第5章15 ユニと……
太陽が登り、朝がやってきた。砂漠の朝は太陽の光を妨げるものがなく、空は美しい橙色に輝き、夜にすっかり冷えてしまった大気が徐々に暖められていく。
——もう朝か。フリンはおもむろにベッドから顔を上げた。眠気はない。目はしっかり開いているが頭の動きが鈍い。昨夜はあまり眠れなかった。やり場のない想いが身体中を渦巻き、フリンは悶々と一夜を過ごしていた。時刻は午前七時を少し回ったところ。まだ医務室にいるユニのところに行くには少し早い。
「コーヒーでも飲んでくるか」
フリンは食堂で時間を潰すことにした。
◇ ◆ ◇
午前九時過ぎ、フリンは医務室にやって来ていた。ユニの元へは暇があれば来るようにしていた。
「おはよう。今日もいい天気だな」
フリンはユニに声をかけた。今日のユニは顔色も良く体調は良さそうだった。朝食を食べていたようで、フリンが来た時には、丁度看護師が食器を片付けているところだった。ユニはフリンに気がつくと、少し伸びた前髪が目にかかってしまうのを邪魔そうに指で横に掻きわけた。
「おはよう。今日は早いのね」
「ああ、何だか目が冴えちゃってな。飯食ってたのか?」
「うん」
「そっか。今日は何が出たんだ」
「えっとね——」
他愛のない会話が続く。フリンはなかなか話を切り出せないでいた。傍目には普段と変わらないように見えるフリンの様子であったが、子供の頃から長い時間を共に過ごしていたユニのことは誤魔化せない。フリンの緊張を感じとり、ユニが不安そうに言った。
「どうしたの?何かあった?」
「え?あ、まあ……」
不意を衝かれて返答に詰まった。フリンは無意識に困ったような顔で鼻の頭を右手の人差し指で掻いていた。
ユニが大きな瞳に涙を浮かべ、不安そうにフリンのことを見つめている。
——ユニさんと話してください。エリナの言葉が頭の中に蘇る。まだ自分の考えもまとまらず、どう切り出すかも決めあぐねていたが、フリンは意を決して言った。
「次の目的地だけど、エミル山に行くことになった」
「————」
聞こえたのか聞こえてないのか、ユニの反応はない。ユニのキョトンとした表情を横目にフリンが続ける。
「気付いてると思うけど、コカヴィエールはエミル山で見つけたんだ。そのコカヴィエールが不調でな。原因を突き止めるためにエミル山に帰ることになったんだ。ヤオフーからの命令でユニにも同行してほしい。——それで、そのあとは……」
フリンの頬を汗が伝う。緊張で声が裏返りそうになるのを必死に抑える。
「もしユニがここを降りたくなったなら、ヴィーグリーズに帰してくれるってことだった。——ユニはどうしたい?」
「そう。私は——」
ユニは布団の上で組んだ手に視線を落とし、考えながら、言葉を紡ぐように指を回している。そして、ゆっくりと話し始めた——。
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