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ぬくもり(1)

 その時、私は確かに世界の中心に居た――。

 人々の戦いの中で、ついに決断を求められるその時……。人類は何の為に戦い、何の為に生きたのか。いや……。世界全体の事はどうでもよかった。だが結果として私のした事は、この世界を救うという事に他ならなかったのだ。

 私が望んだわけではない、ただ結果がそうしてきただけの事……。そう、世界からすれば、私は紛れも無い英雄そのものだった。オペレーションカラーズ、つまりセブンスクラウンという人類の総意を語る異形の傀儡……。私は何かをしたわけではない。世界を救ったのは、あの子の方なのに。

 激動の時代の中、私は殆ど流されるがまま、彼女の居ない世界を歩いてきた。結果、私は気づけば英雄に祭り上げられていただけの話なのだ。そうなりたかったわけではない……。私はザ・スラッシュエッジを継ぐ人間として、余りにも不適格なのだから。

 彼女と刃を交えたあの日、私は確かに全てを吐き出し、そして一度は全てを失ったのだ。再び戦士として立ち上がるには、沢山の助けが必要だった。だがこうして振り返ってみると、やはりそこにあったのは彼女への想いなのだろう。

 マキナ・ザ・スラッシュエッジと呼ばれた反逆のカラーズは、地球へと姿を消した……。そして始まったオペレーションカラーズと、人類に襲い掛かるエトランゼの試練……。真実を知った私たちには、知ったからこそやらねばならぬ事があったのだ。

 彼女の存在が偽りなどではなく現実であり……そして誰もが忘れてしまうような幻のような存在だったとしても。私の心の奥底には彼女との想い出が今でも色褪せる事無く残っている。月並みな言い方をすれば、彼女は私の心の中で生き続けているのだ。

 マキナとの日々……全てが私にとってかけがえのないものだった。この身が英雄と呼ばれ、人々に恐れられるようになって尚、私は彼女の事を想う。直ぐ傍に彼女の心を感じる……。闇に閉ざされた世界の中、また彼女を想う。その祈りがいつか彼女に届く事を信じて……。

 全ては五年前――。まだ、私が人間として生きていられた頃の話。その全てを、世界に知られる事のない真実を、ここに認めておく……。

 これは、ただの自己啓発なのだ。私への戒め……。これを誰かに見せる事はまずないだろう。だから心してほしい、私よ。お前の命は――お前のものではないのだと言う事を――。




「…………ッ!?」


「目が覚めたみたいだな」


「…………!? え……!? ヴィ……レッタ……?」


 目を覚ました――。その感覚にアテナは違和感を覚えた。脳裏を過ぎる景色――。あの蒼のジークフリートの全力全開の必殺剣を受けたのだ。覚えている。忘れるはずがない。間違いなくあれは必殺――。大いなる結界ゼロカナルを破壊した程なのだ。間違いなく、この世界で最高の破壊の一撃だった。ブリュンヒルデはそれを正面から受け止めた――はずだった。

 死んでいて当然であり、生きているという事は異常でしかない。ただ、違和感だけが残るのも当然の事だ。アテナは肩で息をし、ちらりとベッドの傍に立っている女へと視線を向けた。彼女の顔は知っている。馴染みの顔だ。だが確か――そう、行方不明になっていたはずの顔である。

 ヴィレッタ・ヘンドリクス……その顔が目の前にあった。額に痛々しい大きな傷跡を残しているが、五体満足、間違いなく生きている。何故、死に掛けた自分が行方不明のヴィレッタに助けられたのか……。そう、助けられたのだ。この状況から推測するにそうに違いない。独力で生き残れるほどあの状況は容易くなかった。では――。


「マキナは……? マキナは、どうなったの……!?」


「落ち着け、アテナ……」


「これが落ち着いてられる!? マキナが……マキナが行っちゃうのよ!? 追いかけなきゃ……!!」


「待て!! お前の傷は確かにもう癒えているが、それでも瀕死の重傷だったんだ! お前の特殊な治癒能力が無かったらとっくにお陀仏だ! それにもう何日も寝たきりだったんだ、少し落ち着け!」


