麻
広大なアジャカナ大陸には、たくさんの国々があった。
その中の一つに、”楊帝国“という大国があった。
その国は、”根帝国“、“オスラマ帝国”と並び、三代強国と呼ばれていた。
楊帝国の首都“安中”の人口は約300万人、面積は13万㎢、そして広江、赤砂江、安河の主要運河が流れている。
住民のほとんどは商人や平民で構成され、中心部には貴族が多くなっている。
首都安中から遠く離れた東端の地に、“巣”という地域があった。
その地域はあまり発展しておらず、山も多くなっている。また港はあるもののあまり船は来航しない。毎年冬には大寒波が来て、夏には強い日差によって灼熱の大地となる。
誰もこの過酷な地域には住もうとはしないので、奴隷や貧乏人、住処を奪われた異民族、差別を受けた人たちが集まってきている。
そんな巣にある山越村に、一人の少年がいた。その名は「麻」親も生まれもわからないため、苗字がない。
口は大きく、体は細い。
金がないため服は下半身を隠すものしか無い。
そして少年には尻尾があった。その尻尾は濃い茶色で、鰭のような形をしていて、イモリの尻尾に似ている。
また少年は、昔事故で指が取れたことがあった。しかしそれから2週間も経つと、その指はまた生えてきて、そっくり元に戻ったそうだ。
ある日、麻が水を汲みに桶を担いで趙河まで歩いていると、一人の青年に声をかけられた。
その青年は少し痩せていて、声は低くて肌は白っぽく、目の色は茶色で、髭は長く肩まで到達していた。
そして黒い漢服を着ていた。
「なんでしょうか」と、麻が聞くと、青年は、「私の名はツルズ・デレーベ。私も水を趙河まで汲みに行くところです。いい近道を知っているので教えますよ」と、優しい声で言った。
「俺の名前は麻。この道よりも早く着ける道があるんですか?」
「草が茂っていて少々歩きにくいですが。」
麻はツルズについて行くことにした。