Deus ex machina(3)
「――今更だが、もう少し時間を置くべきではないか?」
アルティールに存在するFA競技用アリーナの中、一人の観客も居ないその舞台にジークフリートは膝を着いていた。その正面には一般仕様のヴォータンがロングソードを携えて立っている。
ジークフリートのコックピットの中、マキナは肩で息をしながらヴォータンを見上げていた。そのなんのカスタマイズも施されていない、ごく一般のスペックのヴォータン相手に何度か刃を交えたのだが――一度としてマキナが優位な状態に立つ事は出来なかった。
ヴォータンの中、アンセムは眼鏡を外して蒼く輝く瞳でマキナを見下ろしている。最新鋭の治療技術によりマキナの傷口はふさがったものの、まだ体力が万全に戻ったわけではない。退院は確かに出来たが、調子の出ないマキナを一方的に痛めつけるのはアンセムとしてもかなり抵抗があった。しかしすべてはマキナの願いなのである。
「いえ、もう一度お願いします……!」
「……判った。いつでもかかって来い」
ヴォータンが剣を両手で上段に構える。式典用装備のまま配置されていたヴォータンはフェイスのエンブレムを刻んだマントを風に棚引かせていた。ジークフリートが立ち上がり、フレアパーツから剣を一振り抜き装備する。対峙する二人の蒼の継承者――。緊迫した空気の中、マキナは乱れる呼吸を落ち着かせ、瞳を開いて一歩を踏み出した。
一瞬で加速し、切りかかるジークフリート。その刃の一閃をヴォータンは剣にて受け止める。性能は圧倒的にジークフリートが上である。しかしアンセムはまるで攻撃を先読みするかのように美しく無駄のない動きで淡々とマキナの攻撃を受け流してしまう。凄まじい剣の乱舞をアンセムは殆ど目で見ないで受け続けていた。
剣と剣が何度も激突し、甲高い金属音が空に響き渡る。剣が擦れあう度に火花が散り、フォゾンの光が炸裂する……。マキナは必死で踏み込み攻撃を続けるのだが、その攻撃は正面から受け止められず見事に刃で受け流されてしまう。その隙を見てヴォータンはジークフリートの後頭部に手を伸ばし、身体を反転させると同時に突き飛ばす。自分の素早さに勢いをつけられそれを制御出来ず、ジークフリートはあっけなく転倒してしまう。
「あぐっ!?」
「…………これで私の六連勝だ」
「くう……っ! 先生、本当にそれただのヴォータンなんですよね……?」
「そうだ。アリーナに保管されていた骨董品だが?」
マキナは冷や汗を流しながら苦笑を浮かべていた。まるで勝てる気がしない――。今まで戦ってきたどんなFAよりも強力な化け物と戦っているようだった。あのレーヴァテインでさえ押し切れると確信したというのに、この男にはまるで刃が届く気がしない。
機体の性能差は天と地ほどあるのだから、それでも勝てないのならば腕前にもやはり天と地以上の差があるのだろう。それもそのはず、アンセムは十四歳の時からその人生の殆どを戦闘に費やしてきた、プロ中のプロである。基本的な性能ではジークフリートにもネクストにも劣るのは間違いない。だが彼には長い長い年月を戦闘だけで過ごしてきた圧倒的な経験と強い意志がある。それがマキナとは決定的に異なる点であった。
「それにしても、久しぶりにFAに乗ったな……。だいぶ腕がなまっているようだ」
「そ、それでなまってるんですか!? うぐぅ……つ、強いぃい……っ」
「当然だ。お前は確かに基本的な能力では私よりもずっと上だし、才能も神がかったものがある。だが、お前は圧倒的に実戦経験が少ない。トントン拍子で蒼の座に着いてしまったから判らんだろう? 戦場では格下とだけ戦うわけではない。力が上の相手と戦う術ならいくらでもあるのさ」
「むぐぐ……! もう一回! もっかいやります!!」
