表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/83

ソード・コンプレックス(2)

「もう大丈夫。とりあえず、命に別状はありませんよ」


 医務室の中、白衣の先生はわたしの右目に包帯を巻き、そう微笑みました。なんというか、既に馴れてしまった医務室独特の空気の中、わたしはそっと自分の目に手を当ててみます。一体どうなっているのかはわかりませんが、とりあえず痛みは引いたようでした。


「詳しい事は、もう少し検査してみないと判らないけど……とりあえずはそのままで。検査の準備が終わったら呼びに来るから」


「あ、はい。ありがとうございます」


 先生が部屋から出て行き、わたしはほっと一息。傍らに立っていたラグナ君が顔を寄せ、わたしの顔色を伺います。その顔が妙に近くて思わず飛びのいてしまいました。


「良かったね、命に別状はないんだから」


「あ、うん。ラグナ君、連れてきてくれてありがとう。それで……わたしの右目、ど、どうなってるのかな?」


「僕の口からは、なんとも。とりあえず――皆、入ってきていいですよ。治療はもう、終わりましたから」


 ラグナ君が扉の向こうに声をかけます。すると自動ドアが開き、旅団の皆がどっと押し寄せて来ました。どうやら部屋の前で治療が終わるのを待っていてくれたようなのですが、まさか全員いるとは思わずに思い切り背筋がびくっとしてしまいます。


「マキナ!! 大丈夫だった!?」


「ニア……。うん、大丈夫っぽいー」


「大丈夫なわけないでしょ、ばかっ!! もう、心配かけさせないでよ〜! 何回医務室にくれば気が済むんだよぉ、マキナのばか!!」


「ご、ごめん……」


 何度も頭をポカポカ叩かれてわたしは複雑な気分でした。そういえば最近、みーんなわたしの頭を叩きますねー……。でも確かにニアの言うとおりフェイスに入ってからしょっちゅう医務室のお世話になっているような気がします。

 ニアは相変わらず、泣き出しそうな顔でわたしにすがり付いていました。ラグナ君がそんなわたしたちの様子を見て笑い、ナナルゥが前に出ます。


「ビックリしたぞぅ……。マキナ、目はどうなってるんだ?」


「包帯とって見ないとわかんないけど……。うーん、それにしてもなんだったんだろう? 急に目から血が出るって普通じゃないよね」


 別にただ普通に話をしていただけなのに、突然やってきた痛み……。溢れる血の中でわたしは頭が真っ白になり、多分一人ではここにたどり着く事も出来なかったでしょう。

 ラグナ君へと視線を向けます。彼は腕を組んで何かを考えているようでした。しかしわたしの視線に気がつくとにっこりと微笑を返してくれます。なんというか、ラグナ君って結構いい人なのかな。


「ったく、何事かと思ったが意外と元気そうじゃねえか。駆けつけて損したぜ」


「ま〜、あのマキナだしな〜」


「本当に大変だったんですから、二人ともそういう言い方はどうかと思いますよ?」


 オルド君もサイ君も、リンレイも来ています。しかしそこでふと気づいたのですが、ヴィレッタ先輩の姿がありません。どうしたのかと考えていたその時、ヴィレッタ先輩が扉を潜って姿を現しました。その傍らにはアンセム先生の姿もあります。

 先生たちはやってくるなり、皆を部屋の外に追い出してしまいました。残っているのはナナルゥとラグナ君、そしてわたしと先生たちだけです。どういうことかと首をかしげていると、先生はわたしに歩み寄り、座っているわたしの前に腰を落として包帯越しにわたしの目に触れました。先生と正面からこうして近距離で見詰め合うのは初めてで、なんだか無意味に緊張します。


「やはりか……。“エーテル覚醒”だ」


「えーてる……? 覚醒?」


 先生は立ち上がり頷きました。驚いているのはどうやらわたしだけのようで、周囲の三人は納得している様子です。張本人なのにわけがわからずぽかーんとしているわたしの前に立ち、ヴィレッタ先輩が説明してくれました。

