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第三話 ユウとアルフィーの出会い2

森に入る前にユウは鞄から香灯(こうとう)を出した。

持ち運び用の香炉で、見た目はランプの形をしているものだ。


「魔物除けの香薬(こうやく)・・下級くらいで大丈夫ですよね・・」


森の中には魔物が多い。

けれどこの近辺で中級や上級レベルの魔物が出るという噂は聞いた事がないので、ユウはゴブリンやファングラビット(牙の生えたウサギの姿をした魔物)といった下級レベルの魔物除けの香薬を出した。

薄緑色で、葉っぱの形をした香薬を香灯の中のくぼんだ部分に差し込み、マッチの火を灯す。

薄い煙と共にミントのような香りが漂い始めた。


「よし・・・!地図で見ても森はそんなに広くないから・・急いで行けば夕方には出れるはず・・」


ユウは香灯を持ち、森の中へ足を踏み入れた。

そう、この魔物除けの香薬は下級レベルの魔物になら効果は抜群だった。

下級レベルなら・・。





「はぁっはぁっはぁっ」


ユウは森の中を走った。

運動や体を動かす事は苦手なユウだけれど全力で走った。

そんな彼女を狼の姿をした魔物が追っていた。

レッドウルフ。

中級レベルの魔物だが、中級でも危険度で言えばかなり上の魔物であった。

下級レベルの魔物除けの香薬が効く筈なかった。



ザシュ!


「っあ!」


レッドウルフの爪の斬撃が右足を掠め、ユウは地面に倒れ込んだ。

持っていた香灯も落ちて割れた。


「いっつ・・・・・足が・・・・」


痛みを訴える足を押さえる。

掠っただけでもその傷は深く、ユウの右足と押さえた手は赤く染まった。


「ひ・・・・」


だんっと地面に落ちたユウの鞄をレッドウルフが踏みしめる。

ぐるるると、レッドウルフが唸る。

ぼたぼたと涎を鋭い牙から零す。

恐怖と痛みで立てなくなったユウの目に涙が滲んだ。

レッドウルフは地面を蹴り、まさにユウに食らいつこうと飛びかかった。

ユウは思わず目を閉じる。


だが一向に食らいつかれる衝撃と痛みはなかった。

恐る恐る、ユウは目を開ける。



「・・・・・・・・あ・・・・」



ぎりぎりと、レッドウルフの首を片手で締め上げる長身の男がいた。

もう片方の手はステッキを握り、紳士のような格好をしている。

だが頭部は人間とは全く異なった姿だ。

紫混じった黒い火の玉のような頭部。

木々の隙間から差し込む太陽の光が、黒い火を幻想的に輝かせた。


「・・・・・綺麗・・・・」


思わず、レッドウルフへの恐怖も足の痛みも忘れてユウは呟いた。

彼は片手でレッドウルフを締め上げたまま、地面へと叩き伏せる。

レッドウルフはその衝撃で首の骨が折れ、完全に事切れた。

彼はゆっくりとユウに振り返る。

目や口元は紫に光ってるように見えた。

彼は優しくユウに微笑み、そ、と白い手袋をはめた手を差し伸べた。


「可愛いお嬢さん、大丈夫ですか?」

「え、あ、あの・・・あ、助けてくれてどうもありがとうござ・・・」


慌ててユウは立ち上がろうとしたが、目の前が急に暗くなった。

倒れかけたユウを彼はすぐに支えてくれた。


「大丈夫かい!?その足の傷・・奴の爪にやられたのか・・・!レッドウルフの爪には毒がある・・・その毒が回り始めたようだ・・」


ユウの呼吸は荒くなり始め、顔色も青ざめ始めた。

彼はユウを横抱きにして抱えた。


「すぐに僕の家へ行こう。早く手当てしないと大変な事になる」


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