第5章18 バルムンク、再び
ユニとフリンがフォックスハウンドから発進した時、ユニは閉じ始めたハッチから外へ駆け出す何者かの影を見たような気がして、小さく、——あっ、と声を漏らした。しかし見えたのは一瞬のこと。フリンは何も気づいた様子もなかったので、見間違いだと思い気にしなかった。
フォックスハウンドを発進した三機はフリンが操るラブディを先頭にして過去の飛行戦艦の遺跡バルムンクを目指している。三機が発進したのはフリンとユニの故郷ヴィーグリーズ村があるのとは逆側の麓だ。エミル山のこちら側は切り立った崖や岩場が多く、耕作に適さず、目にとまるものも無いため村の者もほとんど近づかない。フリンとユニも村の大人達から危険だから近づくなと言われ、子供時代はエミル山を遊び場としてきたが、こちら側はほとんど来たことがなく、バルムンクの下へ案内するのにも時間がかかっていた。
「足場が悪いね。フリン、初めて乗るギアだけど操縦は大丈夫かい?」
ヤオフーが言う。フリンは、——問題ないと答えた。
「場所はこっちで合ってるのかい?」
「多分……。正直、山のこっち側ってあんまり来たことないんだ。コカヴィエールみたいにジャンプして上から見れれば、すぐわかるんだけど……」
「そのギアじゃそんなことできないし、できてもやらせられないね。どこに誰の目があるかなんてわかるもんじゃないんだから」
「——ふん」
それからもフリンは慣れないギアに悪戦苦闘しつつも不安定な足場を進んでいった。しばらくすると見知った場所に出て——。
「あ、ここは——」
「どうかしたのかい?」
「わかる道に出た。もう大丈夫だ」
「そうかい?頼んだよ」
それからすぐに三機は大きな洞窟の前に立っていた。洞窟は山を抉ったような異様な威圧感を放っている。
「ここがバルムンクだ」
「ここが入り口なのかい?」
フリンの言葉にヤオフーが疑問符をつける。フリン以外の何も知らない者は当然そう思うだろう。しかし真相は違う。
「いや、エミル山に連なっているこの小山全体がバルムンクなんだ。巨大な戦艦だった物に土が堆積し山みたいになってたらしい。この大穴は俺が開けたもんだ」
「——え?」
フリンの背後にいるユニとヤオフーのパードレに同乗しているボウの二人から同時に声が漏れる。それは、この山全体が遺跡であることに対する驚きなのか、それともこの大穴の正体に関する驚愕なのかフリンには判断がつかない。しかしおそらく後者だろうと決めつけて言った。
「色々あったんだ。ここから俺の人生は大きく変わった。——それじゃ、行こうか。多分大丈夫だと思うけど、中には警備ギアがいるかも知れないから気をつけてくれ」
三機は大穴からバルムンク内部に侵入していく。——森の中には、そんな彼らの様子を伺う人影があった。
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