 エーテル覚醒――。それは人間がエーテルと接触していると発生する、ある種の中毒症状なのだとか。人間はエーテル環境下で生きていく事が出来ないのは常識ですが、それでも我々ライダーはFA等、強力なフォゾンを固有する箱の中に乗り込む物です。地表のカナル上での戦闘など、高密度のエーテルフレアの付近で活動する事も多く、そうした場合、いくつかの中毒症状を併発するのだそうです。


「人間は通常、エーテルを代謝することが出来ない。呼吸などで体内に取り込んだエーテルは徐々に肉体を内側から焼き尽くし、やがて死に至る。だがそこまでには当然いくつかの段階があり、即死というわけではない。勿論長時間エーテルに接触していれば、命を落とす事になるがな」


「え? じゃあ、これの原因はエーテル中毒って事ですか?」


「エーテル覚醒は中毒に近いが、それとは少々異なる特殊なケースだ。マキナは特にエーテルと長時間接していたわけでもないしな」


 そうなのです。確かにわたしはトレーニングとかは長時間やっていますが、中毒症状になるほど長時間エーテル環境にいたわけではありません。それなのにエーテル中毒というのは一体どういう事なのか……少々意味が判りません。


「覚醒は、ごく一部の人間にのみ発現する症状だ。覚醒には先天的覚醒と後天的覚醒の二種類がある。マキナの症状は非常に希少な、後天的覚醒に該当する」


「マキナ、僕やナナルゥを見て何か思うことがない?」


 ラグナ君の質問でした。振り返り、わたしは二人をじっと眺めます。特に――思うことはありません。別に普通の二人です。首をかしげていると、ラグナ君はナナルゥの髪を手にとって微笑みました。


「僕らの髪や目の色、普通の人と少し違うと思わない?」


「あ――。え? あ……」


 ナナルゥの髪はきらきらと輝いている桃色です。発光してるんじゃないかってくらい、キラキラしている髪の毛です。目も鮮やかなピンク――。ラグナ君も、鮮やかな金髪をしています。それに瞳の色は――紅と蒼、鮮やかな二色に分かれています。

 え、あれ? ラグナ君の目の色、こんな色だったっけ……? そう思っていると彼はポケットからコンタクトレンズを取り出しました。何でも普段はカラーコンタクトでオッドアイをごまかしているんだとか。


「他にもカラーオブレッド、アテナ・ニルギース。彼女も燃えるような鮮やかな色彩の髪色をしているよね。瞳も真っ赤だ。それに、ヴィレッタも目の色は鮮やかな紫……。皆宝石みたいな色だ。そうだろう?」


「た、確かに……。え、それとエーテル覚醒って何か関係あるんですか?」


「――エーテル覚醒とは、大げさに言ってしまえば人間の進化だ。“先天的覚醒”とはつまり生まれてきた瞬間からエーテルに覚醒している状態――つまり、アナザーの全てがこれに該当する。対して“後天的覚醒”とは、生まれはノーマルだがエーテルに接している間に徐々に身体がエーテルに侵食され、アナザー同等に適応力を持つ事を言う」


 最後にまとめるように先生がそう告げ、わたしは一応納得する事が出来ました。つまり――アナザーと呼ばれている人たちは、先天的にエーテルに対する抵抗力を持っている人たち……。こうしてみてみると、ラグナ君、ナナルゥはアナザーという事なんでしょうか? でもラグナ君にはアナザーの象徴である外部エーテル呼吸器官がないし……。ヴィレッタ先輩は多分、後天的タイプなんでしょう。髪色は一般人に見えるし、目だけが覚醒の痕跡を示しています。目も髪も真っ赤なアテナさんは……あれ? だ、だんだんこんがらがってきた……。


「兎に角、君の身体はエーテル覚醒を始めている状態だ。だがどうやら酷く不安定らしい。通常、エーテル覚醒には痛みや出血などは生じないからな」


「そうだったんですか……。あ、先生、一つ訊いてもいいですか?」


「何だ?」


「アテナさんのお母さんがカラーオブブルーっていうのは事実なんですか?」


 何故か、我ながら唐突な質問をしていました。普通は自分の心配をするとか、そういうシーンなのかもしれません。でもわたしは今自分の事なんてどうでもよかったのです。

 先生も流石にこの質問がいきなり飛んでくるとは思っていなかったのか、目を丸くします。そこで気づきました。先生は眼鏡をかけていました。つまり、家においていった眼鏡は先生のだけど、先生は眼鏡が一つくらいなくなっても別に平気――つまり、あれはもらってもいいんでしょうか――じゃなくて、先生はゆっくりと頷き、わたしの質問を肯定します。


