第4章37 フォックスハウンドへ…
フォックスハウンドに着くと、エリナとユニは医務室に運ばれた。フォックスハウンドの三馬鹿の内の二人リーとハクがフリンのコカヴィエールとエリナのグレイブ・クラーケの破壊された残骸を集めにギア・ワーカーに乗って現場に向かった。三馬鹿の最後の一人で空の部隊が攻めてきたときに暴れ出したというスープーやその他の亜人たちも既に自我を取り戻し、今は監視下に置かれてはいるものの、戦闘により損傷し物資が不足したフォックスハウンドの補修や補給に人手が必要となるため通常どおりの任務をこなしていた。
「カイン、状況は?」
ヤオフーはフォックスハウンド副船長のカインに現状の報告を求めた。
「被害は少なくないです。観覧式典での急襲とほぼ同時に亜人たちが暴れ出して、対応が遅れ負傷者がかなり出ています。スープーはワーカーを使って暴れましたので、リーとハクが取り押さえるのに二人ともワーカーで応戦しまして……。あちこち穴だらけになっています」
「大変だったね……。よく抑えてくれたよ。今、亜人たちは?」
「ボスから帰還の報告を受ける少し前ぐらいに、急に正気に戻りました。全員に確認したわけではないのですが、皆、正気を失っていた時の記憶はないようです」
「急に正気に戻ったか…」
「——ミズガルズの方も、そんな話だったな」
「兄さん、それは本当かい?」
「ふんっ、通信をちゃんと聞いてなかったのか?空の奴らの撤退からしばらくして街の亜人たちが正気に戻ったって連絡が入っていたぞ」
「これも奴らの仕業なのか?」
ヤオフーは腕を組み右手を唇に当て、アクラとカインの話を吟味する。
「考えていてもわからないことだらけだ。とにかくまずは艦の立て直しから、目の前のことからやっていくよ」
◇ ◆ ◇
「ユニさんは良いんですか?」
「容体は安定してるらしいからな。気になることもあるし、それがわかったら、また医務室に戻るよ」
フリンはフォックスハウンドに戻ってくると医務室にユニを運び、しばらくはずっと医務室のドアの前でユニの診察の結果を待っていた。診察が終わるとユニのベッドの横に座り、いつ気がつくかもわからないユニが目覚めるのをじっと待っていたが、看護師に「少し気分転換してきなさい」と促され、その足でハンガーまでやってきていた。コカヴィエールに近づいていくと、整備を行っていたボウがフリンに気づき声を掛けた。
「なあ、ボウ。こいつ、俺にケーブルが刺さってたのに二本目のケーブルが出てきて、それがユニに刺さって、ユニの様子もおかしくなったんだけど……。今まで、そんなことって他にあるのか?」
「私もスティグマータは今までスティンガーとパードレしか見たことはありませんが、二機ともそんなのは無いはずです…。文献でもそんなの読んだ記憶はないですし…。前にお話ししたブラックボックスに関係してるんでしょうか……?」
「そんな話してたっけ?」
「しましたよ!忘れちゃったんですか?」
「悪い悪い。あの時は他にも作戦の説明とか色々覚えることが多くって、ついな」
「まったく……」
「ヴィーの方はどうだ?」
「呼びかけてはいるんですが、何も反応はありません。データの方も探ってみてるんですが、そっちも他に同じようなギアを扱ったことがないんで時間かかってます……」
「そっか。悪いけど何かわかったら教えてほしい」
「もちろんです。ここは私たち整備班に任せて、フリンさんも休んでください」
「ありがとう」
◇ ◆ ◇
フリンはハンガーをあとにすると再び医務室に戻った。すると、
「——フリンさん?」
「あ、エリナ…。気づいたのか?」
医務室に戻りユニのベッドに向かおうとしたフリンに不意に声がかけられた。フリンが声のした方を覗いてみると、カーテンで仕切られただけの患者用ベッドの入り口側から二番目、少しだけめくれたカーテンの奥に、ベッドの上で上半身を起こし、フリンを見るエリナの姿を見つけた。フリンは一度気まずそうに顔を伏せたが、すぐに顔を上げ、エリナのベッドの脇に立った。
「身体、大丈夫か?」
「ええ、少し頭を打ちましたが大事はないみたいです。今日一日様子をみて何も無ければすぐ退院できるみたいです」
「そうか。その……。悪かった……」
「いえ、気にしないでください。私のギアもコントロールを失って……。多分コールさんに何かされてフリンさんを攻撃してしまいましたから。フリンさんもやっぱり?」
「いや。確かにギアは暴走したんだけど、俺のほうは多分違う。俺にもよくわかってはないんだけど……」
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