「駄目だ。ジークフリートは連続使用で体力を一気に消耗する。今日はそれくらいにしておけ」
「うぐぅ……っ!」
「そう不機嫌そうな顔をするなよ。これからアポロのサルベージもあるんだ、余力は残しておけ」
マントを翻し背を向けるヴォータン。マキナは悔しそうにほっぺたを膨らませながらそれを見つめ、倒れたままのジークフリートの体勢を立て直した。
マキナが入院生活を送ったのは二週間程度の事であった。その二週間の間に最新のナノマシン治療を受け、マキナは何とか無事退院することが出来た。しかし体力の衰えはまだ戻らず、二週間という時間は今のマキナにとっては余りにも長すぎた。マキナが今よりもジークフリートを扱う為に選んだ手段は、かつてジークフリートのライダーだったアンセムに師事を乞う事であった。
最初は渋っていたアンセムであったが、マキナが熱心に説得し、やがてヤケになって噛み付くと仕方がなくOKを出した。そうしてつい先ほど実際に手合わせをしてみたのだが――。
「……そういじけるなよ。最初に言っただろう? 勝負にはならんと」
「むー……。だって、ずるいですよ。そんなに強いのにどうして今まで黙ってたんですか?」
「黙ってたわけじゃない。たまたまライダーとして戦う機会が無かっただけだ」
「むー……。先生、本気で強すぎですよ。改造されてるからですか?」
「それもあるな。まあ、年の功ということだ」
格納庫を出て二人は通路を歩いていた。ライダースーツに着替えているのはマキナだけであり、アンセムはいつものスーツ姿である。しかも汗をかいている様子さえ見られない。全くの余裕で相手をされていた事を痛感し、マキナは余計に悔しくなった。
ジークフリートで戦うにはただ強さだけが必要なわけではない。ジークフリートに乗れば乗るほど身体は軋み、精神も侵食されていく。ジークフリートはライダーを殺すFAなのだ。マキナはそんな凶悪な相棒とうまくやっていかねばならない。手懐け方を知りたいのであれば、先駆者に訊くのが手っ取り早いのだ。
黙々と歩くアンセムの広い背中を見つめ、マキナは何とも言えない心境の中をさまよっていた。手も足も出なかったのが悔しい……というのもあるのだが、なんだか嬉しいような、辛いような、何とも言えない気分に陥っていたのだ。思い切りぶつかっても、アンセムはきちんと応えてくれる。そっけない態度であっさりと全てを受け流してしまうアンセムに憧れるし、そうして自分の我侭に付き合ってくれる優しさが嬉しくもあった。
アンセムはただ黙々と歩いているだけで、マキナから声をかけなければ全く口を開く気配もない。しかし、こうして背後から声をかければアンセムはきちんと振り返ってくれる。それが何となく、幸せな気分だったのだ。
「先生先生、ぼくって先生から見てどれくらい強いですか?」
「ん? ああ、無双」
「……一言で物凄い表現しましたね」
「ジークフリートの能力の一つに、“未来を読む力”という物がある」
「……フラッシュビジョン?」
「戦闘中、敵の動きや戦場の流れが直感的に脳裏に見える事があるだろう?」
その兆候はマキナがジークフリートに乗る以前から現れていた。未来を予測し、敵の動きや攻撃を見切る能力――。厳密にはライダーに依存する力であり、ジークフリートはそれを補佐しているに過ぎないのだが、マキナは以前からそうして相手の動きを先読みしてきたのである。それゆえに無傷で弾幕の中を潜り抜け、白兵戦闘でも無類の戦闘力を発揮する。
敵の攻撃は当たらないのにこちらの攻撃は確実に当たるのだ。それは機体性能差がどうとか、戦況がどうとか全く関係のない事である。戦えば勝つ――そういう意味では無敵の力とも言えるだろう。