「そうだ、事実だ」


「じゃあわたし、アテナさんに酷い事をしちゃったんですね……」


「何故、そう思う……?」


「アテナさん、レッドよりブルーになりたかったんじゃないでしょうか……? なのに、ぽっと出の新人のわたしがブルーの候補者とか言われて、アテナさんはいい気がしなかったはずです。あろう事かエキシビジョンじゃあんな事にもなって……」


 先生は驚いたような表情を浮かべ、それから肩を落としました。思えば変な質問に変な言葉を続けてしまったかもしれません。急に恥ずかしくなって俯いていると、先生はわたしの顔にまかれた包帯に手を伸ばしました。そしてゆっくりと、血濡れたそれを解いていくのです。


「兎に角、命に別状はないし、生活にも支障はない。人は変わらずには居られない……ただそれだけの事だ。むしろ進化に近いその変化、喜んでもいい程だろう」


 そうして先生はわたしを鏡の前に立たせました。鏡の中に映った自分――。何故でしょうか。不思議な事に、そこには右目を蒼く輝かせる自分の姿がありました。まるでニアやナナルゥのような、鮮やかに輝く蒼色……。目そのものが発光しているようにさえ見えます。驚いて言葉を失うわたしの肩を叩き、先生は目を瞑り言いました。


「アテナの事は、アテナ自身がケリをつける。あいつは陰ながら君を悪く思うようなやつじゃない。正々堂々、君を力ずくでねじ伏せて蒼の座を奪い取ろうと考えているだろう。アテナも実は、後天的覚醒者の一人だった。君たちはよく似ているな」


「そ、そうだったんですか……」


 この目のことは正直ちょっと不気味でしたが、でもアテナさんも同じだったと聞いた瞬間、何となく嬉しくなってしまいました。アテナさんと一緒……。わたしもアテナさんみたいに、強くなれるのでしょうか。


「ちゃんと見えるだろう? だが、まだどうなるかはわからない。特殊な覚醒の段階を見ても、油断は禁物だ。暫くは眼帯でもしておとなしくしているといい」


「あ、はい。ありがとうございます」


「ヴィレッタ、後は任せる」


「はっ」


 敬礼するヴィレッタ先輩の傍らを通過し、先生は去っていきました。残されたわたしはじっと鏡の中を覗き込み、少々呆けていました。まさかこんなことになるとは……。


「マキナ、よかったな! ナナルゥたちとおそろいだぞぅ♪」


「え? あ、そうだね。あはは、ありがとう」


「滅多にないケースだけど、そう深刻に考える事はないよ。ね、ヴィレッタ?」


「ああ。私もこの目が紫になった時はかなり驚いたが、馴れればどうという事もない」


「そうですか……よかったぁ」


 ほっと胸をなでおろします。角膜が落ちたときは本気でどうしようかと思ったものです。でも、もう痛くないし血も出ないので別にいいんでしょうか。ただ――あの時わたしは何を考えていたのか、それだけが思い出せないのです。何か、凄い事を思い出しそうになっていたような気が……。

 何はともあれ、こうしてわたしの右目はエーテル覚醒というちょっと変なことになり、それをギルドの皆に説明するのが先決でした。そしてとりあえず目下の悩みは――先生の言う眼帯って、どこで買えるのかって事でした――。

 マキナ・レンブラント、エーテル覚醒の日の日記より――――。




ソード・コンプレックス(2)




『しっかし、いつになったら終わるのかねぇ……。“ミザール”の建造』


 アルティールから遠く離れた宇宙空間、そこに浮かぶコロニーの一つ、ミザールは未だにその完成度は60%未満と、遅々として製作が進んでいなかった。その理由はいくつか存在するが、そもそもスペースコロニーの規模が巨大であるという事、そしてコロニーそのものの需要が低下している事が理由の一つとして上げられるだろう。

