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私。  作者: 桐生夏樹
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助けて神様

 辛い。


 悲しい。


 寂しい。


 私は何故、この世に生まれたのか。


 なんのために。


 なぜ神は、こんな出来損ないの私を産んだのか。


 何か理由があるのか。


 全く理解が出来ない。


 私は何も持たない。


 無力だ。


 本当に無力だ。


 前が見えない。


 後ろも見えない。


 右も左も見えない。


 真っ暗だ。


 真っ暗闇の中を、私は彷徨(さまよ)い続ける。


 ふらふらと何の目的も無く世の中をただ浮遊している、ただそれだけの存在だ。


 仮に私が今、この世から居なくなったとしても、世の中には何の影響も無い。


 私が居なくなったことなんて誰も気づかない。


 ただそれだけの存在だ。


 私なんて、この世に生まれてこなければ良かったのに。


 両親が結ばれて、母親の胎内で、父親から放たれた3億の勇者の中から私が、ただ1人、王女と結ばれたのだ。


 何故、私が結ばれたのだ。


 そして何故、私が生まれたのか。


 3億人の中から、ただ1人。

 普通に考えたら絶望的に低い確率なのに、何故、私なんかが選ばれたのか。

 本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。


 本当に不思議でしか無い。


 心から他の勇者達に譲りたかったと、つくづく思う。


 こんな私が生まれたと知ったら、散っていった勇者達も浮かばれないことだろう。


 こんな、何の取柄もない役に立たない人間。


 もっと他に優秀な勇者がいただろうに。


 もし、転生輪廻があるとしたら、次は、迷うことなく王女を違う勇者に譲ろうと思う。


 戦うことも無く。


 そっと消えようと思う。


 だから、許して。


 私が、この世界に生まれたことを。


 許してください。


 だから、神様。

 今すぐに、私がこの世から居なくなることを許してください。


 今すぐに、私がこの世から消えることを許してください。


 今すぐに、私が……


 でも。

 でも、こうも思うのだ。


 自らの意志ではなく、神から呼ばれて、この世から去った人たちが、たくさん居る。


 その人たちは、自ら命を絶とうとする私のことを許してくれるだろうか。


 不本意に、この世を去ってしまった人々に、私の寿命をわけることができたら良いのに。


 そう考えたら、志半ばにして死んでいった人たちのことを考えたら、自らこの手で自分を殺めることなんて出来る訳がない。


 出来損ないの私のことを神が呼ばない限り、私はこの世から消えることが出来ないのだ。


 お願いです。神様。

 助けてください。


 私に希望をください。


 生きる希望を。


 生きる目的を。


 そして生きる勇気を。


 そうしたら少しは、勇者達も救われるかも知れません。


 ――以前、私の父が言っていた。


 人間は生まれた、この世に生を受けた時点で、

 3億の勇者から勝ち残った「エリート」なのだと。


 だから、敗れ去った3億もの勇者のために、お前は生きなければならないと。

 生きるべきなのだと。


 これが父の言う生きる意味。


 神様、これが私の生きる目的なのですか。

 3億もの勇者のために生きることが、私の目的になると言うことですか。


 私が生きることが、私なんかのために散っていった勇者達へのとむらいになるのでしょうか。


 希望になるのでしょうか。


 そう考えることが出来たなら、ほんの少し生きる希望が私にも湧いてくるかもしれません。


 そうだ。

 私は、彼らのために生きていく。

 彼らのために生きていこう。


 神様、ありがとう。


 もう少し生きてみよう。


 彼らのために。

 3億の勇者のために。

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