第4章18 リストレイン
「おつかれ!余裕だったな!」
「そうでもないさ」
展望席に戻ってきたヤオフーにフリンが声をかけた。
「これで一勝はできた。私も選考に受かるといいんだけど…」
「一回戦目だって負けはしたけど相手が悪かっただけだろ。ヤオフーなら心配ないさ」
「二人とも静かに。次はいよいよあいつの試合だ」
アクラのいうあいつとはコールのことだ。模擬戦第一部最終戦で閃光のような動きを見せたヤオフーの更に上をいき、無傷で勝利した男。
コールのギアが入場する。全体的に赤みがかった橙色をしたギアの全身は流線的な美しいフォルムをし、頭部には二対の角があしらわれている。両肩には四基の棘状に長く突起したスラスターがある。そこから微かに噴き出るブースターの青い炎は、その機体にあたかも四枚の美しい羽が生えているかのように思わせた。背中以外にも肩部、胸部、脚部や腕部などいたるところにスラスターや細かいノズルなどが窺える。
「あのギアは…?」
コールのギアにまずフリンが反応する。
機体の色や羽の枚数など相違点も少なくないが、コールの機体はフリンのコカヴィエールに似た外観をしていた。
「あんた、あのギアに心当たりがあるのかい?」
「いや…。でもなんとなく似てるなって…」
「確かにね。でもあんたのギアは——」
「スティグマータだ」
「あのギアは偶然見つけたんだったよね?」
「ああ、コカヴィエールは俺が村の近くで偶然見つけたものだ。遺跡には他のギアはなかったはずだけど」
「兄さんは知ってる?」
「いや…初めて見るな」
「やっぱりそうだよね」
元騎士の二人も知らないギア。コカヴィエールによく似たギア。
やはりコールも特別なギアの乗り手なのだろうか?しかし、ヤオフーの話ではコールには聖痕がなかったとのことだ。
「——はじめっ!」
マリーが試合開始の宣言をした。
しかしなぜか二機とも動かない。いや、正確には、コールのギアは相手のギアを制止するように右手を前に突き出している。そして相手のギアはそれに従っているかのように試合開始宣言時から姿勢を変えず立ち尽くしている。コールのギアがゆっくりと前に歩き出した。そのまま左手に持った訓練用の剣の射程内に入るとコックピットに向かって突き立てる。相手のギアはなんの抵抗もせずにこの攻撃をくらってしまった。
「終わりましたよ」
コールのギアからマリーの元へ通信が入る。目の前の出来事に呆気に取られていたマリーがその声に反応し言った。
「……それまでっ!」
あっけなく試合が終了する。
——一体何が起きたんだ!?
展望席全体がざわついている。志願者だけではない。ミズガルズ兵を含んだ展望席にいる誰もが目の前の光景に困惑している。
「一体あいつはなんなんだ」
ヤオフーが呟いた。
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