「……んーと、後出しなら確実に勝てるジャンケンみたいなものですか?」
「そうだな。だが、確実にというのは間違いだ。お前は後出しなら確実に勝てるか?」
「え? うん、多分……」
「ジャンケンポン!!」
「ふえっ!? はう、あ、うあ……ポンッ!!」
アンセムが突然グーを出したのだが、マキナは慌てすぎて何故かチョキを出してしまった。そのあと慌てて変更したのだが、変更したのはグー……。何故かパーは出なかった。その事実にマキナはきょとんと目を丸くする。
「見えたところで反応出来るかどうかはまた別の問題だ。完全に見えていても咄嗟に反応出来ない事は多々あるし、動きがより複雑になればその難易度は増していく。例えば私に腕が六本あるとして、同時に別々の手を先ほどと同じように出したら――お前はその全てに確実に正解は出せないだろう?」
「は、はい……」
「戦闘中に起こることは全てが唐突だ。決してそれは理不尽ではない。当然の事だ。お前は直感的にビジョンを能力として使っているが――意識して使うにはまた少しコツがいる。そういうことだ。判ったな?」
「……うぅ〜」
ポンと頭を撫でられ、マキナは顔を赤くしてぷるぷる震えていた。アンセムはまた黙々と進んでいく。やはり、アンセムとマキナとでは蒼の力についての知識、経験が圧倒的に異なるようだ。だからこそ悔しいが実感する。アンセムに教えてもらえば、自分はまだ強くなれるのだと――。
「ところでマキナ」
「う?」
「更衣室、通り過ぎたぞ」
「あ」
既に更衣室を過ぎて暫く歩いていた為、マキナは蒼いライダースーツのまま生徒たちが行き交う廊下を歩いていたのである。余りにも場違いな格好に唐突に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら胸を腕で隠し、そそくさと引き返していくのであった。
Deus ex machina(3)
「それではこれよりアポロのサルベージを行う。準備はいいか?」
「は、はい……!」
ジークフリートのコックピットにマキナが座り、管制室からアンセムが指示を行う。とはいえやる事は殆ど何もない。ただマキナはコックピットの中でアポロの姿かたちをイメージするだけである。
マキナは目を閉じ、胸の前で手を組んだ。アポロの姿を思い出す。白くて、ふわふわしていて、もこもこで、ぷにぷにで、あったかくて柔らかい大切な友達――。思い描いた姿と共に想い出も蘇ってくる。沢山のアポロと過ごした記憶……。何度も心の中で祈った。アポロともう一度再会出来る事を……。
すると、コックピットの中に光の粒が浮かび始めた。エーテルの渦はやがてマキナの腕の中で結晶を生み出し、それがアポロの形を象っていく……。白くてやわらかい、宇宙うさぎの姿に収束し、マキナの腕の中でアポロの肉体は再び原型を取り戻したのであった。
「――アポロッ!! アポロ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」
「むギッ!?」
感極まってきつーくアポロを抱きしめほお擦りするマキナ。すりすり、すりすり……そうしている間にもアポロはマキナの腕に締め付けられ、白目を剥いて泡を吹いていた。
「アポロ、アポロ、アポロー! 会いたかったよう、会いたかったようーっ!!」
「…………む……き……ぅ……」
姿を取り戻したアポロを抱きしめ、マキナはジークフリートのコックピットから飛び出した。ジークフリートの足元にはアテナとノエル、そしてラグナの姿があった。三人は特に何か手伝いをしたわけではないが、サルベージが成功するのを見守っていたのである。
「お姉ちゃん! アポロが! アポロが生き返ったようっ!!」