 肩をヴィレッタに掴まれ、アテナはそれを振りほどけない事で自分が弱っている事を悟った。無言で肩を落とし、俯くアテナ。酷い戦いだった。避ける事は出来なかったと思う。だが、それでも惨い戦いだった。まるで全てを失ってしまったかのような虚脱感が彼女の心を支配していた。大人しくベッドの上に座り込み、黙るアテナ。それを見下ろしヴィレッタは小さく息をついた。


「……部屋にあるものは自由に使ってくれて構わない。少し頭を冷やすんだな。話はそれからだ」


 アテナの肩を叩き、部屋を出て行くヴィレッタ。彼女の姿が見えなくなって暫くしてから漸くアテナは顔を上げた。自分はまだ生きている……。生き延びてしまった。あのまま、あそこで消え去る事が出来たらどれだけよかったか。だが、生きている。生きている以上……死んではいないのならば。

 ゆっくりと立ち上がった。全身は虚脱感に包まれていたが身動きが取れないほどではない。深く深呼吸を繰り返す。部屋は窓も無い、露出した金属質の壁に囲まれただけの狭い部屋だった。必要最低限の物しか置いていない。部屋の中に居たところで状況は変わらない。自分の身体を見下ろすと、全身いたるところに血に染まった包帯が巻かれていた。だが、既に傷がふさがっている事は本人が一番理解している。

 包帯を解きながら部屋を出る。そこに広がる広大な景色にアテナは目を疑った。眼前に広がるのはアルティールの町並みにも負けないような巨大なビルの乱立する都市の姿……。各地を武装したFAが移動し、様々な種族、年代の人々が街を行きかっている。アテナが寝ていたのはどうやらアパートのような建造物の一室だったらしい。振り返ると巨大なビルの姿を仰ぎ見る事が出来た。

 その都市は何もかもが異常だった。まず兎に角広すぎる事、そしてあらゆる建造物がまるで無尽蔵に増築を繰り返したかの如く、協調性もなくごちゃごちゃとあちこちにくっついているのだ。一体どこが道でどこが住居なのかもわからない。空を見上げるとカナルの光がオーロラを作り出している。天蓋はフォゾンフィールドで構築されているようだが……。


「なんなの、この街……。こんな街、あるはずが……」


「おぉ、目覚めたと聞いていたがどうやら元気そうだな、アテナ」


 横から声をかけられ、肩を叩かれる。見上げるそこには見覚えのある顔があった。


「……ザ、ザックス!? 貴方、どうして……!?」


 煙草を口に咥えたザックスはニヤリと笑みを作る。その背後にはアテナの着替えを持ったリンレイの姿もある。ザックスは戸惑うアテナを強引に部屋に押し戻し、扉を閉めてずかずかとベッドの上に座り込んだ。


「ザックス! どうなってるの!? ここはどこ!?」


「まあそう逸るな。色々と説明しなければならん事が堪っているからな……。私の口から説明するより、実際にあちこち見て周った方が早いだろう。リンレイ君」


「はい。アテナさん、これを」


 渡された服は普段アテナが着用しているカラーオブレッドの制服に似ていた。しかしところどころデザインが異なる。制服には既にエンブレムが刻まれており、それを見て余計にアテナはわけがわからなくなる。

 刻まれた紋章は蒼と剣――。つまりそれは、蒼穹旅団のエンブレムである。何故蒼穹旅団のエンブレムがここにあるのか……そもそも何故それを自分が着なければならないのか。わけがわからないアテナの前でリンレイは口元に手を当てて微笑みを作る。


