第4章38 決意
「——AIが暴走した?」
「ああ。俺の機体は聖痕機っていう特別なギアらしいんだけど……」
「そういう機体があるのは知ってます。AIまで積んであるものなんですね」
「それは俺のだけかもしれないんだけど……。いや、そうじゃなくて。俺はAIのことをヴィーって呼んでるんだけど、コールのやつ、俺のギアとかヴィーの事、前から知ってたみたいなんだ。それで、あいつがヴィーに話しかけたらヴィーがおかしくなったんだ」
「それは通信でなんとなく聞こえていましたよ。ヴィーさんのサポートなしでフリンさんが自力で動かしたんですよね?」
「始めは、な。でも戦闘中、急に機体の操縦がきかなくなって敵も味方もなく暴れ出したんだ。俺にはあんな操縦はできない。機体が暴走したせいでユニもあんな風になっちゃって……」
そう言ってフリンはユニのベッドのほうを見た。その視線を追ってエリナもユニのベッドのほうへ目をやる。二人の視線は医務室のベッドを仕切るカーテンに阻まれユニの姿を見ることはできなかったが、フリンは先ほどまでずっと見ていたベッドで眠るユニの姿を頭の中で思い浮かべていた。
「それにあいつ、本名をコカビエルと名乗ったんだ。それ、俺のギアと同じ名前なんだ。あいつが乗ってたギアも真コカビエルとかいうらしい」
「フリンさんのギアはコカヴィエールと言いましたよね?ギアに関して言えば、確かに外観も似ていますし……、『真』って言うのも、フリンさんのギアと繋がりがあるのかもしれませんね。でもコールさんの本名についてはどうなんでしょう?フリンさんのギアも発掘された大戦時の遺物ですよね?大戦は五百年も昔の話ですよ」
「ああ、それはわかってる。でも、コールは選考会の時から謎だらけだった。空の奴らの仲間なのは間違いないし、一体何が起きてるんだよ」
「フリンさんたちはあいつらを知ってたんですよね。何があったのか聞いてもいいですか?」
「————」
「話づらければ、無理しなくていいですよ」
「——いや、大丈夫だ。俺とユニは同じ村の出身なんだけど……」
それからフリンは自分の村で起きた事件の経緯を話した。アクラやヤオフーの件については、詳細は本人たちに聞くように伝え、自分たちと同じように襲撃があったらしいとの話を伝えるにとどめた。
「——村が半壊に、国が消滅……。本当のことですか?グリトニル王国なんて聞いたことありませんし、この三年の間にそんな大事件が起きたって言われても何も覚えがないんですけど」
「ヤオフーたちの話に関しては俺も半信半疑だった。俺もそんな話なんて聞いたことがなかったから。でも、俺の村が壊滅したことも、村の存在は消えてなかったけど、村が襲われたなんて話は誰も知らなかったし、いくら話しても誰も信じようとしなかったんだ。ヤオフーたち以外は……」
「————」
「今までの事がまた起こるなら、今回のミズガルズの事件もすぐに忘れ去られるかもしれない」
「そんな事、なかなか信じられませんが……。でも今回のことがわからないことだらけなのは確かです。皆さんはこれからもあいつらを追うんですよね」
「そうなるだろうな」
エリナは決意を胸に拳を握り目を閉じた。状況に流されるままにヤオフーたちに協力したフリンであったが、今回の件でユニが傷つき、二週間程度のわずかな間であったがミズガルズ中央都市国家で知り合った人達が傷つき亡くなっていったことが悔しくてしょうがなかった。はじめて成り行きではなく自らの意思で空の部隊の正体を突き止め止めたいと思っていた。エリナの姿を見て、フリンも自分の気持ちを再確認していた。
「——う、うん…」
「——ユニッ!?」
カーテンを隔てた向こうから、ユニの目覚める声が聞こえた。
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