 そもそも、人類は全体的に見れば人口を日に日に減らし続けている。宇宙に逃れたいと願う人々がいる一方、地上をあこがれる人々もいる。そしてその宇宙に逃れたいと思っている人間の殆どは地上での戦乱に巻き込まれ死に絶え、今コロニーに住んでいる人々は別のコロニーに転居などしたがらないだろう。

 七つのコロニーの建造計画が持ち上がったのは数百年前であり、コロニー計画のベースとなる部分は人類の宇宙への進出にあわせた物であった。当然その人類の輝かしい未来予想図に、巨大隕石の落下などは含まれていなかったのだ。

 完成していたコロニーは隕石の迎撃拠点として非常に有効であり、五十年前当時は活躍した。そして現在では人類の逃げ場として機能しているのだが、オペレーションメテオストライクが遠い日の出来事となり、人類は最早宇宙に進出するどころではない。地球のゴタゴタは全ての人類の足を引っ張り、人々は限られたギリギリのラインの上での生活を余儀なくされている。

 彼らミザール建造チームがこの宙域に派遣されてから、既に四年の月日が経過しようとしていた。コロニーは基本、当初の計画では地球より近い場所から順番に建造が進められていた。完成したコロニーは次のコロニーを作る為の足がかりにもなる。したがって必然、七つのコロニーの中では四番目に遠い位置にあるミザールの建造は若干遅れ気味になってくる。そして最近、そのコロニー製作に関する順番はまた事情が変わってきているのだ。

 地球に固執する人々はコロニーに目を向けず、コロニーを求める人々はより地球から遠のいた場所を目指している。現在工事が最優先されているのはミザールではなくベネトナシュなのだ。最も遠い最果てのコロニー、アリオトを拠点にベネトナシュの工事は急ピッチで進められている。

 そもそもこのアリオトそのものが元々はミザールよりも地球に近い位置にあったのだが、オペレーションメテオストライク時、完成していた最も外側のコロニーとして作戦遂行の拠点となり、そのゴタゴタで軌道が変わって外部に飛び出してしまったという事情を持つ。ミザールはそんな様々な事情があいまって工事が遅れている、運の無いコロニーであった。


『ベネトナシュの方が先に完成しそうな勢いッスよね。は〜、さっさとフェクダに帰りたいッスよ……』


『お前、フェクダの出身だったのか? 俺はメラクだよ。結構近いな』


『近いったって、距離的にどんだけ離れてると思ってんスか? は〜、こっからでも地球は見えるのに、遥か彼方ッスよ……』


『そう愚痴るなよ。こんな辺境でも毎日衣食住揃った生活出来てんだ。地球よりは遥かにマシだろ』


『確かに、地球に行く可能性を考えればこんな辺鄙なトコでも天国と地獄ですね。聞きました? 地上、今大変らしいですよ』


 宇宙空間を漂う作業用のFAが無数のアームでコンテナを掴み、ミザールの周囲を漂っていく。二機編成のFAライダーたちは遠く地球を見下ろしながら他愛ない噂話をしていた。

 彼らの言う、地上での大変な事というのは地上では特に大げさになっていない事であった。とあるプレートシティの一団が勢力を増し、次々に侵略を行っている事についてだ。しかし地上の人間はそんなこと重々承知であり、今更騒ぐほどのことではない。この遠い辺境では、噂話さえも一つ遅れたものになってしまうのだろうか。

 赤茶の古い作業用FAがホバリングタイプの脚部から小刻みに炎を巻き上げ宇宙空間を移動していく。コンテナを多く担いだほうの機体のライダーはずっと地球を眺めていた。若いライダーであった。


