第4章21 クリス対フリン、決着
「敵機には一定の範囲内に死角があるものと思われます」
戦闘データから相手のギアの分析を終えたヴィーが告げた。
「どう言うことだ?」
「敵機は機体の約80パーセントほどを盾の後ろに隠しているにもかかわらず盾の先の状況を認識しています。これは、盾にもカメラを装備し、ギア本体と盾の映像を合成することによって状況認識しているものと判断できます。先ほど上空から攻撃を行なった際に一発の銃弾が命中したこと、本機を追って盾を上げた角度から死角の範囲、盾に内蔵されたカメラの位置も計算済みです」
「えっと…。つまり、どうすればいいんだ?」
「現状のパラメータで実現可能な戦術を提案します…」
ヴィーがフリンの技量に合わせた作戦を提案する。「それしかないか」とフリンはその提案を受け入れた。
二機が模擬戦会場中央に戻る。マリーの合図により、フリンの反則により中断していた試合が再開する。
「先手必勝だっ!」
再開の合図と同時、コカヴィエールが大きな砂柱を立てて飛び上がった。上空から射撃する。レピーダは後ろにスライドし回避を試みるが間に合わず、盾でも防ぎきれなかった数発が命中する。
「やっぱり、当たる!」
「今のデータを基に、先程の分析値を修正しました。いつでも行けます」
コカヴィエールは着地すると、ヴィーの姿勢制御、操縦補助の力も借りてジグザクに移動しながら一気にレピーダとの距離を詰める。レピーダは盾を構え、バックしながら射撃で牽制し、距離を詰めさせまいとするが、コカヴィエールはそれ以上の動きで翻弄し続ける。レピーダの牽制射撃とコカヴィエールとの動きの間にあるズレが徐々に大きくなっていく。
「仕掛けるぞ!」
コカヴィエールは左右への機体の動きを緩めることなく銃を構える。
「計算終了」
二機の動きを予測し、照準を計算していたヴィーが告げる。フリンはその言葉を合図にトリガーを引く。コカヴィエールの精密射撃が正確にレピーダの盾の一部分、内蔵されたカメラの一つを打ち抜いた。カメラのレンズが黄色に染まる。その時、レピーダ内部では——。
「ちぃっ!カメラを潰された!」
レピーダのパイロット、クリスはコンピュータを操作し、即座に視界の補正にかかりはじめる。が、その時コカヴィエールの機影が消える。
「死角に入られた!?こっちの視界がバレてるのか?」
クリスは補正のためコンピュータを操作していた手を止め操縦桿を握り直す。神経を研ぎ澄まし、コカヴィエールからの攻撃にいち早く反応できるように備えた。そしてクリスは視界の上端にチラついた黒い影を見逃さなかった。
「また、上か!いい加減馬鹿のひとつ覚えだよ!」
レピーダはすぐさま反応し、飛び上がる黒い影に向かって銃撃を放った。しかし、そこにあったのは——。
「なっ!?銃!?やつは何処に!?」
その時、コカヴィエールは地を這うような低い姿勢でレピーダの目前に迫っていた。ヴィーが分析した視界の死角はレピーダの上方だけではなかったのだ。
コカヴィエールは訓練用の模擬剣を右手に持ち直すとレピーダの盾を下から斬りあげ跳ね飛ばす。
「くっ!」
突然の衝撃にクリスの顔が歪む、目前ではコカヴィエールが返す刀で袈裟斬りに振り下ろす模擬剣が迫っている。
「こんのぉぉぉおおお!!」
クリスが吠えた。とっさにペイントガンの腹で模擬剣を弾く。軌道が変わり模擬剣が地面を叩く。コカヴィエールに隙が生まれる。
「これで終わりだ!」
レピーダは無防備になったコカヴィエールのコックピット目掛けて銃を撃った。
「なっ!?」
しかし、完璧にコックピットを捉えたと思った銃撃は命中することなく砂面を叩く。コカヴィエールは回転しレピーダの視界右側へ消えていく。それと同時、レピーダの右側に鋭い衝撃が走った。
「それまで!」
マリーが試合終了を告げる。模擬戦のラスト、一瞬の攻防の中でコカヴィエールは左足を軸に回転することによってコックピットを狙った銃撃を回避し、回転の勢いそのままに振った模擬剣がレピーダのコックピットを捉えていた。それはパイロットに強烈なgを強いる聖痕を持った者でなければ耐えられない挙動であった。
「あんた一体何者なんだ。一戦目の時も動きだけ見れば素人みたいなのにあのスピードだし、今のだって普通じゃ口から内臓がでちまうよ」
「それなんだけど、俺にもよくわからないんだ」
クリスの問いかけにフリンは正直な気持ちで答えた。クリスはそれ以上は何も聞かなかった。
これで選考試験の全日程が終了した。結果発表を行なうため、志願者達は一時間後にアリーナに集合するよう指示され、一時解散となった。
ご高覧いただきありがとうございました。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