「良かったわね……。でもそのうさぎさん、白目剥いてぷるぷるしてるわよ」
「アポロ!? 死なないでーっ!!」
「………………むきゅ」
アポロをがくがくと激しく揺さぶるマキナ。そんな様子を三人は微笑ましく眺めていた。
「でも、なんだかあっさり復活したわね。サルベージなんて言うから、結構大げさに感じてたんだけど」
「そういえば、コックピットに座ってただけですね……?」
「アポロはもう、ジークフリートのバージョンアップを終えていたんだよ。エーテル生命体に形を与えるのは意思の力なんだ。だからマキナの心があれば、いつでもアポロは復活出来るんだ」
「……ラグナ君よくそういうの知ってるね?」
マキナの驚きの表情にラグナは笑顔で応える。そうしている間に管制室に居たアンセムとジルが格納庫の方に歩いて来ていた。無事アポロがサルベージされた事を確認し、二人は安堵の表情を浮かべる。
「先生たちも本当にありがとうございました!!」
「……私も半信半疑だったんだが、アンセムの言うとおりにしたら普通に復活したな」
「私は特に何もしていない。ただマキナの気持ちがアポロと繋がっていただけだ」
一通り周りに頭を下げた後、マキナは改めてアポロを抱きしめた。すりすりと、何度もその感触を確かめるように頬擦りを繰り返す。柔らかく、暖かく、どんなに辛い夜も一緒なら眠る事が出来た……大切な大切な相棒。自分の半身のような存在。マキナは涙を流しながらアポロをずっと抱きしめていた。アポロはそんなマキナの頬を舐め、涙をそっと拭っている。
「もう、こんな簡単な事だったなら兄さんも最初からそういってください」
「いや、説明しようとしたらお前らが……」
「言い訳は聞きません!!」
「……悪かった」
「まあまあ、兎に角良かったじゃないですか!! それにしてもそのうさぎさん……美味しそうですね。じゅるり……」
「むきゅ!?」
「……ノエルちゃん? 食べちゃ駄目だよ……? 味しないし」
「味、しないんですか……?」
「うん……なんか、味のないマシュマロみたいな歯ごたえ……」
神妙な面持ちで語るマキナ。アポロはその間ずっと冷や汗を流しながら耳をぱたぱたさせていた。食べるなといわれると食べたくなるのが人間の性である。ノエルは暫くよだれを垂らしながらアポロをじっと見つめていた。
「何はともあれ、無事にアポロも元に戻ったし――」
マキナがうさぎの頭を撫でながらそう微笑んだ時であった。格納庫にあったありとあらゆるモニターに突然映像が映り込んだのである。その場に居た全員が空を仰ぎ――そしてそれは格納庫の中だけの話ではなかった。
アルティールのシティにある全ての街頭モニター、ネット接続されたディスプレイ……。アルティールだけではない。デネヴでも、ベガでも、コロニーでも、月でも……。全ての場所に同じ映像が流されていた。
映り込んでいるのは龍を模したエンブレムに七つの剣が突き刺さっている、見覚えのないデザインの紋章であった。誰もがその静止画に目を向け、そしてそこから流れる声に耳を傾けた。
『――この放送を聞いている全人類諸君に告げる。我々は“セブンスクラウン”――。この世界の調和を司る一団である』
映像を見上げ、アンセムは眼鏡越しに眉を潜めた。マキナとアテナは戸惑った表情を浮かべ、ノエルは口元にうっすらと笑みを浮かべる。移っている映像は相変わらず画像一枚だけであったが、しわがれた老人の声だけがいやにはっきりと街に響き渡っていた。
『本日この瞬間より、我々はかねてより計画していた“オペレーションカラーズ”を決行する事を決定した。したがって全人類にその協力を求め、この放送を行っている次第である』
画像が切り替わり、オペレーションカラーズの文字が浮かび上がる。続けて映し出されたのは地球とそれを取り囲むコロニー、月の縮図であった。