『ここ、完成しても住む人居るんスかね〜』


『そういえば聞いた事あるか? コロニー計画のスポンサーの噂。なんでもあの傭兵集団、フェイスが裏で仕切ってるらしいぞ』


『それは流石にデマじゃないッスか?』


『逆に考えてみろ。他にこの世界の誰がコロニーなんぞ建造できるだけの金と権力を持ってるんだ?』


『ムーンシティのFA企業とかじゃないスか? 連中、今のご時世じゃ儲かってしょうがないでしょうし。それにコロニーって確か、全人類からの共同融資で成り立ってるんスよね? フェイスがどうって事は――あれ?』


『どうした?』


『なんか今、地球の方に熱源が――うわっ!?』


 突如、光の矢が飛来する。閃光はミザールの周囲を漂っていた作業用FAのコンテナを射抜き、爆発させていった。二機が体勢を整え、地球を見やる。紅く輝く地球を背に、無数の黒い点が猛スピードで迫っていた。


『な、なんスかあれ!?』


『なんだか判らんが兎に角逃げろ! やばいのには関わらないに限る!!』


『お、おやっさん! 待ってくださいよ……うわっ!? うわわわっ!?』


 次々に飛来するフォゾンビームに二機はあわてて退散していく。その痕跡を次々に通り抜けていく迷彩模様の九十九の姿があった。宇宙用のS型装備に換装された九十九はビームライフルを担いで次々にミザール目掛けて突っ込んでいく。それに遅れるようにして後方、宇宙空間に突如として巨大な戦艦が姿を現した。フォゾン迷彩で光を屈折させ、今の今まで息を潜めていたのだ。戦艦からは今この瞬間も次々に九十九が発進しており、明らかな異常事態が発生していた。


『戦闘用宇宙空母……!? おやっさん!!』


『隕石郡に身を隠してやり過ごすぞ! 巻き込まれたらお陀仏だ!!』


 迷彩柄の九十九たちは次々にミザールに取り付いていく。それと同時に周囲に漂っていた作業用のFAたちが撃墜されていった。彼らのFAには戦闘用装備などついているはずもなく、性能も作業用と戦闘用とでは差は歴然であった。抵抗する事も出来ないし、障害と呼べるほどのものでもなかった。


『こちらミザール警備隊! 直ちに戦闘行為を中止し、投降せよ! 繰り返す! 戦闘行為を中止し、投降せよ!』


 遅れて出撃してきたミザールの警備FA部隊がコロニーの港から溢れてくる。数十機の編成で飛来するミザール警備部隊目掛け、迷彩柄の部隊は攻撃で応えた。同時に警備隊は散開し、一気にフォゾンライフルを担いで突撃する。


『警告はしたぞ、馬鹿がっ!! 各カナード隊は小隊長の指揮下に入れ! 行くぞっ!! せっかく金かけて作ってるミザールだ、台無しにされちゃ家路が遠のく!!』


 白いカナードの部隊が次々に出撃していく。ミザール周辺の宙域は乱戦状態に陥っていた。宇宙空間で大規模な戦闘が起こることなどこの世界の歴史上、非常に稀なことである。建造しているコロニーは全ての人類の為の物――。それも作りかけのミザールを襲撃してくる勢力など想定外である。警備にはフェイスの協力もあり、カナードを配備している。しかし、襲撃者の九十九は一見旧式だが、何度も改造を加えられており非常に高性能だった。

 闇の中をフォゾンビームが飛び交っている。次々に撃墜されていくカナード部隊であったが、数では勝っていた。迷彩柄の九十九とミザール防衛隊、その消耗は同程度であると言える。カナードはこの世界では比較的優秀な量産機である。そのカスタムスペックバージョンと互角に渡り合うのだから、侵入者も只者ではなかった。


『隊長! こいつら戦馴れしてます!!』


『冗談じゃないぞ……! フェイスとムーンシティに連絡しろ! 救援要請だ!! ミザールがやられたら人類全体の損失に繋がる! 絶対に死守しろ!!』


 一方、戦闘宙域から距離を置いた場所に浮かぶ戦闘艦に動きがあった。迷彩柄の戦闘艦の下部が突然分離をはじめたのである。そして切り離された下部は独立した動きを見せ、その姿を変形させていく。