「外で待っていますかね。艦長、行きますよ。女性が着替えるのに何を堂々と居座っているんですか」


「ん? ああ……。そうか、そうだったな。ではな、アテナ君」


 二人がニコニコしながら出て行くのを見送り、アテナは新品の制服を胸に抱きしめた。新しい制服……これに袖を通す事の意味を考える。一体今この世界に何が起きているのか……自分の身に何が起きているのか。考えている時間はなかった。もう大分頭も冴えている。ここで立ち止まっている時間はないのだ。こんなボロボロの服で居るわけにも行かない。自分はカラーオブレッド――。その威厳を維持する為に。

 新たな制服に袖を通し、長い髪を結んで部屋を出る。部屋の外で待っていたザックスとリンレイに連れられ、長い長い道のりを三人は歩き始めた。


「この街はお前も一度は見たことがあるはずだ」


「……ないわよ。こんなわけのわからないシティ、一体どこに隠れてたっていうの」


「はっはっは! 最新式のフォゾン迷彩を使っているからな。更に絶対的なフィールド発生装置を備えているから、エトランゼの襲撃も乗り切れた」


「…………」


 アテナの脳裏にまさかの一言が過ぎる。そう、予想はついている。そんな事が出来るシティ。こんな規模になる事が出来るシティ……。過去に一つだけ相手をした事がある。その時はトドメまでは刺さなかった。確かに、見逃している。それが――まさか。


「このシティの名は“樂羅”――。元々はアナザーの楽園と呼ばれた場所だ」


「やっぱり……。でも、この街……」


「ああ。今ではノーマルも受け入れている。現在はアナザーだのノーマルだの言っていられる状況ではないからな」


 街を行き交う人々と視線を交わしながらアテナは考えていた。ノーマルとアナザー……そして知ってしまったオペレーションカラーズの真実。それらの全てが今脳裏でごちゃごちゃと入り混じっている。複雑な心境だった。オペレーションカラーズという人類の一大事に、こうしてなんとか手を取り合う事は出来るのに。何故今までそう出来なかったのだろう。

 セブンスクラウンという偶像の神は今も地球を奪い返そうと戦力を整えているだろう。オペレーションカラーズに同意する勢力は殆ど宇宙に上がり、月で号令の時を待っている。反勢力はこうして結果的に一つにまとまり……また、戦争の対立の構図が生まれるのだ。

 マキナは何を望んでいたのだろうか……。これが、人類の選んだ未来の形なのか。アテナの心はオペレーションカラーズに傾いている。他の人類の事など胴でもいい……そのつもりだった。だが、マキナはそうではなかった。

 彼女はあくまでも全てを救う道を模索し、その為にアテナとまで刃を交えたのだ。彼女の凄まじい力を以ってすれば、この世界を救うことは恐らく可能なのだろう。そんな希望を抱かせてしまうに十分なだけの力がマキナにはある……。だが……。

 一つに心が定まらないのは不安であり、苛立ちを募らせる。そんなアテナの心境を察してか、二人は必要以上に声をかける事はしなかった。

 やがて三人が辿り着いたのはいわゆる港と呼ばれる場所であった。無数の軍艦が並んでいる中、そのうちの一つ――シュトックハウゼンの中へと入っていく。艦橋へと真っ直ぐに向かい、そこでアテナは再び信じられない物を見た。

 そこにはアルティールの仲間たちがアテナを待っていた。アルティールの教師……生徒たち。生徒会のキリュウにアル。そして、一度は姿を消したヴィレッタ……。オルド、サイの姿もある。言葉を失うアテナの前に出たのはヴィレッタだった。そして優しく微笑みを作る。


「驚かせてしまったかな」


「…………これは……どういう……?」


「私たちは、セブンスクラウンの強引なやり方に反対している……。君も、セブンスクラウンの真実に気づいたんだろう?」


「…………」


「確かに彼らの言う事は正しい。正しいさ。でも……正しいからって人間を玩具のように、駒のように扱う彼らを私は信じられない。人間の未来は、人間の手で作りたい……そう願っている」


