第4章36 終戦
真コカビエルが飛び立つと、空から降りてきた部隊も撤退を始めた。撃墜された空からきたギアは撤退とともに自爆していった。後に残ったのは破壊された飛行遺跡、破壊された街並み、たくさんのギアの残骸と、たくさんの死傷者、たくさんの悲しみであった。
「終わったみたいだね」
ヤオフーが呟いた。満身創痍のコカヴィエールもそうだが、スティンガーもパードレもかなり損傷し、みんな疲弊しきっていた。
「ギアが爆発してなくてよかった。エリナも連れて帰ってやろう」
エリナの生死はわからない。しかしギアの破損具合や通信への応答がないことから、皆、エリナの生死については絶望的だった。ヤオフーの言った「連れて帰る」の言葉には骨を拾うという意味が誰の耳にも明かに響いたが、それを否定する者も誰もいなかった。パードレとスティンガーの二機が破壊されたグレイブ・クラーケのもとへ歩いてゆく。
「——ぅ…」
「——え?今、何か?」
「——ぅ、うぁ」
「エリナの声だ!良かった生きてた!」
誰もがエリナの死を覚悟していた。しかし通信からエリナの声が聴こえてくる……。フリンが嗚咽の混じった声音で、エリナの生還を心から喜んでいた。アクラ、ヤオフーもほっとしている。アクラとヤオフーの二人はそれぞれの機体から降りると、グレイブのコックピットを開け、エリナの状態を確認した。撃墜された際の凄まじい衝撃で頭をモニターに強く打ち付けたようでエリナの額には二筋の血が伝っている。意識が完全に復活したようではなく、コックピットを開けたアクラやヤオフーに対する反応は薄かったが、アクラが応急的に診たところ怪我は大したことなく軽い脳震盪を起こしたくらいのようだった。二人はエリナを機体から優しく下ろし、エリナをパードレのコックピットに運んだ。
「フリン、ギアは一人で動かせるか」
「ああ、なんとか大丈夫だ。そのエリナのことなんだけど……」
「コカヴィエールが動けるなら、私はエリナをミズガルズ王城に置いてくるよ」
「——いえ、私も皆さんのところに連れていっていただいてもいいですか?」
「エリナ!?気がついたのか!?」
「フリンさん、先程のこと忘れてはいませんよ。お話、ちゃんと聴かせてもらいますからね」
「——ああ、わかってるよ」
アクラもヤオフーも二人の間に何があったのかを聞くことはしなかった。ただエリナの悔しい気持ち、コールの裏切りに対する怒りの訴えにヤオフーも共感した。また、エリナは選考試験の時から三人に注目していた。もともとは他の志願者たちが個人で参加してる中で三人はずっと一緒にいたこと、フリンの明かに動きが素人なのに常人にはない動きの速さやギアのオーバーgに耐えた頑強さのギャップを訝しんだことが始まりであった。三人に注目していたため訓練期間中の三人の密会も何度か目撃していて、その目的が今回の襲撃に関係があるんじゃないかとつながったとの事だった。三人は最初はエリナを仲間に加える気もなかったが、エリナの熱意に負け、今後は砂漠の狐として一緒にやっていくこととなった。エリナはひとまずフォックスハウンドに運ばれることになった。
「ユニは一向に目を醒さないし、ヴィーも反応がない。早くフォックスハウンドに帰ろう」
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