第4章29 ミズガルズ攻防戦4
「せっかく合流できたのに、あいつらはどこにいったんだ」
「なんの話ですか?それよりもマリー小隊長が怒ってましたよ」
「あ、悪りぃ。エリナからうまくいってくれないか?」
「いまさら無理ですよ。都市部の方は暴走していたギアの制圧もあらかた終わり、今は機甲科第二連隊のいくつかの小隊と歩兵部隊に現場を引き継いでギア部隊はこっちに集結しつつあります。マリー小隊長もこっちにきてますよ」
「——」
「まずはマリー小隊長と合流しましょう」
フリンとエリナ、コカヴィエールとグレイブの二機はマリーのもとへ移動を開始した。向かっている方向は先ほどまでフリンがアクラ達と共にいた最前線だった。フリンはここから、無数に襲いかかる敵機に追い詰められ、この遺跡の瓦礫の影まで追い込まれていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「なんですか?」
どこに向かっているか気づいたフリンがエリナに話しかける。二機の足が止まる。
「その一般人が乗ってるんだ。さっき見ただろ。先にこの子を安全なところに運びたいんだけど…」
「そうでしたね。しょうがないか…。私も一緒に行きます。マリー小隊長には報告しますよ」
「悪いな。よろしく頼むよ」
エリナからマリーへの通信が終了すると、二機はミズガルズ王城へ向けて出発した。ユニがいるため極力戦闘を避けるため、敵機に気づかれないようにブーストは使用せず、物陰に隠れながらゆっくり移動する。その道中にエリナが現場をフリンに説明してくれた。
「ミズガルズ王は裏切ったコールさんに殺されました。第一小隊に所属し要人警護をしていたコールさんは、あろうことか観覧式典のために参列していた王や王妃、各大臣をビームで一瞬にして灰にしてしまいました。アクラさんは大丈夫だったようですけど、オズワルド連隊長やマックス第一小隊長もその混乱でコールさんにやられ第一小隊は壊滅状態です。スコル第二小隊長も正気を失ってい拘束されているため、現在、第一連隊はマリー小隊長が指揮をとっている状況です」
フリンはアクラから第一小隊が壊滅したとは聞いていたが、まさかそこまでの状況になっているとは思っておらず言葉を失ってしまった。コカヴィエールのコックピットに同乗しているユニも、マリーの言っていることを全て理解しているわけではないようだが大変な状況であることは理解できたようで、右手の指で自分の唇に触れながら、ぶるぶると震えていた。しばらく待ってもフリンから質問が出ないのを確認すると、エリナは話を続ける。
「今、ミズガルズはレオ=ミズガルズ王太子が指揮をとっています。レオ王太子はこれまで内政官としてミズガルズ王の補佐をしてきた方で若干二十五歳の若さながら既に統治者としての才覚を表していました。レオ王太子はミズガルズ王城を避難場所として国民に解放しています。歩兵部隊が護衛しているので、ユニさんもそこへ連れて行くのが安全だと思います」
フリンもユニもミズガルズの政治には詳しくなく、名前を聞かされてもミズガルズ王の功績ですらよくわかっていなかった。しかし、ほんの数時間前の飛行遺跡の攻撃から始まるこの混乱に、父親の死亡のため突如として王としての権限と責任を与えられ、その上で王城を解放し、都市部の攻撃を制圧した手腕は相当のものなのだろうとフリンは考えていた。
「レオ王太子。あの長身で金髪、碧眼のイケメン野郎か…」
「それ、どういう感情ですか?」
レオの見た目を思い出していたフリンの口からこぼれた悪口を言うときのような口調で出た言葉に、エリナは褒めてるのか貶しているのかよくわからず呆れた口調で返事をした。
「それ、本人には言わないでくださいね」
「——イケメン?イケメンがどうしたんですか?」
「——っ!?」
「——っ!?」
エリナの呆れ口調の忠告に被せるように通信に割り込む声があった。フリンとエリナが同時にその声に反応し上空を見上げると、コカヴィエールによく似た外見の赤橙の機体が二機の元へゆっくりと降下してきていた。
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