第4章27 ミズガルズ攻防戦2
コカヴィエールとパードレが飛行遺跡にたどり着くと、そこは血を血で洗う、否、破損したギアから漏れるオイルをオイルで洗う敵味方入り乱れた大戦闘が行われていた。しかし、敵は陸からはライフルで、空からはライフルや爆撃などの攻撃を三次元的に仕掛けている。飛行機の翼のようなバックパックを装備した敵の空中部隊の機動力は高く、空からの攻撃に不慣れなミズガルズ軍は対応が遅れ、戦局は徐々に圧され始めていた。その戦いの一角に——。
「兄さんっ!」
ヤオフーが叫ぶ。フリンも戦闘に参加している見知った赤いギアを見つけた。
「ヤオフー!フリンも一緒か!」
赤いギアのパイロットが通信に応える。亜人たちが正気を失い暴走する中、どうやらアクラも無事だったようだ。
「無事だったんだね」
「俺はな。だが第一小隊はほぼ壊滅状態だ。コールが裏切って、飛行遺跡の襲撃で全員が呆気に取られていた隙をつかれて大部分がやられた」
「なっ!?監視してたんだろ!なんで、防げなかったんだよ!」
「——」
「私らだって、あの遺跡が突然のミサイルで攻撃された時、呆気にとられて動けなかっただろ。しかも直後にあの混乱だ。兄さんだけは責められないよ」
「くっ…。ごめん」
「兄さん、コールはどこにいるんだい?」
「わからん。不意打ちで攻撃したあと、すぐにどこかに飛んでいった」
ヤオフー、フリンも遺跡の防衛線に加わる。
アクラの操るスティンガーは絶えず、両腕に内蔵された機関銃とバックパックのロケットブースターに内蔵されたミサイルを撃ち続けている。
フリンの操るコカヴィエールやヤオフーの操るパードレも両腕から出力を上げたビームを撃ち続け応戦する。
しかし、相変わらず空や陸からは多くのギアが攻めてきている。善戦はしているものの、慣れない空からの攻撃、敵との圧倒的な物量差の前に、フリンたちミズガルズ陣営は徐々に押されていく。
戦闘中、フリンはアクラ、ヤオフーとはぐれ飛行遺跡の内部に身を隠していた。
「フリン…?」
コカヴィエールのコックピット内に小さく響く。ヴィーが全天周型のモニターに声の聞こえた位置と拡大映像を表示する。墜落した時か戦闘によるものかわからない崩れた壁の後ろに、なんとユニの姿があった。
「おまえ、なんでこんなところにいるんだ!?」
フリンが声を上げる。すぐさまユニのもとに駆けつける。
「私、どうしても心配で、工作班の人たちの車に隠れてここまできちゃったの。でもはぐれちゃって…」
「いいから、早く乗れっ!」
フリンはユニをコカヴィエールに乗せようと、コカヴィエールの膝を折って手を差し伸べる。しかし、その時——。
「敵機接近。シールド展開します」
ヴィーの言葉と同時、コカヴィエールの背後でライフルから連射される銃撃音がコカヴィエールに向かって響く。間一髪シールドの展開が間に合い、放たれた弾丸はビームにあたり蒸発していくが、コカヴィエールは動けなくなってしまった。
「くそっ!こんな時に」
「私のことはいいから戦って」
「バカ言うな!こんな近距離で戦闘なんてできるか!」
こんな近くで戦闘を行えば、流れ弾がユニに当たってしまうかもしれない、下手をしたら移動をしたコカヴィエールで踏み潰したり、ブーストで燃やしてしまいかねない。動けず、コックピットに乗せることもできず、このままではコカヴィエールがやられてしまうのも時間の問題だった。
「接近する機影を確認」
「このうえ、まだ増えるのかよ」
ヴィーの言葉に、いよいよフリンが諦めかけたその時、帯重なるライフルの連射音が鳴り響いたあと、コカヴィエールへの攻撃が止んだ。
「フリンさん。生きてますか?これ、貸しですよ」
「エリナか…?助かった…」
見るとそこにはエリナによって改造を施された六つ腕のグレイブ、グレイブ・クラーケが立っていた。六つの腕を全て展開し、それぞれの腕にライフルを所持しているが、持っている銃が何種類かある。
「全然弾が足りないから、そこら辺の機体からお借りしました」
そこら辺の機体とは撃墜されたギアのことだろうか。破壊された敵味方の装備をかき集めながらエリナは戦い、ここまできたようだ。
フリンはユニをコックピットに乗せると、グレイブと肩を並べる。
「その人、誰ですか?」
「ユニは俺の幼なじみなんだ。向こう見ずでこんなところまできちまって」
「二人ともごめんなさい」
「こんな戦場に非戦闘員が来るなんて信じられません」
「今は細かいことはなしだ。とにかく生き延びるぞ」
「その通りですね」
グレイブ・クラーケは一機で三機分の攻撃力を誇る。フリンとエリナははぐれてしまった仲間と合流するため進撃を始めた。
ご高覧いただきありがとうございました。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




