第4章34 ミズガルズ攻防戦9
コカヴィエールが転がされた砂面から立ち上がり、無くなった腕のかわりと言わんばかりに棘状に突起した背面の大型スラスターから巨大なビームの翼を放出する。しかし、フリンがモニターを見ると、その正面にいるはずの赤橙のギアがいなくなっていた。正面には赤橙のギアのスラスターから放出されている緑色のビームの残留粒子だけがわずかに漂っている。
「奴はどこに——」
フリンが消えたギアを探すため、周囲を見渡そうとしたその時、再び、今度は背面から激しい衝撃が加えられ、コカヴィエールは前のめりに倒れ込んだ。コカヴィエールのコックピット内では更に多くのアラートが鳴り響く。
「うぐぁ…。今度は何が…?」
フリンの目の前、正面モニターは砂漠の大地を映している。その視界を邪魔しないように、左右下部に表示された機体状態のモニターや各パラメータに目を向けると、両腕に加えて、背面のビームの翼を作り出していた大型スラスターが切断され無くなっていた。更にコカヴィエールは再び立ち上がろうと胸部や機体前面のスラスターからの出力を上昇させていくが、背面を強い力に抑え付けられ身動きが取れずにいた。
「——名前も忘れてしまった君よ。今はヴィーと呼ばれていましたか?もう無駄な抵抗はやめにしましょう。時間の無駄です」
「コール…っ!!」
「フリンさんと言いましたか?僕は今ヴィーと話しているんです。余計な口出しは無用です」
「何でこんなこと…。人と街も皆壊して——」
「口出し無用と言ったはずです。殺しますよ?」
「っ——」
「さて、ヴィーよ。久しぶりだね。僕が誰だかわかるよね?」
「ぁ……、あ……」
コカヴィエールは赤橙のギアに腕一本で抑え付けられ地を舐めさせられていた。コールからの通信はヴィーに対して旧知の中であるかのように語りかける。口調はとても穏やかなで優しいものなのに、フリンにはなぜかその声音にはとても冷たく感じられ背中を冷たい汗が伝った。しかし、コールのその声に反応し、声を漏らすのはヴィーではなくユニであった。
「君がこの機体を盗んで既に五百年は経過しているのかな?今はこの真コカビエルも完成して、これは用済みだけど、だからと言って君の罪が消えるわけじゃない。その身で償ってもらうよ」
「いや…。あ…、あ、きゃぁぁぁあああ!!!」
「ユニ!?どうした、ユニ!?しっかりしろ!」
コールは赤橙のギアの名称を真コカビエルと言った。フリンはコールの話の内容からこの真コカビエルはコカヴィエールと何か繋がりがあるのかと話しをもっと聞きたかったが、突如、ユニが苦しみ出しそれどころではなくなった。
「くそっ!コカヴィエールも一切操作を受け付けない!さっきから一体どうなってるんだよ!?ヴィー返事してくれ!」
フリンが操縦桿を握りしめ、足元のペダルを操作し、必死で真コカビエルの拘束から逃れようとする。しかし、そのどちらもどこにも繋がっていないように操作は空回り何の手応えも返ってこず、コカヴィエールはびくとも動かない。また、フリンが必死に叫んでいるにもかかわらずヴィーは何の返事もせずユニは苦しみ叫び続けている。
叫び続けるユニの声がだんだん小さくなっていき、ユニがハイパーモードと呟いて以降コックピット内で煌々と赤く灯り続けた各種モニターやパラメータの表示、通常時の緑に戻り、そのまますぐ光が落ち暗くなっていく。全天周型のモニターが映す映像も壊れたテレビのように砂嵐が散るようになり、フリンが途方に暮れ始めた時、フリンはかすかに空気を切り裂く音を聞いた。その直後、至近距離で爆発音が響き、一瞬後、操縦桿やペダルに操作する手応えが戻り、全天周型モニターが復活し外の映像を映し、各種パラメーターモニターが緑色に灯った。
「——邪魔が入りましたね」
「フリン!無事かい!?助けにきたよ」
「遅れて悪かった。動けるか?」
空を切る音はアクラの駆るスティンガーから放たれたミサイルの飛翔音であった。ミサイルは間一髪のところで真コカビエルの張った緑色のビームシールドに阻まれ直撃はしなかったものの真コカビエルはこの場に駆けつけたスティンガーとパードレに対峙するためコカヴィエールの上から離れていた。真コカビエルが離れた途端にコカヴィエールのコントロールが復帰していた。
ご高覧いただきありがとうございました。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