『“神風”パージ完了! 本艦“天土”は戦闘領域から後退、後方からジャミングを展開します!』


『くれぐれも迅速に、な。フェイスの連中にこられると少々厄介だ』


 神風と呼ばれた巨大な戦闘機にも似た機体は変形し、巨大な三角錐のような形状から巨大な両腕が生え、バーニアが展開される。閉鎖されていた装甲が開き、そこから一つ目の頭部が姿を現した。神風のコックピット、白髪の混じった黒髪の男がERSを展開させようとしていた。その様子はとても落ち着いており、浮き足立っているミザール警備隊のメンバーとは打って変わった態度であると言える。


『前線の連中に道を空けるように通達してくれ。進入を優先していい。外部の雑魚は俺が引き受ける』


『了解しました! 勇士ユーゼル、ご武運を!』


『ああ、せいぜい祈ってくれ。I have control――! “神風”、発進する!』


 神風の背部、六期のブースターが一斉に火を噴いた。一瞬で加速し、闇の中を突き抜けていく。神風の接近を確認し、九十九たちは急に道を開いていく。残された白いカナードたちは猛スピードで接近する神風を認識し――次の瞬間薙ぎ払われていた。

 巨大な両腕は爪でもある。すれ違い様にカナードを引き裂くくらいの事は造作もない。通り抜けていった神風を追い、振り返ってビームを連射するカナード隊。しかしあまりのスピードに閃光は命中しない。


『隊長!?』


『なんだありゃ……!? あれもFAなのか……ッ!?』


 腕と頭部を格納した神風はスピンしながら前進し、その前進から細いビームを発射する。周囲目掛けて降り注ぐビームの嵐に一瞬でカナードたちは切り刻まれていった。反撃にと繰り出したフォゾンビームライフルの一撃――。しかしそれは神風にまで届く事はなかった。光は表面で弾かれ、七色の光の残滓だけが木霊する。


『フォゾンビームを弾いただとぉっ!?』


 次の瞬間、隊長機に神風が迫っていた。鋭利な先端部分が隊長機のコックピットに突き刺さり、回転しながら神風は通り過ぎていく。貫通と同時に全身をばらばらに吹き飛ばされ、白いカナードは黒き闇の中に霧散した。


『――残り16か。今日は早く――終われそうだ』


 神風が突き進む。闇の中、悲鳴が響き渡った。その日、建造中であったコロニーミザールは謎の武装勢力により占拠された。そして、それが世界を揺るがす事件の幕開けであった――。


