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第七話 犯人を捜すアルフィー



「それじゃあ僕は出かけてくるから、お留守番頼んだよ」


次の日、アルフィーは早速、受けた依頼の為に動き始めた。


「いってらっしゃいアルフィーさん。夕食はどうしますか?」

「遅くなるかもしれないけど、取っておいてくれ。君のご飯はとても美味しいからね」

「分かりました。お気を付けて」

「ん、行ってくるよ」


アルフィーはユウの前髪を少し分けて、額にキスをした。

それに赤くなるユウ。

今度は頬にキスを落として、アルフィーは店を出た。


「・・・ただの、挨拶ですよね挨拶・・!」


どきどきと高鳴る鼓動を誤魔化すようにユウは箒を手に取って掃除を始めた。




アルフィーは門の前で、門に手を翳し詠唱を始めた。


「我を導け銀の門 我の望む場所へ開け銀の門 我を運べその場所へ」


門を開き、アルフィーは歩き出す。

その姿は陽炎のように、門の向こうへ消えた。




ふわり、とアルフィーが降り立ったのはある家のある部屋。

窓の外からは子供が遊ぶ声や世間話をしている大人達の声が聞こえる。

アルフィーは部屋の中を見渡した。

手作りのキルトが壁に飾られ、鏡台がある。

鏡台にはクシや女性用の髪飾りが置かれていた。

箱もあったので開けて見ると、糸や針などの裁縫道具が入っていた。

自分でキルトを作るのだから、裁縫好きだったのだろう。


「ふむ」


小さなテーブルの上には写真立てがあった。

写真には剣を持った男とローブを纏った女性、幼い少年と少女が写っていた。

少年の方はフォルスだ。

殆ど変わっていないからすぐに分かった。

少女の方、これが妹のケイトだろう。

殺された、妹。

大人の男女はきっとハンターであった両親だ。

兄妹の面影がある。

そう、ここはフォルスとケイトの兄妹が暮らす家でアルフィーがいるのはケイトの部屋だった。

つまり、ケイトが殺された部屋である。


「・・・・・・・・・ここが問題のベッドの上、か」


真新しいシーツが敷かれた古いベッド。

このベッドの上でケイトは腹を刺され亡くなっていたという。

殺されたのは半月前。

部屋はすっかり片付いている。

けれど。


「・・・・血の匂いは、まだしっかり残ってる・・・」


普通の人なら気づかない。

けれどアルフィーはしっかりとこの部屋に残る血の匂いを感じ取っていた。


「腹部を滅多刺しにされたという事は・・相手もかなりの返り血を浴びた筈・・・」


くすりとアルフィーの口元が孤に吊り上がる。


「さて、どうしましょうかねぇ・・・?」






バタン!!


「っ・・・・・いない・・・」


勢いよく扉を開けたフォルス。

誰もいない妹の部屋をぐるりと見る。

クローゼットも開けてみたけど、妹の服しか入ってない。


「フォルスさんっいきなりどうしたんですか?」


もう一人、男が慌てて入ってきた。

フォルスと比べると細身である彼はケイトの婚約者、テリーである。

彼は毎日フォルスの所へ来て、彼を元気づけていた。

今日もそのつもりで、彼はこの家へ来ていたのだ。

話をしている途中で突如フォルスがケイトの部屋へ向かったので、テリーはかなり驚いた様子だ。


「この部屋に、誰かがいたような気がしたんだ・・」

「え、まさか・・・この家には俺とフォルスさん以外いない筈ですよ」

「そ、そうだよな・・・」


気のせいか、とフォルスは開けたクローゼットの扉を閉めた。


「一瞬、ケイトかと思ってしまったよ・・。そんな訳、ないのにな・・・・情けねぇなほんと・・」

「フォルスさん・・俺も同じです・・。俺も、この部屋に来るたびに彼女があの優しい笑顔で出迎えてくれる、そんな事ばかり思ってしまうんです。だから情けなくなんかないですよ」

「テリー・・・ありがとな・・本当に。お前には感謝してるよ」


フォルスは心からテリーに礼を言った。




「アイアンランクと言えども、かなり勘は良いようだ。有望なハンターだな」


屋根の上でアルフィーは胡坐をかきながら呟いた。

足の間には野良猫がアルフィーに顎を撫でられて、ごろごろ喉を鳴らしてる。

家は街のど真ん中。

人目が多いから、かなり目立つだろうに、だれもアルフィーに気づかなかった。

その存在は、全く誰の目にも入らなかった。


「では、はじめましょうかね」

「みゃー」


アルフィーに相槌を打つかのように、猫が一声鳴いた。


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