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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第5章 神か悪魔か
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第5章6 ラナウェイディフュージョン

 「じゃあ、ハク。話を聞かせてくれ」


 ヤオフーの求めを受け、ハクは一度、右側に座るリーの方を見た。リーはその視線に気づいたが、何も言わず一瞥するとすぐに視線を落としてしまった。ハクはコーヒーを一口飲み、ほっと溜息を漏らすと、もう一口啜り、話を始めた。


 「スープーの奴も言ってたけど、俺らは観覧式の中継を見ながら、ボスの指示を待ってたんだ。王様の長い挨拶が終わって、いよいよハイ=ミズガルズが現れた時には、ハンガー内には感嘆の声が上がってた。——俺もスープーも確かに声を上げた」


 ハクは記憶を探り、どのような言葉に整理しようか悩みながら、ハンガーで起こったことを伝えようと努めた。


   ◇  ◆  ◇


 「——それでは皆さま!いよいよ飛行遺跡の登場です」


 モニターには観覧式の中継が流れ、司会を担当している大臣が飛行遺跡ハイ=ミズガルズの登場を告げているところだった。ハクは飛行遺跡の登場と、それにあわせて始められるであろう作戦を前にして緊張していた。両掌にたまった汗をズボンの裾で拭き、操縦桿を握り直す。

 モニターの向こうでは、ミズガルズ城の上空が映され、奥から少しずつ近づく巨大な建造物が映り始めていた。


 「あれが飛行遺跡…」


 スピーカーから副船長カインの声が聞こえる。誰に同意を求めるでもない。本心が思わず口から漏れ落ちてしまったような静かな言葉だった。そして、それはカインだけではない。ハクも飛行遺跡の迫力に、荘厳さに圧倒される。——すげぇ。と本人も気づかず感嘆の声を上げていた。


 「む…?」


 カインが何かに気づいたような声を漏らす。ハクもカインの反応が気になり、モニターを注視した。——あれ、なんだ?ギア・ワーカーの小さなモニターではよく分からないが、ハイ=ミズガルズの上空を何かいることに気づく。


 「鳥?いや、それにしてはデカすぎるような——」


 小さなモニターでは辛うじてわかるほどの小さな点から、何かが分離してハイ=ミズガルズに向かっていく。それは勢いを殺すことなく、むしろ勢いを増していき、ハイ=ミズガルズに衝突した。黒い点の衝突点から火柱が上がり黒煙が立ち昇る。そしてこの衝撃は一発に止まらない。


 「何っっ!!??」


 スピーカーからカインの驚愕の声が聞こえる。しかし、そんなことも気にならないぐらいハクもモニター越しの光景に声を上げていた。


 「奴らなのか…?てか、普通いきなり撃つかよ」


 混乱を抑えきれないハクは、同じハンガー内にいる仲間たちの様子を伺おうと目線を上げた。——ん?


 「危ねぇ!!」


 ハンガー内には、作業員達用に用意された横一・五メートル、縦〇・八メートル程の小さなモニターに集まって観覧式の様子を見ていたが、一人の亜人がその輪から外れて工具置き場に保管されている溶接用のガスバーナーを手に取った。ガスバーナー火を灯すと、それを頭の上まで振りかぶったままモニター前の集団に向かって走り出した。その亜人が集団の一番後ろでモニターを見ていたボウ整備班長に向かってガスバーナーを振り下ろしたところを、間一髪のところで、ギア・ワーカーの腕を伸ばして防ぐ。気づくのがもう少し遅れていたら、ワーカーを走らせる判断がもう少し遅れていたら、間に合わなかったギリギリのタイミングだった。


 「てめえ!何のつもりだ!?」


 ハクが怒声をあげる。しかし、ガスバーナーを持つ亜人は無反応で、ワーカーの腕に再びガスバーナーを振り下ろす。


 「ちっ…」


 ハクは、堪らずワーカーの腕を亜人に向かって弾く。亜人は衝撃で三メートル程転がると気を失った。——いきなり、何のつもりだ?ハクがそう思ったその時、モニター前の作業員達の集団の中にいた他の亜人が、隣にいた作業員を殴り集団から抜け出すと、ハンガー内の武器保管庫からサブマシンガンを持ち出し乱射する。しかし、今度はリーがいち早くその動きに気づき、ワーカーの体を使って弾丸を受け止めると、横からハクが飛び出し、再び亜人を気絶させる。


 「リー、ナイス!」


 「お前もな!」


 リーとハクがお互いの動きを称賛し合う。しかし、その裏では——。


 「やめてください。どうしたの!?しっかりして!?馬鹿なことはしないで!?」


 ボウの声がハンガー内に響く。サブマシンガンを撃った亜人のいた場所の対角線。二人の後方では、スープーがワーカーで、整備班をなぎ倒し、他の亜人の作業員がギア・ワーカーに乗り込もうとしているのを助けていた。更にそのすぐ脇では、ギア・ワーカー用の携行用小口径ガトリングガンをスープーの元へ運んでくる亜人がいる。


 「スープーの野郎。どういうつもりだ」


 リーは近くにあった鉄板を持ち、ハクは素手のまま、無防備な作業員達と亜人達の間へ割って入っていった。

ご高覧いただきありがとうございました。

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