕跡もなく、真っ白いベッドと、無機質なテーブルだけが置かれていた。


「おっと、何一つないは言い過ぎかな?ベッドとテーブルはあった」


じゃあ俺は誰と話しているんだ、


「話す?何を言っているんだ、その言葉は口に出していないだろう」


、、、


「君の脳みその中に私はいるんだよ」


途中から作者も理解が追いつかなくなりました

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