「…………ヴィレッタ」


「勿論、セブンスクラウンが正しいのかも知れない。何が正しいのかはわからないんだ。でも、これからずっと誰かに操られて生きていくのはもう耐えられない。それで悲劇を演じさせられるのも……もう沢山だ。私は闘う事に決めた。もう逃げないんだ。私はセブンスクラウンを討つ……。その為に皆の力を借りたい」


「私にセブンスクラウンを裏切れって言うの……?」


 アテナは首を横に振る。そんな事が出来るわけがない。マキナはもう、死んでしまうかもしれないのだ。マキナはもう、いなくなってしまう。マキナには耐えられないのだ。だから助けてあげたい……。


「結局、マキナに頼ってるだけじゃない……。貴方たちだって同じ事よ! 犠牲を厭わない……!!」


「私たちはセブンスクラウンとは違う」


「違わないわっ!! こんなに力を集めて! セブンスクラウンと戦争をしてっ!! それで結局人類の力はまたバラバラになる! それでまたマキナが頑張らなきゃいけなくなるっ!! もうそんなのは沢山!! あの子を開放してあげてよっ!!!!」


「――俺たちも、同じように考えてる」


 ヴィレッタの背後、腕を組んだオルドが頷く。その表情は神妙であり、この決断が容易な物ではなかったことを物語っている。


「もしマキナがあの力をセブンスクラウンの剣として使うなら……俺たちはそれと闘わなきゃならない。それはマキナが憎いからじゃない。あのへこたれが……。誰より甘ったるくて、いっつも一人で泣いてたへこたれが……。これ以上、操り人形みてえに何かと闘わされるのは耐えられないからだ」


「私たちは見極めなければならない。そして決断しなければならない……。人類の未来を決める時なんだ、アテナ。マキナ一人に背負わせない為に……セブンスクラウンが用意したシナリオとは異なるエンディングを迎えなければならないんだ」


「…………」


「…………勿論、無理は言わない。マキナは今、非常に不安定な存在だ。ジュデッカの端末として彼女は常にジュデッカに侵食されている状態にある。それにエーテルの影響を受けやすくなっている今、エーテル体であるセブンスクラウンに逆らえなくなる可能性だってある。そうなれば、マキナは私たちで倒さなければならない」


「そんな……」


「だが、そうなった時……。あの優しかった彼女が、望みもしないのに。誰かを殺して……。そうやって傷ついていくのを止められるのは。私たちしか……いないんだ」


 オペレーションカラーズが成功して……。マキナがジークフリートの光でゼロカナルを完全に砕き。ジュデッカを倒して……。それからどんな扱いを受けるだろうか。彼女は最強の剣だ。そしてそれ以上の役割をセブンスクラウンは望まないだろう。マキナは文字通り道具のように扱われるのだ。だが、それでも……それでも生きてさえくれれば……そう考えていた。

 一人ではセブンスクラウンには敵わないと思っていた。マキナを攫ってどこかに逃げたかった。でもそうできなかったのは……しなかったのは。それは自分に自信がなかったから。マキナを守り抜く覚悟が足りなかったから。

 もっともっと力があれば、マキナをもっと護れたのに……。彼女はそんな甘いアテナの意思を見透かしていたのだ。だから彼女は一刀両断した。あの光の刃はアテナの心の迷いを振り切ってくれた。光を与えてくれる……。暖かくて優しい、痛みの炎……。

 何を信じ、何を求めるべきなのか……。決断する時はもうすぐ目の前まで迫っている。アテナは震える拳を握り締め、きつく目を閉じた。どうすればいいのか……わからない。胸が苦しく、逃げ出したくなる。


「セブンスクラウンは、オペレーションカラーズのために月に戦力を集結させている。こちらもそれに対応する為に戦力を集めている途中だ。だが相手にはまだカラーズが残っている。戦力差も、武装の性能も圧倒的にあちらが上だ。今は一人でも多く強い戦士がほしい」