『皆、この終わりなき闘争と得体の知れぬ化け物の脅威に怯える日々に磨耗し、希望を見失いかけている事だろう。この世界は今過酷過ぎる状況の中に晒されている。それはこの世界で生きる全ての人間が実感している事だろう。我々セブンスクラウンはオペレーションカラーズを遂行し、この世界の混沌に終止符を打つ』
「……オペレーションカラーズ……」
生唾を飲み込み、マキナはアポロを抱きながら映像を眺め続ける。オペレーションカラーズ……。セブンスクラウンが提唱するその計画は、実に単純な物であった。
この世界がこのような地獄を生み出しているのも、憎しみの連鎖を止められないのも、化け物の脅威に晒されているのも、全ては“地球”を失った結果である。母なる大地さえ取り戻す事が出来れば多くの資源、人口、生活領域などの問題が一気に解決する。勿論それだけではどうにもならない問題も多いが、少なくともカナルの上での危険な生活は終わりを告げ、コロニーや月と地球との間にある格差は消滅するのだ。
『オペレーションカラーズとは、この母なる大地を汚染されし光から取り戻し、人類が星に還る為の壮大なる計画である。その遂行の為に我々は五十年間秘密裏に準備を進めてきた……。そして今日、その遂行の準備が整った事を皆に知らせたい』
星は現在、無数のカナルによって積層状の結界に覆われている状態にある。地球に最も近い最下層のカナル、“ゼロカナル”の上に無数のカナルが積み重なっているのだ。そしてゼロカナルの内側にはエーテルの光が満ちた大地があると考えられている。
このゼロカナルは通常のカナルとは全く異なる性質を持つ物で、それはエーテルではなく加工されたフォゾンの光に近いものがある。固形に限りなく近い状態に変化し、絶対的な硬度で星を多い、星の外側から来る全てから星を覆い尽くしているのである。
『長年、我々は星に還る手段を探し続けてきた。星に戻れぬ理由は何処にあるのか? それは星の中に存在するエーテルの光、そしてそれを覆っているゼロカナルである。このゼロカナルを粉砕し、地球を覆うエーテルの光を駆逐する事が出来れば、人は再び大いなる母の恩恵を受ける事が出来るであろう』
「星を取り戻す計画……それがオペレーションカラーズ……」
「ぼくたちが、生み出された理由……」
『ここで、皆に大切な事を話しておく必要がある。皆もこの星を襲っている脅威――“エトランゼ”については既に知っている事だろう。我々が星を取り戻す上で最大の障害となるのが、このエトランゼである。では、そもそもこのエトランゼとは何なのか……? 皆にその真実を告げる』
かつて、この星を襲った大きな事件があった。“オペレーションメテオストライク”――そう呼ばれた地球への隕石墜落とその迎撃作戦。そこで人類は隕石を砕く事には成功するが、それらの破片は地球へと落下。星の消滅は免れたものの、星に甚大な被害を齎した。
そして星に根付いた隕石はそこからエーテルを発生させ、この星を覆い尽くしたのである。やがて人は故郷を諦め、エーテルという道の力を前に成す術もなく宇宙へと撤退を余儀なくされた。そう、全ての悲劇の始まりはたった二つの隕石だったのである。そして全ての真実はそこにあった。
『地球へと飛来した二つの隕石、“ジュデッカ”と“レーヴァテイン”……。かつて星を救った偉大なる戦士マリアはこのうちの片方を完全に打ち滅ぼし、そして片方は彼女の手を離れ滅ぼす事は叶わなかった。地球に落下したのは主にジュデッカである。そして、エーテルを発生させているこのジュデッカこそ、全ての元凶……。そしてこの隕石こそ、“エトランゼの母”なのである!』