〜ねっけつ! アルティール劇場〜


*アンケートありがとうございます第二弾*


マキナ「なんか出てきたね」


ニア「まさかコロニーが関係してくるとは誰も思わなかったろうね」


マキナ「ぶっちゃけ関係ないしね」


ニア「そしてマキナは目が蒼くなったね」


マキナ「なんか、眼帯で目の色が変わると、ジャス――」


ニア「あーあーあーあー! とにかくこれから二部も盛り上がっていく予定です! というわけで、投票についてマイナーな人たちの意見にもレスしたいと思います」


マキナ「マイナ……」



【第二位】 リリア・ライトフィールド/8票



マキナ「どゆことなのっ!!!! はむはむはむっ!!」


ニア「いたあっ!? な、なんで噛むの!? マキナって噛み癖あるよね……」


マキナ「主人公なんて……。主人公なんて……っ」


ニア「なんかさ、それ毎回言ってるよね。夏流も響も」


マキナ「愛されてた主人公は、きっとリイド君だけなのですよ……」


ニア「それにしてもこのリリアへの投票率はマキナに対するいじめだと考えて良いだろうね」


マキナ「いぢめ? いぢめられてるの? うう……っ! うぅぅううう〜っ!!」


ニア「というわけで、本人からのコメントです」


マキナ「それは駄目じゃない!? 作品の垣根だけは越えちゃいけないと思う!!」


ニア「でももう呼んじゃったし……。どうぞ〜」


リリア「はーい、皆さんお久しぶりでーす♪ 皆のアイドル、白の勇者リリアですよーっ!! 黙って投票しやがれ♪」


二人「「 黒ッ 」」


リリア「あとがきでは基本的に黒いんですよ」


マキナ「にゃーっ! 区別がつかなくなるからああああっ!!」


ニア「ちょっと、ちょっと並んでもらっていいですか?」


二人「「 こう? 」」


ニア「…………。映像的にお見せ出来ないのが残念です」


リリア「誰かに書いてもらえばいいじゃないですかー。私とマキナちゃん、並んでるところを」


マキナ「そういう無茶ぶりを容赦なく出来るようになりたい」


リリア「まあ、大丈夫だよマキナちゃん! 私もディアノイア当時は、超不人気だったからっ!!」


二人「「 それは大丈夫じゃないんじゃ 」」



〜小休止〜



ニア「さて、お帰り願ったところで……。今回は少数意見の中から面白かったものをピックアップしていきます」


マキナ「わーい」


ニア「それではさっそくいってみよー!」


【アクセルみたいな感じになっていきそう。 こういうキャラ大好きなので期待してます!!】


ニア「サイに対するコメントでした。さてさて、アクセルですか」


マキナ「アクセル君の立場を考えると、なんかこの先がわかってしまいそうなコメントですね」


ニア「アクセル、何故か人気だったね。主人公よりも……」


マキナ「…………みんな死ねばいいのに」


【かわいいです?彼女にしたいです(笑)】


ニア「アテナさんに対する意見です」


マキナ「ド直球ですね――」


ニア「ちょっと妄想してみました。ほわわわ〜ん」


マキナ「……それはあの、なんか妄想的な効果音?」




アテナ「もう……。貴方、もう少ししっかり出来ないの? 勉強も戦闘も、身の回りの事もちゃんとしてくれなきゃ困るわ。そんなんでAクラスの傭兵になれるとでも思ってるの? あ、いや……べ、別に怒ってるわけじゃないのよ。ただ、貴方には私に相応しい人であってほしいだけで……。無理なんかじゃないわよ。私だって、料理の勉強とか、してるんだから……。こ、今度、良かったら味見を……」




マキナ「ぷっ!」


ニア「……笑っちゃだめでしょ。本人一生懸命やってるんだから」


マキナ「アテナさんかわゆい〜♪」


ニア「マキナ、物凄いにらまれてるよ――」


【死なないでほしい】


ニア「オルド君へのご意見です」


マキナ「作者爆笑してたね」


ニア「笑うよね、これは――」


【伊達メガネだから。】


ニア「アンセムさんへのご意見です」


マキナ「うん……。うん、どういうことかな?」


【もっと百合百合しく】

【恋愛展開ってもしかしてマキナとアテナが……ごくり。】


マキナ「どゆこと」


ニア「でもさ、とりあえずでもカテゴリーだかなんだかに百合って入ってるから、それっぽいシーンがないと詐欺だよね」


マキナ「それは、読者が妄想しやすいシチュをそろえてるってだけでしょ? 百合妄想推奨、みたいな」


ニア「どんだけぶっちゃけてんの!?」


マキナ「同人誌が書きやすいように〜……」


ニア「いやいやいやいや!?」


マキナ「じゃあ本編では絶対出来ないような、百合百合なシーンをやってみようか!」


ニア「あ、うん。どうぞ」




マキナ「アテナさん、コックピットの中で二人きりってなんだかどきどきしませんか……?」


アテナ「え? あ、そう、そういう設定なの……」


マキナ「はい。厳密にはルナティック・フロウ(1)で一緒にヘイムダルに乗ったりするシーンあたりの派生系です」


アテナ「説明ありがとう……。それで、どうして迫ってきているのかしら……」


マキナ「ライダーなので、アテナさんにまたがってみようかと思いまして……」


アテナ「ど、どういう事かしら……」


マキナ「なんだか……宇宙空間で二人きりって、えっちな気分になりませんか――?」


アテナ「ど、どうして脱がすのかしら!? いやああああっ!?」




ニア「アウトアウトアウト!!」


マキナ「続きはノクターンノベルにて!」


ニア「やらないからね」


マキナ「そして、アポロは人物ではなく物体なので投票できません。あしからず〜」


ニア「え?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おなじみのアンケート設置しました。
蒼海のアンケート
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