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Skies fall down  作者: 伊佐谷 希
第4章 海賊フリン!
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第4章16 模擬戦第二部第二試合決着

 「いきますよっ!」


 その通信を最後にエリナは六丁のペイントガンの狙いをスティンガーに定めると攻撃を開始した。

 単純に三倍になった火力、そしてスティンガーが右へ左へ旋回しても必ず両腕、両腰、背中のどれかの腕がスティンガーの動きを制し、銃弾の濃密な弾幕がスティンガーを襲う。スティンガーがたまらず大きく距離を取る。それをグレイブ・クラーケが追っていく。 エリナが切り札を切ったことにより、先程とは攻守が完全に入れ替わっていた。

 なんとか回避しているもののスティンガーの被弾が増えていく。


 「おいおい…。アクラのやつ、これで七ポイントまでいっちまったぞ…。このままで大丈夫なのか」


 展望席でフリンが呟く。エリナに対するフリンの印象は、年齢はフリンと同い年ぐらい、二十歳前後の可愛らしい顔立ちの女の子でとても殺伐とした傭兵は似合わないなというものであった。しかし、それは大きな間違いであったと思い知らされていた。人間の腕は二本。視界は前方にしか開けていないはずなのに、スティンガーがどこに移動しても、たとえグレイブ本体の動きがスティンガーのスピードについていけていなくても、必ず六つのどれかの腕がその動きに反応し、銃撃することで動きを止め、それによって生まれた隙を逃さず、残りの腕を向け弾幕を貼り続けていた。広い視野、卓越した操縦技術、それらがエリナが熟練の兵士であることを如実に物語っていた。

 アクラが追い詰められていく…。


 ——ッチュン!!


 スティンガーの左肩をさらに一発の銃弾が掠めた。これで合計八ポイント、アクラにはもう後がない!!フリンは半ば祈るように両手に力を込め、試合を見つめている。その時——。


 スティンガーは砂漠に突き刺さっていた大きな岩の影に隠れると、その岩を持ち上げ、グレイブに放り投げた。いくら弾幕が凄かろうとペイント弾では岩は砕けない。猛スピードで飛んでくる岩をグレイブはとっさに回避する。この時、銃撃が中断されアクラに反撃のチャンスが生まれる。


 「これは使うつもりはなかったんだが…」


 アクラが呟く。アクラは戦いの前、フリンに『手の内を見せすぎるな』と言っていた。アクラ自身も手持ちの武器を見せずに模擬戦を進めようとしていたのだろう。しかし想定外の状況に判断を改める。


 スティンガーは背中に装備されたロケットブースターを外すとロケット中央に設置された取っ手を左腕で掴んだ。その状態でブースターを燃焼させる。

 噴出ノズルから排出される炎の出力が大きくなるにつれ、ノズルを真下に向けていたロケットは砂面から浮き上がり、徐々にロケットの先端を前方に、ノズルを後方に倒していく。そうしてロケットが前方に飛んでいきそうな姿勢になっていくのをスティンガーの左腕が支える。


 「——何をする気…?」


 岩を回避し体勢を立て直したところでエリナがスティンガーの状況に気づく。


 「何をする気だったとしても、何もさせませんっ!」


 エリナはスティンガーの機先を制し、とどめを刺そうとした。その時——。


 スティンガーが足裏のスラスターを起動しホバー状態になる。その瞬間、押さえつけられていたロケットが堰を失い弾けたように超高速で発射された。


 「なっ?」


 ロケットが発射された跡にスティンガーの姿がない。『どこにいったの?』とエリナがあたりを見回すと、超高速で地上すれすれを飛び回るロケットにスティンガーがぶら下がっているのが見えた。そのスティンガーの右腕がこちらを向いている。


 「きゃあっ!!」


 「頭部およびバックパックに被弾、四ポイント!」


 マリーが被弾箇所と加算ポイントを告げる。


 これで、エリナが六ポイント、アクラが八ポイント。差が縮まった。

 しかし、この攻撃こそ不意打ちで決まったが、その後グレイブはロケットをコントロールし、縦横無尽に飛び回りながら機関銃を撃つスティンガーの動きを見切り、攻撃を回避している。また、グレイブからの攻撃も、スティンガーはロケットを巧みに操り回避し、時にはロケットを盾に弾丸を受け回避していた。


 ——このまま膠着状態に陥るか?


 誰もがそう予感したその時、スティンガーが行動に出た!


 ロケットに身を隠し、グレイブからの攻撃を防ぎながら、まっすぐグレイブに突撃していく。しかし、これではスティンガーからも攻撃はできないが——。


 「そんな乱暴な攻撃、当たりませんよ!」


 グレイブがロケットを回避する。しかし、ロケットはすぐさま方向を変え、グレイブに追いすがる。


 「避けてダメなら…!」


 そう言うと、すでに弾丸を撃ち尽くしつつあった両腕の銃を捨て、グレイブはロケットを受け止めに掛かる。しかし、両腕で抑え込もうとしたが、出力がロケットの方が上だと悟ると、すぐさま左に受け流す。ロケットがグレイブの左後方の砂面に突き刺さる。


 「これで最後です!」


 エリナがロケットの後方、スティンガーのいたところに左腰、左背面の銃を向ける。——しかし、そこにスティンガーの姿がない。


 「ど、どこに行ったのっ!?」


 そう言って、機体を振りむかせたコックピットの正面、急に視界が奪われる。


 「なっ?」


 それが、コックピットに至近距離から向けられたスティンガーの腕だと気づいた時には、エリナの視界は黄色に染まっていた。


 「それまでっ!」


 マリーの軍配が上がる。


 実は、スティンガーがロケットに隠れグレイブに突撃していたのは最初の一回だけであり、その後は遠隔操作によりエリナの注意を引きながら、自身は、これまで散々飛び回り、今もロケットが撒き上げ続ける砂塵に紛れ身を隠し、グレイブの行動を誘導し、この決定的な瞬間を作り上げていたのだった。

 元騎士団長アクラの圧倒的な戦闘センスが発揮された瞬間であった。


 ギア戦ではぎりぎりまで追い詰められはしたものの、アクラは無傷で模擬戦二戦を制したのであった。

ご高覧いただきありがとうございました。

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