五十年前に戦った戦士たちが対峙したのは、巨大な隕石と共に飛来する無数の謎の生命体であった。彼らはその来訪者をエトランゼと名づけた。そう、エトランゼとは――。オペレーションメテオストライクとは――。“宇宙外生命体との戦争”だったのである。
そして人類はその力の前に敗北し、星を奪われた。エーテルの力を恐れ、人は宇宙に逃げ出した。飛来したエトランゼたちが守っていた母なる岩――それこそがジュデッカの正体である。そしてセブンスクラウンはこう定義している。“ジュデッカこそ全てのエーテル、そしてエトランゼの産みの親なのだ”と……。
『オペレーションカラーズとは、七色に輝く我らの大いなる星を取り戻し――そして、禍々しい我らが異邦神、“ジュデッカ”を駆逐する作戦なのである!! その為に我々は三段階の作戦を用意している。まずはゼロカナルを破壊し、星への道を切開く!! ついては全人類に我らへの協力を願う! この世界を変えたいと願う者たちよ!! 我らが旗の下に集いたまえ!! そして共にこの星に新たなる未来の希望を生み出そうではないかッ!!』
余りにも唐突な話であった。マキナは話についていけず、ただただ唖然とするだけだった。そんな一同を眺め、ノエルはにっこりと笑顔を浮かべる。
「そのオペレーションカラーズ遂行の核となるのが、あたしたちネクスト……カラーズなんですよ。責任重大! でもこんなに遣り甲斐のある仕事もありません」
ぴょんを跳ね、マキナとアテナを見つめるノエル。そして歳不相応に大人びた笑顔を浮かべ、細めた瞳に二人の戸惑いを映し込む。そして無邪気な笑顔で両手を広げ、告げた。
「――ようこそ、オペレーションカラーズが導く新時代へ! 歓迎しますよ、お姉様方――!」
「――ついに始まったみたいだね」
フォゾン迷彩にて姿を消している巨大戦艦の中、カリスは放送を見つめていた。その傍らには不機嫌そうなエミリアの姿もある。そして二人の背後、黒い制服に身を包んだ無数のフェイスに所属する傭兵たちの姿も……。
「オペレーションカラーズをなんとしても阻止する――。皆の力を借りるよ。この世界も大詰め……全ての勢力が動き出す――!」
同時期、シュトックハウゼンの中でも同じような混乱が広がっていた。沈黙した艦橋の中、ザックスが腕を組みながら映像を眺めていた。勿論彼もこんな話を今日するとは聞いていなかった。本来ならば極秘裏に行うべきオペレーションカラーズ、それがこうして堂々と公表されてしまったのだ。
「……これは大変な騒ぎになるぞ」
「え? それは、どういう意味でしょうか?」
振り返り、眉を潜めるリンレイ。リンレイからしてみればこの作戦の趣旨は理にかなっているように思えたし、それでこの世界が平和になるのであればやってみる価値はあると、そう考えていた。しかし事態はそう簡単ではないのだ。
「ゼロカナルがなくなれば、恐らく全てのカナルが消失する。そうなればプレートシティはどうなる?」
「え……?」
「アルティールをはじめとするリングタワーコロニーもそうだ。全てはエーテルの力に頼って何とかその形を維持している。カナルが消えれば地球は壊滅的な打撃を受けるだろう。オペレーションカラーズの恩恵を受けられるのは、結局は月やコロニーに住む上流階級だけなのさ」
「あ…………」
ようやくその事実に気づき、リンレイが口を紡ぐ。今ままでも確かに地球と宇宙とでは様々な格差があったが、それがギリギリのところで抑えられていたのはなんだかんだいいつつ、カナルのお陰で地球の生活は安定を見せ始めていたからなのだ。それが宇宙側の勝手な都合によって破壊されるとなれば――地球に住む誰もが黙ってはいないだろう。
「戦争が始まるぞ。化け物退治より余程気の重い、人殺しの戦場だ」
「……そんな……」
