第二話 ユウとアルフィーの出会い1
ユウはエーデルという小さな国にある薬屋の娘として生まれた。
薬屋はそこそこ栄えていて、生活に不自由はなかった。
父親はとても優しく、様々な薬の製法を学んでいてそれら全てを本に記していた。
母親はユウが10歳の時に病気を患い亡くなった。
それから3年後、ユウが13歳の時に父親は再婚した。
義母はとても美しく、その連れ子である息子、コナーも美しい顔立ちだった。
ユウより2歳年上なので、彼はユウの義兄となった。
だがこの二人、父親の前では優しい母と兄を演じていたが父の目の届かぬところではユウを馬鹿にし、家事労働などでこき使っていた。
ユウは母親似で多少肉付きがよすぎる体系だったので、二人はユウを子豚と呼んでは笑っていた。
それでもユウは、母を亡くしてから元気がなかった父が再婚してようやく元気を取り戻してくれたので、何も言わなかった。
元々家事は好きだし、体系の事でからかわれるのは小さい頃から慣れているので特に気にはしなかった。
だがユウが15歳になる時、父親が突如亡くなった。
突然の心臓発作を起こし倒れ、そのまま息を引き取ってしまったのだ。
悲しむユウを他所に、義母と義兄は葬儀などさっさと手続きを済ませた。
そして身内だけの葬儀が終わった後、ユウに告げた。
「お父様の遺言書があるの。そこにはこの薬屋と財産は全て私とコナーに譲るって。だから貴方は早くここから出ていってね」
「お前の部屋は俺の妻が使う事になったからさっさと荷物纏めろよな子豚」
遺言書を見せてもらったけど、確かに父の筆跡だった。
信じられなかったけど、この遺言書が偽物だという証拠はどこにもないのでユウにはどうする事もできなかった。
更に義母と義兄はユウの悪い噂をあちこちに広めた。
店と財産は絶対に渡さないと、自分達を追い出そうとしていると。
人前では善良な人物を演じていた彼らの言葉を皆信じてしまった。
小さな国なので噂はあっという間に広まり、ユウは周りから白い目で見られるようになった。
そんな状況に耐え兼ね、ユウは国を出て父の遠い親戚を頼る事にした。
ユウが使っていた部屋の家具類は、コナーの結婚相手が使うから置いて行けと言われた。
こうしてユウは僅かなお金と少ない荷物のみ持たされ、生まれた時から暮らしていた薬屋を追い出された。
「はあ・・・これからどうなるんでしょうか・・」
地図を頼りにユウは親戚が暮らす国を歩いて目指した。
その国は歩いて三、四日ほど。
財布の中には、金貨12枚と銀貨7枚、それに銅貨と鉄貨が数枚。
馬車や乗り物を利用する手もあるが、なるべく節約したいユウは野宿しながらでも歩く事を決意した。
携帯食と飲み水、護身用のナイフなどを購入して、金貨は9枚と銀貨は5枚に減った。
国の外に出ると魔物との遭遇率は高い。
けれどこの国にいても、自分の居場所はどこにもなかったのでユウは国を出る以外選択肢はなかった。
「魔物は怖いですけど・・いざとなったらアレを使えば、何とかなります・・!きっと・・」
しかし一度も会った事のない親戚。
手紙を出したけど、受け入れてもらえるだろうか。
厄介者と家に入れてもらえない可能性が高い。
「そうなったら教会や孤児院で住み込みで働かせてもらえないか頼みましょう・・。・・・大丈夫っこんな時こそお母さんの言葉を思いだすのですユウ!前を向いていれば必ず良い事は起きる!そうですよねお母さん・・!」
前を向いていれば必ず良い事は起きる。
亡くなった母の言葉。
それはユウが泣いていたり落ち込んだ時に母がいつもかけてくれた言葉。
「落ち込んで下ばかり向いていたら良い事は逃げちゃいます!頑張れ私!前を向いて進みましょう!!」
そしてそんなユウの目の前。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
鬱蒼と茂る森の前。
ざわざわと冷たい風がユウの頬を撫でる。
「・・・・・・この森を通らなくちゃ、いけないみたいですね・・」
何度も地図と森を往復するユウ。
「・・・前を向いて進め・・前を向いていれば必ず良い事は起きる・・!こんな森、へっちゃらです!!」
意を決したユウはぐっと拳を握って森へ入る決意をした。
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