第5章2 混乱
「それでは皆さま!いよいよ飛行遺跡の登場です。私たちはこの遺跡にミズガルズ中央都市国家の今以上の発展と繁栄の願いを込めてハイ=ミズガルズと名付けました。ハイ=ミズガルズは皆さまの前方、ミズガルズ城の後方からやってきます。皆さま、ぜひご注目ください!」
大臣の話が終わると、中継映像は映す範囲を上方に変えていき、雲の少ない晴れ渡った空と映像の下四分の位置ほどにミズガルズ城の屋根が映るだけの映像となった。そしてその奥からゆっくりと、しかしながらあまりにも巨大な何かが迫りくるのを映していた。
「あれが飛行遺跡…」
思わず、カインの口から言葉が漏れた。
「いよいよだな」
いつに間にミュートをやめたのか、ネズミの亜人スープーの声がスピーカーから流れる。
フォックスハウンドのクルーたちが注目する中、映像の先では、ハイ=ミズガルズがミズガルズ城の上空に差し掛かっていた。
「む?今のは……?」
カインが映像の中に何かを見つけた。それはハイ=ミズガルズのさらに上空、雲の切れ間から小さな黒い点が、路上に落ちた砂糖にたかるアリのように集まってきているような光景だった。
その直後——。
「何っっ!!??」
カインが驚愕の声を上げた。カインばかりではない。フォックスハウンドは一瞬にして混乱に包まれた。中継映像では、突如として空からの攻撃を受け、墜落していくハイ=ミズガルズが映し出されている。
「な、いきなり撃ったのか!?奴らは遺跡の奪取が目的ではなかったのか!?」
艦橋内は突如訪れた状況についていけず静まり返っていた。しかし、異変はそれだけでは終わらなかった。
フォックスハウンドは衝撃に揺れ、耳を突き刺すような轟音が鳴り響いた。
「副船長っっ!!」」
ハンガーから、艦橋に通信が入る。
「ボウか…?何があった!?」
カインが通信に応じる。ボウが口早に応えた。
「それが……、スープーさんや整備班の一部が急に暴れ出しました……。暴れ出した皆さんに待機させていたギア・ワーカーも奪われ…。リーさんとハクさんが抑えてくれていますが、このままじゃ!どうすればいいですか!?」
「————」
(どうすれば、だと!?何が起きてるんだ)
「副船長っ!!」
ボウからの連絡に頭を抱えていたカインは不意に突き飛ばされた。
「くっ。今度はなんd——」
「頭を下げてください!!」
カインを突き飛ばした女性オペレーターが、立ち上がろうとしたカインの頭を床に抑えつけた。
「すみません。ですが、ミュラ操舵士やオペレーターが何人か銃を振り回しています。副船長はハンガーの件で気づいていなかったようなので」
「すまない。助かった。しかし、マオ、何が起きてるんだ。まさか、艦内に裏切り者が混ざっているのか?」
カインの問いにマオと呼ばれた女性オペレーターが応える
「わかりません。でも、一瞬見えた顔は意識を失ったような虚な表情をしていたようにも思います」
「操られている、ということか?しかし、このハイ=ミズガルズへの急襲とのタイミングの良さ。とても無関係とは思えないな。船長からも連絡はないし」
「でも、このままでは…」
「ああ、このままという訳にはいかない。とにかく暴れている奴は、取り押さえるぞ。まずは艦内の状況把握を優先する。協力してくれるな」
「もちろんです。向こうに他の子たちが隠れているので、とにかく協力して、まずはこの場を乗り切りましょう」
そう言って二人は短い作戦会議を始めた。
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