第4章26 ミズガルズ攻防戦
第二小隊長スコルの搭乗する角付きのラブディの特徴的な一つ目がコカヴィエールとパードレを睨む。
ラブディの通常装備は十発分の粒子が充填されたカートリッジ式のビームライフルとヒートナイフであり、両脚部の人間でいうふくらはぎの外側と両肩部の外側にウエポンラックを装備し、その内部に予備カートリッジを格納しているものだが、スコル専用ラブディは、ビームライフルではなくビームガトリングガンを装備し、背中にはビームガトリングガンとケーブルで接続された大型のエネルギータンクを背負っている。また、この装備変更により、カートリッジを携帯する必要が無くなったことや重量増による機動力の低下をカバーするために、ウエポンラックを廃止し、代わりに補助スラスターを装備している。スコルはビームガトリングガンによる面制圧を得意とし、一対多数戦を得意としていた。
「スコル小隊長…?」
ヤオフーが通信を飛ばした。しかし次の瞬間、大量のビームの弾幕が二機を襲った。コカヴィエールは機体全面を覆うビームシールドを、パードレは大きな両翼で機体を覆い、この弾幕を防御する。
「くそっ!問答無用かよ!」
フリンが叫んだ。
「ヤオフー、大丈夫か!?」
「今のところはね。でも、このままくらい続けたらやばいかもな」
ヤオフーが再度スコルに通信する。しかし、何度呼び掛けてもスコルが応答することはなく、弾幕が止むことはなかった。
「だめだ、応答しない。フリン、時間はかけてられない。二人で一気に押し切るよ!」
「ああ、まかせろ!ヴィー!」
フリンがヴィーに指示するとビームシールドの出力を増していった。それと同時にコカヴィエールの背面から展開されていたシールドが徐々に形態を変えていく。コカヴィエールの両肩部のうしろから突起したスラスターから展開されるビームシールドはもともとの球体から形が変化していき、パードレの翼のようになった。そして、左翼のビームはこれまでと同様にシールドとして使い、右翼のビームを巨大なブレードのように使い、角付きのラブディに叩きつけた。
しかし、ラブディはこのコカヴィエールの攻撃を間一髪のところで回避する。コカヴィエールは体勢の崩れたラブディに追撃の両翼を叩き込む。しかし、ラブディはコカヴィエールのビーム攻撃にビームガトリングガンの弾幕を合わせビームを弾き飛ばし、無効化していく。——ラブディの注意は完全にコカヴィエールに向いていた。
「——私を忘れてもらっちゃ困るよ」
ラブディの隙をついて、パードレが死角から接近していた。腕部に装備されたビーム兵器の出力を調整しサーベル状に展開すると、ラブディのビームガトリングガンとエネルギータンクを繋ぐケーブルを切断する。ビームガトリングガンが乱射され、絶えず圧縮された粒子を供給し続けていたケーブルが切断されたことにより、突如として行き場を失いケーブルの切り口から噴出したビーム粒子は瞬間的に膨張しラブディの手元で爆発した。
この爆発でラブディ本体には大した損傷はなかったもののビームガトリングガンはビームが膨張したことにより爆損し使用不能になった。ラブディはビームガトリングガンとエネルギータンクを捨て、ヒートナイフを装備する。しかし——。
「そうはさせないよ」
「そうはさせるか」
パードレとコカヴィエールはラブディとの距離を詰め、パードレはラブディの右側を、コカヴィエールはラブディの左側を通り抜けた。その際に、両機とも腕部に展開したビームサーベルとビームブレードでラブディの手足を切り落としていた。
ラブディはダルマのように頭部と胴体部だけを残し行動不能となった。
「意外とあっけなかったな」
「スコルが正気ならこうはいかなかったさ」
隊長機の撃墜に、場面を弁えない発言をしたフリンをヤオフーが嗜める。しかしこれは本心だった。普段のスコルからは考えられない単調な攻防。そんなスコルの姿にヤオフーは、確かに何者かに操られているような影を感じ取っていた。
「フリン、空を見な。あの空飛ぶギアたちが、飛行遺跡の墜落した方向に集まってる。あれを奴らに取られるわけにはいかないね」
「俺が向かうから、ヤオフーはアクラのところに行け」
「いや。この状況…。おそらく動けるパイロットは遺跡に集められてる。私も遺跡に向かうよ」
中央都市国家ミズガルズの都市内では空から降りてきたギアたちはほとんど戦闘を行なっていない。都市内を攻撃しているのは突如として自我を無くして暴走しだした亜人たちがほとんどすべてであった。薬物か催眠術か…。方法は不明だが空の奴らが亜人たちに対して何かした可能性は高い。
そして今空に見えただけでも二個小隊、八機のギアがフォーメーションを組んで飛び去っていった。遺跡の方向からは戦闘音も鳴り止まない。飛行遺跡周辺ではミズガルズを混乱させたことに乗じて空の奴らが遺跡奪取のために集まっていること、それを迎え撃つミズガルズ軍との総力戦になっているのが想像できた。
そうなれば要人警護が主任務のアクラが所属する第一小隊も程なくして遺跡に集まるだろう。無闇に探し回るよりも、遺跡の護衛に向かう方が効率が良いとヤオフーは判断した。
フリンたちは都市を出て、飛行遺跡に向かう。そこにはヤオフーたちや砂漠の狐が飛行遺跡を横取りするため、フォックスハウンドから人員が送られていたことを、このときフリンは忘れてしまっていた。
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