「…………ヴィレッタ」


「……少し、足早に話をしすぎたな。直ぐに答えを出さなくてもいい。少し休んで、ゆっくり考えてくれ。また会えてよかった。アテナ……生きていてくれて、良かった」


 力強く頷くヴィレッタを前にアテナはただ黙り込む事しか出来なかった。そしてふと、思い出す。顔を挙げ、ヴィレッタに飛びついた。


「マキナは……? マキナはどうなったの!?」


「……そのことなんだが……」


「……ジークフリートはゼロカナルを突き破り、地球へと墜落しました。その後大規模なエーテル爆発の反応を捉えています」


 リンレイがヴィレッタの言葉を代弁する。重苦しい沈黙が場を支配していた。ジークフリートは蒼海に消えた……。そして、爆発した。淡々と事実だけを飲み込む。しかし、納得出来るはずがなかった。

 マキナは全身全霊で自分を破ったのだ。勝者は彼女の方で、敗者は自分の方だ。だったら死ぬのは自分の方じゃないか。どうしてマキナが……マキナが死ななければならないのか。


「嘘よ……そんなの嘘……」


「アテナ……」


「どうしてマキナが……。マキナは……だってマキナは私に勝ったのよ……? 最強のカラーズなのよ……? なんであの子が……。あの子が死ぬわけが……」


 ヴィレッタを見つめる。ヴィレッタは沈痛な面持ちでアテナを見つめ返していた。黙り込むアテナに歩み寄り、その身体を抱き寄せる。それを振り払う事が出来ず、アテナは力なく項垂れた。


「あの子が破壊したのは、ブリュンヒルデだけだったんだ……」


 マキナが放ったジークフリートの一撃は、機体だけを破壊した。アテナには、傷一つつける事もなかった。エーテルは本来害意を持つ存在ではない。マキナが放ったのは純粋な剣の光――。斬りたい物を斬り。護りたい者を護る剣……。光はアテナを追い詰めるブリュンヒルデという力だけを破壊した。アテナはその後、ゼロカナルの炎に焼かれる事となった。重傷……だが、その程度ではアテナは死なない。きっとマキナは判っていたのだ。直ぐ傍に、シュトックハウゼンが近づいていた事も――。


「君は、生かされた……。マキナの剣によって……。だから、その命の使い方は君が考えなければならない。彼女の救われた命なのだから……」


「マキナ……。マキナを助けに行かなきゃ……」


「アテナ……」


「だってあの子、泳げないのよ!? 海に溺れちゃってたらどうするのよっ!! あの子は……本当はとっても弱弱しくて……っ!! 誰かが、傍に居てあげなきゃ……っ」


「アテナ……!」


「ブリュンヒルデはどこ……!? どこにあるの!?」


「ブリュンヒルデは大破した……! もう動かないんだっ!!」


「嘘……嘘よっ!! 皆して私を騙そうとしてるんでしょ!? そうだって言ってよ! ヴィレッタッ!!」


 誰も何も言えなかった。言葉を失った空間の中、アテナが泣き崩れる。その嗚咽とすすり泣く声だけが小さく響いていた。虚ろな目で何かを呟き続けるアテナ。その肩を抱き、ヴィレッタは立ち上がる。


「すまない、少しここを空けるぞ。サイ、後は頼む」


「りょーかいっす」


「先輩、手ぇ貸しましょうか?」


「いや……。私に任せてくれ……。これは……私の責任でもあるんだ……」


 オルドの申し入れを断り、ヴィレッタはアテナを支えながらその場を後にする。二人の姿が見えなくなり、アルが溜息混じりに呟いた。


「……やるせないですね――。こういうの……何回見ても――」




ぬくもり(1)