「この世界の正義は誰に味方をするのか……。これがお前の見せたかったこの世界の真実なのか……? マリアよ――」
星を見上げるザックス。その瞳に映るのは美しい星空の姿である。この宇宙の静寂も、美しい光も全ては憎しみに呑まれるだろう。残された時間は余りにも少ない。正真正銘、人類同士の最後の潰しあいが幕を開けようとしていた――。
〜ねっけつ! アルティール劇場Z〜
*小説家になろうがリニューアルするそうです*
ノエル「祝ーっ!! 小説家になろうリニューアル!!!!」
マキナ「なんか唐突だけどね〜」
ノエル「七月に終わってるはずだったんだから唐突じゃないですよ!!」
マキナ「まだそれ引きずってるんだ……」
ノエル「蒼海のアルティールは霹靂のレーヴァテイン、銀翼のキルシュヴァッサー、虚幻のディアノイア、対岸のベロニカに続く○○の〜シリーズの五作目なんですよっ!! ふおおおおおお!! 作者がんばったあああああ!!!!」
マキナ「うん、すんごい頑張ってるよね」
ノエル「手を骨折しても!」
マキナ「仕事が忙しくても!」
ノエル「ゲーセンに夜中まで通っても!」
マキナ「両手が腱鞘炎でも!」
二人「「 今日まで頑張ってこられたのは全て読者様のお陰ですっ!! 」」
ノエル「そんなわけで、今日は特別企画! シリーズの主人公全員で送る!! 主人公座談会〜〜!!」
マキナ「………………………え?」
ノエル「ささ、どうぞこちらへ!」
マキナ「いや……え? なにそれ……。わかんない人はどうするの?」
ノエル「あ、わかんないのが嫌な人はここでストップですよ!! 全作品網羅してるぜっていうマニアな人と、わかんないのがあっても別に気にしないんだぜっていう猛者だけ進んでくださいね!!」
マキナ「えぇ〜!? い、いいのそれでっ!?」
マキナ「えーと……あのう、始めまして……?」
歴代主人公「「「「 はじめま……女あっ!? 」」」」
マキナ「ひぐ……っ!? こ、こわぃぃ……」
リイド「……主人公女の子って凄いね」
香澄「俺たちの時代からじゃ考えられないな……」
響「あ? 別に女でもいいだろ。てか、元々女ばっかだろどの作品も。なあ、夏流?」
夏流「そこで俺に振るのか――。確かに、ディアノイアは特に女の子ばっかりだったが……。マキナだっけか? どうにも他人な気がしないな」
マキナ「ほえ? なつるさん、どこかでお会いしましたか?」
夏流「…………」
響「しっかし、頭悪そうな主人公だなオイ! ははは、ちっこいちっこい!」
マキナ「にゃー!? あんまりぐりぐり撫でないでくださいようっ!!」
リイド「大体主人公って高身長設定だもんね。ボクが男性陣じゃ一番小さいのか……」
夏流「一番でかいのは……俺と響が同じくらいか」
マキナ「みんなでっかいですう……」
香澄「……あれ? アイリスはどうしたんだ? 彼女も一応主人公だろう?」
アイリス「すみません、遅れました……!」
マキナ「おねえちゃんっ!?」
アイリス「はい?」
マキナ「な、なんというカラーオブレッド……がくぷるがくぷる」
夏流「…………(かわいいな)」
響「おい……お前他の作品の主人公に萌えてる場合じゃねえだろが」
夏流「いっておくが、俺は妹萌えだ」
香澄「妹……? 普通は姉萌えだろう」
夏流「姉? 姉ってなんだ姉って。シスコンか?」
香澄「妹でもシスコンだろ馬鹿が。俺の劣化コピーにくせしやがって……」
夏流「ディアノイアのほうが七倍くらい読者数あったっつーの」
リイド「あのさぁ、どうでもいいけどあんまり下らない事で時間使わないでよ……。あんまりスペースないんだし」
マキナ「はう〜。お姉ちゃんと同じにおいがするよう〜」
