第5章12
ハンガーを後にしたフリンは、傷ついたユニへ伝える言葉を探すため、今日は医務室には向かわずまっすぐ自室へと向かった。
時刻は午後三時を過ぎたところ。砂漠の砂は未だ熱くフリンの自室の窓から見える風景は陽炎で揺らいでいた。フリンは靴を脱いで、ベッドの上に横になるとコールとの戦闘時に起こったことを思い出していた。
「俺だって何が何だか分からないのに……。でも、このまま連れていくのは確かに心配だな……」
答えが見つからないまま時間だけがいたずらに過ぎていく。フリンは連日の作業の疲れもあり、いつの間にか眠ってしまっていた。目が覚めると時計の針は午後七時過ぎを指していた。外はすっかり暗くなっている。砂漠の夜は夏でも寒く、フリンは上着を一枚羽織った。
「まだ何の考えも浮かんでないのに寝ちまうなんて、俺ってやつは……。はぁ。とりあえず、飯食いに行くか」
フリンはベッドの下に脱ぎ捨てていた靴を履き部屋を出ていく。クルー達の部屋はフォックスハウンドの居住区にまとめられていて、男女別に区画を区切っている。部屋は人数分が用意されている訳ではなく、オペレーターや整備作業員達は二人から十人程度の様々な大きさの相部屋に詰められている。そんな中でフリン達パイロットには簡易なベッドでいっぱいになってしまうほどの狭さながらも個室が用意されていた。フリンが向かおうとしている食堂は居住区に隣接するように設置され、食堂から居住区に向かう通路を行くと、すぐどんづまりになり、そこから右に行くと男性居住区、左に行くと女性居住区になっている。
フリンが暗い表情をしたまま食堂に向かって歩いていくと、通路の向こう側からエリナが歩いてきた。エリナは乗っていたギアが撃墜され医務室に運ばれていたが、入院したのはほんの一晩ほどで、全快とはいかずともすぐに退院していた。フリンの方が先にエリナに気がついたが、一瞬顔を上げ、エリナの顔を一瞥すると挨拶もせずにすぐに下を向き、そそくさと先を急ごうとした。しかし、エリナに話しかけられ立ち止まる。
「フリンさんも食堂ですか?」
エリナが屈託のない笑顔でフリンに喋るかける。しかしフリンはミズガルズの戦闘で、お互いのギアが暴走していたとはいえエリナを撃墜し怪我をさせてしまったことを後ろめたさを感じ、「あ、あぁ……」と気のない返事を返す。フリンは、エリナを傷つけてしまった後ろめたさと、ユニへの事で頭が混乱しているためできることなら、このまま言葉を交わさず立ち去りたかったが、そんなフリンの思いを知ってか知らずかエリナはフリンの反応に困ったように表情を曇らせるが、フリンを安心させるように話を続けた。
「あ、あの…気にしないでくださいね。お互いにギアのコントロールを失っていましたし、それに先に攻撃を仕掛けたのは私の方ですから。あれっ?そしたら気にしなきゃいけないのは私の方ですか?」
——あはは。と、エリナは困ったように左手で後頭部を掻きながら笑う。しかし、なおも反応の薄いフリンに心配になってしまった。
「あの、私空気読めてなかったですね。すいませんでした」
「あ、いや、そうじゃないんだ。悪い。悪かった」
「あの、どうかしたんですか?」
エリナが謝ったことで、フリンは自分の態度がエリナにあらぬ誤解をさせてしまったことに気づいた。フリンの弱々しい声を聞いてエリナが心配してくれている。
「ちょっと、な……」
「あの、よろしかったら、ご飯ご一緒しませんか?」
エリナの誘いにフリンはまたしても下を向いてしまう。エリナもそれを見て表情を暗くしてしまったが、フリンはすぐにエリナの顔を見ると、ありがとうと言い、二人は食堂へと入っていった。
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