「――なあ、覚えているか? 昔もこうして、何度か君を部屋まで送ったな……」


 まだ、アテナがブリュンヒルデに乗る前の事だ。戦場に出て負傷したアテナをヴィレッタはよく面倒見ていた。

 アテナは常に戦果に焦っていた。蒼穹旅団という偉大すぎるギルドに所属していたのも理由の一つだったのだろう。ブリュンヒルデを扱うヴィレッタを、アテナはよく憧れの眼差しで見上げていた。

 きらきらと目を輝かせ、情熱に満ちていた。夢と希望に溢れていた……。あの頃は全てがあった。そのアテナをゆがめてしまったのは自分なのだと、ヴィレッタは自負している。あの日、自分がアテナと向き合わなかったから……。

 もしも真実を告げていたのならば、アテナは手を取り合ってこの脅威に立ち向かってくれただろうか。いや、きっとあの頃の彼女なら……そうしてくれただろう。巻き込む事が怖かったのに、今はこうしてボロボロのアテナを巻き込まなければ勝てない戦いに挑もうとしている。リーダーとしての判断を下すのならば、アテナにはなんとしても闘わせたい。だが……。


「君はいつも真っ直ぐだった……。真っ直ぐすぎて周囲と衝突する事も多かったな。でも、真っ直ぐだった。ひたすら自分を曲げる事はしなかった。君は強くなった……。君は私が知る限り、最強のカラーズだよ……」


 アテナは何も答えなかった。俯いたままの表情は前髪に隠れて伺う事は出来ない。ヴィレッタは苦笑を浮かべ、空を見上げる。


「…………すまなかったな」


「…………」


「…………自分なりに頑張ってきたつもりだった。セブンスクラウンの真実を知り、戦力を集め……。自分なりに色々やったつもりだった。でもマキナを助けられなかった。大事な後輩一人救えないで、意味なんてあるものか……」


「…………」


「……マキナが死んだとまだ決まったわけじゃない……なんて言ってもただの気休めだっていうのは判ってる。でも……信じたいんだ。あの子はきっと奇跡だって味方につける。かわいらしいじゃないか。信じたいよ。だから、信じる事に決めたんだ……」


 アテナはやはり何も答えない。だが、言葉はきっと届いている。想う気持ちは言葉を超えて、きっと届いているのだ。例えば触れ合ったこの肩の温もりや、重ねたこの歩みの数だけ。想いはきっと誰にでも届く……信じる事を止めなければ。

 二人は街を歩いていく。この戦いに何か意味があったとしたら……。もしかしたらそう、振り返る日が来るかもしれない。その日、笑っていられるように。後悔しないように。今は届く事を信じて……。ただ、歩みを重ねるだけなのだ――――。


~ねっけつ! アルティール劇場Z~


*マキナが見てるだけ*


マキナ「じ~」


マキナ「じ~~」


マキナ「じ~~~~」


マキナ「じぃ~~~~~~」


マキナ「じろじろ~~」


マキナ「じろじろじろじろじろ~~~~」


アテナ「ごふっ(吐血)」


ノエル「わあ!? お姉様!? どうしちゃったんですか!?」


アテナ「マキナが可愛すぎて死ねるわ……」


ノエル「……」


アテナ「マキナを見てるだけでご飯三倍は軽いわね」


ノエル「そうですか……」


マキナ「久しぶりの更新なんだよ~! はむはむっ!!」


アテナ「ごふっ(吐血)」


ノエル「お姉様ぁあああああっ!!!!」


アテナ「我が人生に一片の悔い無し……」


ノエル「そんな人生でいいの!?」


マキナ「はむはむ! はむはむ!」


ノエル「くうっ!? か、かわいい……! なでなで……なでなで……」


アテナ「あーずるい!! 私もマキナなでなでしたいーっ!!」


ノエル「ちょ、あたしが先でしたから!!」


アテナ「マキナー! おいでおいでーっ!!」


マキナ「はむはむ!!」


ヴィレッタ「……なんだこれ」


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