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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第4章 海賊フリン!
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第4章24 観覧式

 観覧式当日。ミズガルズには国内外から沢山の人間が集まり、ミズガルズの街はさながらお祭り騒ぎになっていた。観覧式では飛行都市をミズガルズの外から浮ばし、ミズガルズ城の上部まで移動させる予定で、観覧客達は王宮前広場に集められ、その様子を眺めるという流れになっていた。会場内の人員誘導や警備を担当するフリンやヤオフーの所属する機甲科第二、三小隊はそれぞれのギアを王宮前広場の壁に沿うように配置したあと、ギアから降り、大声を張り上げて、飛行都市の遺跡を一目見るために入り乱れる観覧客達の整理に奔走していた。


 「人が多すぎる。こんなの抑えきれねぇ」


 「フリン、泣き言を言ってる暇があるなら、声を張り上げて誘導しろ!おまえのところで人の流れが止まってるぞ!」


 フリンの愚痴を、第三小隊長のマリーは聞き漏らさなかった。


 「皆さん!前の人と間隔をつめてください!一歩ずつ前にお願いします!」


 この二週間。軍人としても、傭兵としてもなんの心構えも覚悟もなかったフリンはマリーにかなりしごかれていた。この観覧式が終われば、ようやくこの地獄の日々から開放されるのに、これ以上どやされてたまるか、声の枯れた喉にさらに鞭を打って、声を捻り出す。

 その横で一緒の試験で合格した傭兵のエリナもフリンとほとんど大差ない状態で、観覧客にもみくちゃにされながら声を張り上げていた。


 それからしばらくして、ようやく人の波が落ちついた。いよいよ観覧式がスタートする。フリン達ギアパイロットは広場に沿って配置させていた各々のギアに乗り込み待機している。王宮広場を囲む壁の一角、背後にミズガルズ城が見えるその高台でミズガルズ王が今回の観覧式の開会の挨拶を行う。


 「本日は、歴史に刻まれるべきこの良き日に、こんなに多くの方達にお集まりいただき大変感謝している……」


 ミズガルズ王の挨拶が続く。フリンはミズガルズ王をモニターしながら、『長いなー、早く終わらないかなー』と思いつつも、フリンの胸ももうすぐ見られる飛行都市に心の高鳴りを隠せなかった。ヤオフーやアクラもこの様子を見守っているのだろう。通信回線は閉じられているがフリンはきっとそうだと思っていた。まぁ、ヤオフーに関しては、飛行都市に忍び込んだ工作員達とのやり取りでそれどころではなかった可能性もあるが。


 ミズガルズ王の挨拶が終わり、司会をしていた大臣の口からいよいよ飛行都市の登場が告げられた。広場の観覧客達の、そしてフリン達兵士、ミズガルズの住人達の目がミズガルズ城の上空に集中する。その後ろから徐々に巨大な遺跡の姿が現れてきた。

 飛行都市の遺跡は、都市の名の示す通りあまりにも巨大でその全容を見ることはできなかった。しかし広場から見ることのできた外縁の湾曲から飛行都市は円形であることが想像できた。フリンの、王宮前広場に集まった観覧客達の感嘆の声が、声にならなかった溜息が重なり、地鳴りのようにミズガルズ中にこだましていた。


 (こんなに出力の高いコカヴィエールだって空は飛べないのに、こんなにでかいものがなんで空を飛ぶんだ。それにすごい静かだ)


 遺跡を見上げながらフリンは思う。飛行都市からはほとんどエンジンや機械的な駆動音のようなものは聞こえなかった。まあ、あの上が生活の場になると考えると、うるさくてはかなわないという思いがあるから、静かであることに越したことはなかったが、その仕組みがどうなっているのか、フリンには想像もできなかった。一定時間が過ぎ、打ち合わせでは飛行都市が砂漠に戻る時間となった。この後は、飛行後の遺跡の状態を確認し、問題がなければ、志願者を中心に空中都市ミズガルズの住人として数万人がこの遺跡に移住することとなっていた。しかし——。


 「……やってください」


 突如、雲の中から無数のミサイルが、後退を始めていた飛行都市に撃ち込まれた。飛行都市は火の手を上げ落下を始め、ミサイルの爆発により飛び散った遺跡の破片が、雨のようにミズガルズに降り注ぐ。瓦礫の雨は人々や家々を容赦なく押し潰し、新たな悲しみや、新たな火の手を作っていく。晴天に恵まれた観覧式は、歴史的な記念すべき日は、人々の感嘆の地鳴りは、一瞬にして地獄の様相へと変わってしまった。あの透き通るように青かった空まで燃やしてしまったかのように、街が、それを映す空が炎の色に染まる。


 「チッ!やっぱり始まったか。フリン!兄さんと合流して奴らと応戦するよ!」


 フリンにヤオフーから通信が入った。フリンが応える。


 「わかったけど、遺跡に潜入してた奴らはどうなる」


 「砂漠の狐のクルーを舐めるなよ。自分らでなんとかするさ。それより、あの空飛ぶギアも降りてきた」


 「わかった。今そっちに行く!」


 「ああ、頼んだよ。——っ!!」


 フリンのコックピット内、スピーカーから大質量の金属同士がぶつかり合う轟音が響いた。その発生源はヤオフーの機体である。


 「どうした、ヤオフー!大丈夫か!?」


 「……いきなり、味方のギアから撃たれた。全部じゃないが小隊の何機かが無差別に暴れてる。奴らのスパイが混じっていたのか?——ッチィ!」


 それを最後にヤオフーからの通信が切れる。フリンが周りを見渡してみると、第三小隊の機体の中にも無差別に暴れ、街を、人を襲っている機体がいた。


 「一体、なにが起きているんだ……」


 コカヴィエールの目の前、ミズガルズ軍に正式配備されたギア、ラブディがコカヴィエールに銃を向けていた。

ご高覧いただきありがとうございました。

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