アイリス「……あのう、先輩? 彼女はどうして私にくっついているんでしょうか……」
夏流「…………(ゲルトとリリアみたいだ)」
マキナ「すりすり、すりすり……♪」
響「つか、趣旨が違うだろ? 小説家になろう五周年記念リニューアルで二年間お世話になってる長編シリーズの総まとめなんだろが」
リイド「……あんたがそうやって纏めるのキャラ的におかしくない?」
響「おかしくねえから! 俺リーダーだったから後半!!」
リイド「(カイトみたいだなこいつ……)」
アイリス「しかし、響の言う事も一理あります。あまりもたもたしていると時間は過ぎ去ってしまいますよ」
響「とはいえさ……俺ら全員人間やめてっから、時間とか特に関係ねえよな」
マキナ「え? 俺は人間をやめるぞーって事ですか?」
リイド「ボク神だし」
アイリス「私も神です」
響「俺も神だ」
香澄「ミスリルのという意味では神だ」
夏流「世界を作ったという意味において神だな」
マキナ「なにこの神率!?」
全員「「「「「 それが神宮寺クオリティ 」」」」」
マキナ「えー…………」
リイド「でも神の中においても多分ボクが一番神だよね?」
アイリス「それなら私ではないでしょうか?」
響「別にどれが神でもいいだろ! さっきから神神言ってたらゲシュタルト崩壊してきたじゃねえか!」
香澄「それはお前が馬鹿だからだろ」
響「馬鹿で何が悪いッ!!!!」
夏流「(いや、全部悪いだろ)」
マキナ「あ、でもぼくも馬鹿ですよーっ」
響「そうかそうか! てめーはホント、頭悪そうな顔してるもんなあ!」
マキナ「えへへーっていたた! ぐりぐりなでないでくださいよう!?」
リイド「それじゃ本題に戻って……。マキナに歴代主人公からアドバイスしていこうよ」
夏流「そういえばそういう趣旨だったな」
アイリス「そうですね。では先輩からどうぞ」
リイド「うん。マキナ、後半に入ったら“兄”的なキャラには気をつけるんだ。ヒロインの脳天を撃ちぬいたり、背後から槍でブッ刺されて死ぬかもしれない」
マキナ「エ?」
アイリス「次は私ですね。マキナ、完全に終了するその瞬間まで油断しちゃダメですよ。もしかしたらラスボス自分かもしれないですから」
マキナ「エ?」
香澄「次は俺だな。基本、身内は疑っておけよ。親は特にラスボスの可能性が非常に高い。気をつけろ」
マキナ「エ?」
夏流「俺からは……そうだな。ラスボス直前になると、一番仲が良かった親友的なツンデレヒロインがうっかり死んだりするかもしれないな」
マキナ「エ?」
響「俺か? んー……。あ、子供の頃のことで忘れてる事があったら気をつけたほうがいいぜ。明らかにフラグだからな、それ」
マキナ「エ?」
リイド「なんかあんまり参考にならなくない?」
響「でも真理だろ?」
アイリス「そうですね……。実際、毎回結構ワンパターンですから」
リイド「ネタないんじゃない? まあボクら関係ないけどさ」
夏流「(それにしてもリリアに似ている……)」
香澄「で? これはどう〆るんだ?」
マキナ「えと……? どうすればいいですか?」
ノエル「最後は挨拶でしめましょう!!」
リイド「……オリカ?」
ノエル「それではリニューアルおめでとうございます!! そして!!」
一同「「「 これからもよろしくおねがいします! 」」」
マキナ「ちゃんといえたよ、おねえちゃーん! はむはむ……!」
アイリス「きゃあっ!? な、なんでかむんですか!?」
響「羨ましい……」
リイド「……あんたはすこし自重したほうがいいと思うよ」
ノエル「これで、明日重大なエラーがあって延期とかになったらバカウケですよねーっ」
全員「「「 …………………… 」」」
ノエル「あははははは! ……って、アレ? 何この空気……。え? 終わりです!!」